「ロビン。私、ここにきてとんでもないことに気がついちゃったのよ」
 カップを置いて、私が言う。
「それは興味深いわね。なあに?」
 反対に、カップを口元に寄せながら、ロビンが答える。
「私たちって、今まで一度もどこか街で遊んだことない気がするんだけど」
「……あらほんと。そう言われてみればそうね」
「と、いうわけで!」
「え?」
「着替えて、ロビン! 出かけるわよ!」
「えっ、……え?」

 はい、そんなわけでやってきました繁華街。
 ……なんだけど、着いて早々ちょっと場所の選択間違えたかなって気がしてきた。
 ロビンが普段買い物とかしてんのって、もっと落ち着いたとこっぽいし。うーん。
「……移動する?」
「ナミちゃんはよくここへ来るの?」
「へ? あー、うん、まあ。電車で一本だし」
「じゃあここでいいわ。案内よろしくね」
 そう言って私の隣でロビンが零す柔らかい微笑みは、やっぱりこのごちゃごちゃした街にはもったいないなあと思いながらも、ロビンがいいならと張り切って街へ繰り出した。

 私がロビンと出かけたかったのは、純粋にそれだけが目的じゃなかった。
 一度も遊びに出たことがないということはつまり、おしゃれしたとこを見たことがないってこと。
 普段のスーツ姿はめちゃくちゃ決まってるし、部屋着もあれはあれでいいギャップかなって思うんだけど、やっぱり私服のロビンも見てみたいじゃない? って思ったのがきっかけ。
 私の唐突な誘いに、ロビンは戸惑いながらも身支度をするためクローゼットのある寝室へ入って行った。
 私は最初からそのつもりでここへ来たから、服も化粧もばっちり。キュート美人により磨きがかかってるってとこね。
 それから20〜30分ほどして戻ってきたロビンの格好は……セクシーダイナマイト。
 まあこれは予想してた。
 際どい下着の延長線上にあるこんな感じのか、はたまた控えめな性格から判断してかなり地味なのかの二択だったから。
 もともと派手な目鼻立ちしてるからか、化粧は普段とそれほど変わらない感じ。ちょっと唇にグロス乗せてるくらいかな。
 まあでも、全体で見るとちょうどいいかも。
 控えめな化粧と黒髪が、服装の大胆さとうまくバランスを取ってる。露出にも下品さは無いし。
 ていうか、元が超弩級の美人だから様になって当然か。

「ロビンってこういうとこまともに歩けなさそう、ナンパで」
「……お姉さん、お茶でもどう? とか、そういうの?」
「ちょっと古典的だけど、まあそんな感じね」
「ないわ、私。一度も」
「ええっ? ないない、そりゃないわ。ありえない」
「だって私が声をかける側なら、こんな大女相手にしようなんて思わないもの」
 大袈裟に私を見下ろすようにして、くすりと笑うロビン。
「ああ……その上あんたヒール高いの好きだしね」
 言いながら、視線を足元へ。
 今日ロビンが履いてるこれは7、8センチってとこかしら。身長と合わせるとほぼ2メートル。
 バレーかバスケでもやってたの? って聞いたことがあるけど、中高と部活は図書部というなんともまあ大人しい答えだった。
 私も女としては決して小さいほうではないとはいえ、それでもロビンと並ぶとまるで子供。
 それはそこらへんの男の人でも、ほとんど同じだと思う。
 なるほど確かに、プライドとかそういうのが邪魔して躊躇うかもしれないわ。
「でもそっか、じゃあロビンはナンパに関してはしたことしかないってことね」
「え?」
「あんたが最初に私に声かけてきたあれって、要はナンパでしょ?」
 誘い文句はものすっごく変わってたけど。
 それに、ロビンからはその時も今も軟派な感じは全くしないし、それでナンパ扱いは心外かも?
「…………そう、そうね」
 と思いきや、目から鱗とでも言いたそうな様子でそう答えたロビン。
 あっ、いいのね、それで。
 まああんたがそう言うなら、ってことで、私もさらに乗っかってみる。
「言っとくけど、私相手のナンパなんてそうそう成功するもんじゃないのよ?」
「運がよかったのね、私」
 運っていうか……そうだ、言葉よりこっちのほうがわかりやすいかな。
「じゃ、今度は私の番」
 ふとそれを思いついて、ロビンより半歩先に出る。
 疑問符の浮かんだ顔には、不敵な笑みを返してあげて。
「お姉さん、私とお茶でもどう?」
「……ふふっ、よろこんで」

 
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