夢喰 | ナノ
62

…そりゃ沖田くんだって、隊長だけど私より年下(多分)なんだし、自分の中で整理がつかないことだって多いよねェ。
ま、整理がつかないってこた、逃げてない証拠か。時としてその諦めの悪さは、歪んだ答えを導き出してしまうこともあるけれど、近藤さんや副長がいれば大丈夫でしょ。

ただまあ、自分の無神経さには反省したい…でも反省する暇なくそんな中でも沖田くんの起こした珍事の始末書は回ってくるわけで。

私は今日も残業中だ。
時間はもう深夜といっていい時間。しかし泊まり込む気は毛頭無い。

―――もしかしたら、佐々木さんにまた会えるかもしれない。

我ながら不純だと思う。


でも、会いたかった。
会って、話がしたい。
それがすれ違い際の挨拶でもかまわない。


この黒い胸に渦巻くナニカを、沈めたかった。彼に会えば、それが出来るという妙な確信。

「…帰ろう」


―――残りはまた、明日。

…随分と平和な台詞を言えるようになったものだ。未来が、当たり前にやってくる毎日。
もしかしたら私は、弱くなっているのかもしれない。そう思って襖を開けると、目の前が真っ黒になった……いや、副長がいた。

「灯りがついてるからまさかと思えば……いい加減体壊すぞ。送ってやるからもう帰れ」
「お互いさま、ってやつじゃないですか?副長も人のこと言えるような顔、してませんし」
「危ねーだろ」

はあ、とため息をつかれた。解せない。
仲間思いはいざという時にとっておいた方がいいんじゃないかねェ。ジャ○アンみたいに。


「おあいにく様、これでも一番隊士です」


私は自転車に鍵を差し込んで、何かを言わせる暇なくひらりと飛び乗って屯所を出た。
ライトは暗闇の中を相も変わらず頼りなさげに揺れている。




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