ところで、最近の私にはちょっとした悩みがある。
「うーん…………あっ」
 ぼんやり天井を眺めながら唸っていると、回していたボールペンをキャッチし損ねて落としてしまった。
 そのまま転がってテーブルから落ちたペンを拾い上げ、ついさっきまでにらめっこしてた家計簿に再び視線を落とす。
 …………訂正。
 ぜんっぜんちょっとしたことじゃないっ。

 それと言うのも、すべてはロビンが原因だと思う。
 あれからちょくちょく会うようになって、私とロビンはかなり親しい仲になった。
 その中で、実は私たち結構相性いいんじゃない? とか思い始めちゃったし、ロビンなんて終始ナミちゃんナミちゃんって調子だから悪い気はしないし。
 もっとちゃんとした知り合い方──例えばサウロ先生のよしみで、とか──だったら、きっととっくに今ぐらいの仲になれてたに違いない。
 最初のうちは、大学入学を機に始めた一人暮らしを、自覚はないにしろやっぱりどこか寂しく感じてるところがあるせいで、単に自分を甘やかしてくれる存在に飢えていただけなんじゃないかとも考えたけど、すぐにそれはなんか違うなとわかった。
 実際ロビンは私に甘いし、そうじゃないと判断した根拠は自分でもよくわかってないけど、ただそれだけのためにロビンとつるんでるつもりはないってことははっきり言える。
 あとは、ベルメールさんとノジコにも月に一度は会ってるから、ホームシックとかそんなのでもないはず。
 で、話を戻すと。
 とにかく、まあなんだかんだでロビンのことは結構気に入ってるのよ。
 ロビンの家に通ってるのだって、私が好き好んでと言って問題ない。
 じゃあロビンを原因呼ばわりしてんじゃないわよって自分でも思うけど。
 ……思うけど、この膨れ上がった交通費は……!
 はあ。
 無理もないか。
 ロビンの家の最寄り駅は、私の定期の区間外だから。
 私の場合、友だちと遊ぶとなったら大学周辺のカラオケとかカフェとかっていうのがほとんど。
 たまには街のほうへ出て買い物ってパターンもあるけど、それはほんとたまにだし、今まで交通費のことなんて気にしたことがなかった。
 改めて家計簿を確認する。
 ……うん、これはキツいわ。
 次の仕送りが入るまでの残り10日をこの残金でしのぐのはかなり厳しそう。大学生活にも慣れてきたし、やっぱそろそろバイトとかしなきゃかな。
 とまあ経済事情は悩ましいけど、ロビンには会いたいし、会うならロビンの家がいい。ロビンにうちに来てもらうんじゃなくて。
 だって、家自体もすごい快適なんだもん。
 お風呂もキッチンも広いし、トイレにはウォシュレットまで付いてる。防音だってばっちりで、ベランダからの眺めも最高。
 いろいろお喋りしてたり、ロビンに見てもらいながら課題をやったりしてたら遅くなっちゃってそのままお泊り、なんてことも度々あるから、このへんは結構重要。
 学生の一人暮らしじゃこうはいかない。
 ただ、よくよく考えてみると、ロビンくらいの年齢の会社勤めの人が住むにしても、あそこはちょっと高いんじゃないかなという気がしてきた。
 だってあの広さと部屋数って明らかに家族向けっぽいし、実際エレベーターやエントランスホールで親子連れを見るのもしょっちゅう。
 とはいえさすがに年収なんて聞くわけにもいかないし、気にはなるけど私が気にすることでもないか。
 そうよ、それより今は、目の前で繰り広げられてる家計の惨状のほうが大ごとだわ。
「……」
 とりあえず、今度会うことにしてある日は、ロビンのほうがうちに来てくれるよう連絡しとこう。

 
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