黄瀬と黒子は似てない兄弟7
2015/12/15 20:17

 涼太も母親も血の繋がりはなかった。
 それどころか、ああ、これは犯罪だ。テツヤの心臓が急に早鐘の如く鳴り出した。口がカラカラに乾く。掌に嫌な汗が滲んでぬめる。気持ちが、悪い。
 どうしてだ。どうしてこんなことになってしまったのだ。自分はただ出自が知りたかっただけなのだ。引き取られた子供であることは想像がついていた。連れ去られた子供であるなんて、想像だにしなかった。
 涼太はニコニコ笑っていた。当然だ。彼は『成り立ってしまった』この家族を愛しているのだから。テツヤの出自なんて関係ない。弟としてのテツヤがいれば、それで良いから。頭では理解する。涼太は、テツヤがここにいることが罪だなんて、きっと微塵も思っていない。
 だが、テツヤ自身はどうだ。己が存在が他ならぬ罪の象徴だと知って、それを見て見ぬ振りが出来るのか。今頃本当の親はどうしているのか。自分はここにいて良いのか。テツヤには分からない。それどころか、とてつもない恐怖感を全身で感じるだけだった。これからどうしていけば良いのだろう。足が震える。唇が、わななく。

「顔色が悪いよ?」

 はっとして面を上げる。
 眼前に、涼太が迫っていた。

「り、りょうたくん……」
「きもちわるい?」

 何が、まで言わなかった。
 オレが。この家族が。テツヤには、はっきりとそう聞こえた気がしたけれど、それが気のせいなのかどうかも分からなかった。もしかしたら耐えきれない現実に、幻聴が聞こえたのかもしれない。眩暈がした。目の前が真っ暗になって、テツヤの現実はそこでフェードアウトした。






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