第一話・激しい目覚めの朝・


瞼に日差しを感じて身動ぎをした

だが目を開かない、布団の温もりにもう少し包まれていたくて「もう少し、もう少し」と自分に暗示をかける


しかし朝というものはそんな微かな願いすら聞いてくれない薄情な時間帯だった


バタバタバタバタ・・・

扉の向こうから何やら騒がしい足音が響いてくる
だけど無視して眠り続けた


シュイーン!
「失礼します!!」

扉の開閉音と高めの幼さを含んだ声
聞き覚え有りまくりなその声に「ん?」と疑問を感じたが目を閉じたまま
やがて入ってきただろう人物が動く気配、そして次の瞬間それは襲ってきた

「お・は・・・ようっ!!」
ドガスッ!!
「ゴファッ!?!」

腹部への突然な衝撃に、シュネィヴァは四の五も言えず叩き起こされた




「うごっ・・・ぐは・・・」

「朝!朝だよシュネィヴァさんおはようございます!」

「ひ・・・めぎぃ・・・!」

展開はこうだ
まず若木が部屋にはいる
そのまま入り口からベッドへの僅かな距離を助走に使い力一杯地を蹴る、それが台詞で言う「お」
そして「は」の台詞と共に宙に飛び上がると華麗に一回転し、「ようっ!」で勢いつきまくりの蹴りを一発かましてくれた

因みに効果は抜群
余りの衝撃に未だシュネィヴァはベッドの上で悶絶している


「さぁ!目が覚めたところで朝ご飯食べに行こー!今日のめにぅはおっさかなー!」

「・・・・・・」

「ほよ?シュネィヴァさんまさか・・・二度寝!?」

「いや違う!まぁ待てもう蹴りはいらん!」

身構える若木を慌てて制しシュネィヴァは急いで布団から出る
立ち上がる際当たり前のように腹部が痛みを訴えてきた
このまま飯を食えと・・・!

「起きたー!起きたらご飯食べに行こー!」

「・・・あぁ分かった、分かったから顔くらい洗わせてくれ」

「はぁーい」

パタパタと若木が退室
シュネィヴァは溜め息を一つ吐いてから顔を洗うために洗面台へ向かった



「じゃあじゃーあ!ご飯の前にレク達起こしに行こーよ!」
という若木の提案によりシュネィヴァはハイテンションな彼に引っ張られるまま船内を歩いていた

結構朝早いと思っていたがもう動いてる人間が何人かいた

「もう!ジェイドさんったらまた!全くいつもいつも・・・」
と眼鏡大佐に文句を垂れてる小さな船長とか

「朝ー♪皆が元気なあーさ♪今日も賑やかア・ドリ・ビドーム♪」
と絶妙な音程でルンルン歌う赤髪の少年とか

「おーいエステルー!これどこに仕舞っとくんだー?エステルー」
と人探しに精を出す黒髪の青年なんかとすれ違った

そんな中を若木はシュネィヴァをぐいぐい引っ張って進む
暫くするとある扉の前で若木の足が止まる、それに倣ってシュネィヴァも足を止めた
どうやら目的の部屋に辿り着いたらしい、その頃には若空中回転蹴りの痛みも引いていた


「よっし!じゃあ張り切っていきましょー♪」

「張り切らなくていいけどな・・・」


シュイーンという無機質な音と共に露になる室内の奥には二つのベッド
片や紅髪、片や蒼髪(髪の尻尾付き)

それをディセンダーと認めるや否や若木が助走をつけて走り出す
嗚呼・・・今眼前で先の技の全貌を見てるんだな・・・なんて考えてシュネィヴァは複雑な気持ちでそれを見守った

助走からの勢いある飛び上がり
そして空中で一回転して狙いを定めた若木は驚きの正確さでまず紅の腹部に飛び蹴りをお見舞いした

因みにその際の若木の掛け声は先程と変わらず「お・は・よう!」
受けた紅ことレクは「げグぅっ!!」と説明し辛い叫びをあげた

そしてここで止まる若木ではなかった

「てあっ!」

という在り来たりな掛け声で再び飛び上がる若木(その際レクは踏み台にされた)
狙いは勿論、眠っている蒼

シュネィヴァは内心感嘆しつつ慌てた
若木が連続で回転飛天翔駆を出せるのはリアルにすごい、すごいがしかし二発目の獲物はシュネィヴァが色々お世話になったあの蒼のディセンダーなのだ
レクがダメージを受けることに問題はないが(酷いbyレク)、彼がやられると思うと胸が痛む


「おい!姫祇待て!」


シュネィヴァの叫び虚しく、既に若木は狙いを定め急降下する寸前
「朝だよ!」の掛け声が響き蹴りが決まる――と思った瞬間


それは美しい流れでした


先ず目にも止まらぬ早さで寝ている彼の腕が動いた
その腕が若木の蹴りの軌道を軽く上に変え、軌道が変えられた若木は勢いそのままくるんと宙で回転し

ポスンッ

という柔らかな音を立てて彼の腰辺りに着地した
その間、約一秒足らず


「テューリー!朝ですよー!」
「ん・・・おはよう若」

何事もなかったように起き上がる蒼ことテュリは寝ぼけ眼のまま小さく若木の頭を撫でた


その一部始終をシュネィヴァは呆然と立ち尽くしたまま見た

やっぱ凄いよ、ディセンダー




「あれー?俺忘れられてる?byレク」

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