-堕ちた聖女-01 「また侍女の手伝いするのか!?」 「ええ、皆忙しそうにしてるじゃない」 至る所で忙しそうに動く小宇宙達を感じながら、笑顔でそう言い放ったエレナ。 その勤労っぷりに、チェシャは呆れ顔になって深くため息を漏らす。 (………でも、) この部屋にずっと居たくないという気持ちもあったエレナは、爪を立てられた首にそっと触れて痛みにほんの一瞬表情を歪めた。 「……じゃあ私は彼女を探しに行ってくるわ。黒い服をまた借りなくてはいけないから」 「え、侍女が何人いるか分かってるのかよ!?しかも、みんなベール被ってんじゃん!」 「?みんなそれぞれ声は違うし、雰囲気も違うじゃない。……勿論、小宇宙も」 にっこりと笑ったエレナにチェシャは「嘘だろ!」と声をあげた。 まさか、何百という中侍女達から探す気なのだろうか。 いや……エレナなら捜し当ててしまいそうだ、とチェシャは「げぇ」と異質なモノを見る目で女神を見る。 すると控え目に扉がノックされ、「失礼します」と侍女が姿を現した。 そして隣にチェシャしか居ないのを見ると、「エレナ」としっかりとした声で呼ぶ。 「今食事、を………?」 盆を手に入室した侍女は、チェシャとエレナの二人に見られて首を傾げた。 「あぁ、すごい偶然!!」 そう言って大輪の花のように微笑みながら抱き着いてきた女神にたじろいだ侍女に向けて、チェシャは哀れみに近い視線を投げた。 [*前] | [次#] 戻る |