+memo
※妄想しかありません


  
歌姫の卵/音也



シンガーソングライター

歌う事が好きだった。



それはシンガーソングライターだった母親の影響で、母は作詞作曲を全て一人でこなし、新曲を出す度に上位にランクインする程の優れた才能を持っていて、その上美人だった。


自営業を営む父は、母が無名で路上ライブをしていた時からファンだったという。



プロ意識が強く、取り組む限りは誠実に且つ完璧に物事をこなす母は、人に弱みを見せず隙のない女性で、それでいてとても穏やかに笑う優しい人だったらしい。




そんな母を持った為に、小さい頃からまるで息をするように歌を口ずさんで、何をするにも鼻歌混じり。



でも私が小学校に上がる頃、家に母は置き手紙を残したきり、公の舞台からも忽然と姿を消してしまった。


祖父母達はそんな母を「恥」だと罵り、日々詰め寄ってくるメディアから逃げるように私達から遠ざかっていき、


残された幼い私は、父の深い悲しみを目の当たりにし、歌うのを止めた。



正しくいうと、母を思い出す事を拒絶して体が喉を強く絞めてしまうからだ。



小学校高学年になる頃には、大好きだった筈のピアノのレッスンも苦痛になって辞めてしまった。




諦めて、蓋をした。


全部、母のせいにして。

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