-若獅子誕生-01 (……これは……) 当たり前の修業風景。 少し会わない内に、レグルスの小宇宙が以前よりも格段に洗練されている事にシジフォスは驚いた。 まるで呼吸するように小宇宙を体得したレグルスだが、それは彼の天性の戦闘センスによるもの故に戦闘によって磨くことは出来ても、己の内側から鍛えていかなくてはそれはただの力だ。 (レグルスが聖闘士になれる日もそう遠くないな……) 父親が死した後聖域に来るまでずっと彼は独りだった。 父が纏っていた獅子のクロスを奪おうとする者を倒し、独りで戦い続けていた。 シジフォスが聖域に連れて帰ってからというもの、超人的な成長力をみせている。 (早く、黄金聖闘士になったお前と、共に戦いたい……レグルス) レグルスとシジフォスは血縁者であり、自分の甥の成長っぷりにシジフォスは笑みを浮かべる。 「!」 (この、小宇宙は……) 振り返ると闘技場の入口にエレナが来ており、シジフォスの視線の先を追ったレグルスは、その姿を認めると元気よく手を振っていた。 (あぁ……成る程) まだ意思が目覚めていないとはいえ、女神が転生した少女。 あの優しい少女に触れて、元から常人より優れていた彼と彼の小宇宙が成長し続けているのだ。 これは、ある意味嬉しい効果なのかもしれない。 「話しておいで」 「!サンキューシジフォス!」 獅子座の聖闘士になる少年が、まるで子犬のようにダーッと駆けていく。 レグルスが同世代の女性と関わることで闘い以外のことも知っていければ良い。 仲良さそうに話す二人が微笑ましかったが、ふとシジフォスの顔が曇る。 まだ女神の意思が目覚めてない故に自覚もない。 アテナの庇護の元ならばいつでも守る事は出来るが、単独で聖域から離れてしまっては何かあった時に彼女を守れない。 本来、彼女は神殿でアテナと共に尊ばれるべき存在なのだ。 [*前] | [次#] 戻る |