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思い出話〜鈍感〜


「一つよろしいですか?」

「んえ?」

鈴の音のような声にまさか遮られると思っていなかったリグゼートは一瞬固まる
が、すぐ正気に戻り目で相手を促した

「失礼致します・・・その、こちらは名乗りましたのでそちらの御名前を伺いたいのですが・・・」

「あぁ、そういやぁ言ってなかった・・・
オレはリグゼート・フィキナだ、遅くなったけど宜しく」

「リグゼート・・・さんですね?はい!こちらこそ宜しくお願い致します」

丁寧な言葉遣いに丁寧なお辞儀付き
なんて行儀の良い娘なんだと感心するとあらぬ方向から聞こえてはいけない声が響いた

『呼びにくいだろうからリットって呼んであげてねソラー!』
「い゛っ!?!!」

あろうことかナズがソラミネに向かい声をかけたのだ
相手方とすれば急に聞こえた声に驚くに違いない!そう考えたリグゼートは速攻で銃を抑え誤魔化そうとした、が


「リット・・・?ですか?素敵な愛称ですね」

「え?ちょ『でそでそー!良い名前でそー!俺が考えたんだよー!』

「おいナ「まぁそうなんですか!・・・ところで先刻の「ソラ」・・・というのは?」

「いやソ『決まってるでしょー!ソラミネだから「ソラ」だよー!呼びやすくなったでしょ?』


言いたい言葉をことごとく遮られリグゼートは一人蚊帳の外で固まる
その間にもソラミネと声だけのナズの会話は続く

え?何この状況?
ソラミネさん?アンタはナズに対してなんの疑問も抱かんのか?
いや、抱こうよ?
むしろ追及しようよ?
姿形も分からないまま話すのはやめようよ?
それともアレか?オレの感覚が可笑しいのか?そうなのか?そうだったりするのかせんせー!!


とリグゼートが勝手に混乱してても二人の会話は続く

しかしふと

「あら?リグゼ・・・ではなくリットさん、何故明後日の方向を向いていらっしゃるんですか?」

と現状に気づいたソラミネが暢気に尋ねてきた
乾いた笑いを口から溢してリグゼートは力なく俯く

「いやさぁ・・・自分の当たり前がこうも簡単に壊されると微妙にへこむって言うか何て言うか・・・」

「???当たり前が壊されるとは一体どういう意味なんです?」

「人間って姿が見えなくても会話が成立するんだなーって」

「え?何を仰ってるんですか?姿が見えないだなんて・・・そんなこと無いでしょう?」

至極当然と目をしばたかせているソラミネにリグゼートは溜め息を一つ吐いて向き直る


「何を言ってるはこっちの台詞だぜ・・・ナズと散々会話してよー」

「ナ・・・ズ?とは一体誰のこと・・・?」

『はいはーい!俺が噂のナズ・コルコでーす!』

「あぁナズさんと・・・・・・・・・・・・」

「・・・ソラミネ?」
『ソラー?』


何故か元気なナズの声を聞きソラミネは納得と手を打ち、そのまま固まった
突然の変化にリグゼートとナズが呼び掛けるが微動だにしない

暫くすると機能停止していたソラミネは急に態度一変、怖々と口を開く


「り・・・リグゼートさん・・・?」

「な、何だ?」

「ナズ・・・さんはどちらに・・・?」

「え?今さら?」

何だいきなりと思いながらリグゼートは背面に手を動かして携帯していた銃をソラミネの前に突き出す
一瞬ビクリと体を強張らせてから再びソラミネが口を動かす

「な・・・何故武器を・・・?」

「え?いや、だからナズを出せって言ったから」

「え?あの・・・」

『はーい!ナズです!てか今のリットの言い方だと俺本当に物扱いじゃない?』
「うっさい黙れナズ」


カタカタと動く銃に当たり前のように語りかけるリグゼート


「ナズさ・・・ん」

『はいよー?』


確信した
確信してしまった
数回の瞬きを繰り返した後ソラミネは

「憑き・・・物・・・!?・・・」

と唸りリグゼートの目の前で失神した




++++++
多分続きます

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