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  雪の日


「すげー!!!」

突然の叫び声で私は飛び起きた。何事かと思って声のした1階へと駆け下りる。声の主である悟空を探してキョロキョロしていると、相手の方からやってきた。

「なぁ!外!見てみろよ!!」

いつも以上にテンションが上がっている。外に一体何があるんだと思って窓から庭を覗くと、辺りは一面真っ白な銀世界へと変わっていた。昨日までは確か普通に晴れていて、そこまで寒くなかったはず。夜中のうちに雪が降り始めたのだろう。それにしても、かなり積もっているようだ。今日の内に出発は難しいだろうな。

「何ですか、悟空。こんな朝早くから・・・」

悟空の声で他のみんなも起きてきたようだ。時計の針はまだ6時前をさしている。いつもならまだみんな寝ている時間だ。眠たそうにしながら全員が1階へと集合した。幸い、この家の主である老夫婦は起きなかったようだ。

「見てみろよ!!雪!雪が積もってる!!」

すっげーと目を輝かせながら悟空は外を眺め続ける。旅で雪を目にするのは初めてのことだから気持ちは分からなくもない。というか、私も少しテンションが上がっている。

「どうりで寒いわけだな・・・」
「ケッ。雪なんかではしゃいでんじゃねーよ、チビザル」

俺はもう一眠りしてくるぜ、と手を振りながら悟浄は2階へと上がって行った。三蔵もそれに続く。八戒は、昨日おじいさんから借りた本を暖炉の前で読むつもりだ。私は、目が覚めてしまったので、ソファに座って悟空の頭越しに雪が降り続ける外を眺めた。

「きれいだなあ・・・」

相変わらず悟空は雪を眺め続けている。このままずっと眺めるのもなんだし、と思い、私は悟空に声をかけた。

「悟空、外に行ってみない?」


「う〜〜さっび〜〜〜」

雪が降っているだけあって、外の気温は低かった。手袋やマフラーを付けていても寒い。しんしんと降り続ける雪が頭の上に乗る。まだ早い時間のせいか、誰も外には出ていなかった。道に積もっている雪には足跡がない。私は足元の雪をつかんだ。ふわっとした感触だけど、握るとキュッと硬くなる。ボールのような形になった雪を見て、私はあれを作ることにした。

「ん?何してんだ?」
「んー?見て分かんない?雪と言えば、これでしょ」

私は地面の綺麗な雪をすくって、ボール状の雪にくっつける。するとだんだん大きいボールへと変化する。

「あ!雪だるま!」
「ピーンポーン!どっちが上手に作れるか勝負ね!」

悟空もその気になって雪を集める。私も負けじと雪を集め、雪だるまはだんだん大きくなっていった。手袋から伝わってくる雪の冷たさで、手がかじかんできた頃、悟空ができたー!と声を上げた。
悟空は家の裏の方まで雪を集めに行っていたらしく、そこへ見に行くと、悟空と同じくらいの大きさの雪だるまがあった。

「でかっ!!」

思わずそう言ってしまった。ご丁寧に木や葉っぱで顔や手もある。

「へへーん!うまくできただろ?れんのは?」

私も雪だるまはほぼ完成していたが、大きさは50pもないほどだった。その代わり、綺麗な丸い形にこだわったので、形は私の方が上手だと思う。

「可愛いでしょ?」
「めっちゃ綺麗な丸じゃん!すっげー!」

勝負は引き分けだな、と悟空が笑う。それにつられて私も笑う。

「雪ってやっぱ楽しいよな」
「そうだね・・・クシュンッ!」

寒さからか、くしゃみが出た。悟空が心配そうに私に声をかける。でも、風邪を引いたわけでもないので、大丈夫と返事をした。

「でも、冷えるよね・・・手とか冷たくなっちゃったし」

雪が解けて濡れてしまった手袋を外し、冷えて少し赤くなっている手をこすり合わせる。それを見ていた悟空が私の正面まで来て、私の手を取る。

「えっ悟空?」
「俺の手、あったかいだろ?こうしてれば、れんの手もあったまるかなって」

確かに悟空の手は、先ほどまで雪を触っていたようには思えないほど温かかった。そのわけを聞くと、濡れた手袋は雪だるまを完成させた後すぐに外し、ずっと両手をポケットの中で温めていたらしい。悟空の温かい手は私の両手を包み込むようにキュッと握ってくれている。いくら寒いからとはいえ、こんな恋人同士がするようなことをされ、私は顔が熱くなっていくのを感じた。悟空はどんな表情をしているのか、チラッと見たが、いたって真剣な目で握っている手を見つめている。少し鼻や頬が赤い気がしたが、寒さのせいだろうか。私は気恥ずかしくなってきて、手を引っ込めようとしたが、悟空の手は思いのほか強く握っていて、それを許さない。

「まだ、冷たいからだめ。それに・・・もう少しこうしていたい・・・」

最後の方は小声だったが、至近距離にいる私には十分聞き取れる大きさだった。びっくりして悟空の顔を見たら、さっきより顔を赤く染めていた。

(赤いのは、寒いせいじゃなかったんだ・・・)

悟空の意図が読み取れてしまい、私の顔もさらに赤くなった。


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