ライン

永遠の仮定


降り続ける雨はきっと、神様が泣いている証だよ




「貴方は永遠を信じる?」

いきなり君がそんなことを言うもんだから僕は読みかけの本を落としかけた

「いきなり何?」

怪訝な顔で睨み返すと君はにっこり笑って軽く首を傾げた

「別に?突発的好奇心かしら?」
「変なの」
「それで?貴方は永遠を信じる?」
「信じるわけないだろう」

唇を尖らせながらそっぽを向く
顔を本に戻して、だけど意識は君に向けたまま


「理由の提示は?」
「・・・・・・だって永遠だなんてぶっちゃけ現実味の欠片も無いじゃないか
近頃は半永久機関とか聞くけど正直言って、馬鹿馬鹿しい
永遠なんて有り得ない
もしも不死の人間がいて“私は不死です”なんて言ってごらんよ、馬鹿にされるのが落ちさ
言葉なんて不確か、証拠なんて曖昧、証明の為の確固たる肯定が存在しなけりゃ誰も受け入れない
結局、僕達はニンゲンという柵に縛られたまま、永遠を望んで、永遠を否定し続けるんだ」


ご丁寧に説明し終えた瞬間君はクスクスと笑い出す
それが頭にきてもう一度睨み付けてやったけど逆効果で、君は声をあげて笑いだした


「何がそんなに可笑しいんだよ」
「だって貴方って・・・ぷふっ昔からそうだけど、ははっ・・・本っ当に頭が固いというか・・・ははは」

とうとう腹を抱えて笑い出した
そんな君を見てると腹立たしく、同時に恥ずかしくて顔に熱が集まるのを感じながら君から目を背けた
暫く君の笑い声が大音量で響き渡っていたが、やっと落ち着いたらしく背後から「ごめんごめん」とかものすっごく軽い謝罪の声がしたけど無視した
そしたら急に君が声を低くして


「実は私、不死なの」


不死なの、不死なの・・・
思わず振り返って君を凝視した、相変わらず微笑を浮かべている
僕は呆れ返って口をぽかんと開けたまま眉をひそめた

「君ってそんなに頭が弱かったっけ?しかも不死とか有り得ないし、しっかり僕と君は一緒に成長してるしさ」
「失礼ね、それに私は不死っていっただけで成長なんて関係ないじゃない」
「へぇ、じゃあ君はどこで自分は不死だなんて知ったのさ」
「頭にビビッと、総ては神のお導きね」
「アホか」


酷いなんてレベルじゃない、病気なんじゃないか
しかも病気だとしたら手のつけようがない
イッてる
狂っちゃってるよ


「そんな憐れみの眼で見なくたっていいじゃない
可愛いお小言、愛らしいジョークよ」
「もういっそのこと脳ミソ取り替えってもらったら?」
「ひっどーい」


むぅと君が朱に染まった頬を小さく膨らませる
やっと君に少し勝てた気がして胸がスッとした
不機嫌なままでいればいいんだ、僕ばっかり腹を立てるなんて不公平なんだから


「じゃあ貴方にだけ正体を明かしてあげる」

そんな優越感に水を指すように君が言う
静かに僕の頬に指をあて、輪郭をなぞる君の行動に吃驚して少しだけ身を退いた

君がくすりと笑う


「私達は皆不死なの
伝説にあるでしょう?不死鳥という生き物は死ぬと灰になってまたそこから生まれるのよ
私達も、姿を変えながらニンゲンという同じ生き物を繰り返し続けるの、どう?」


小首を傾げ君は尋ねてくる

「・・・だったら昔の自分の記憶はどこにあるのさ?少なくとも僕は僕自信の記憶しか覚えがないけど?」
「それは生まれ変わる度にリセットされるのよ
だって頭が容量オーバーでいかれちゃうでしょ?」
「なんだよそれ
結局ただの妄想じゃないか」

「そう、貴方にとってはね」


不意に君の体が僕に寄り掛かってきた
肩に君の顎が乗って、口が耳のすぐ隣にあるから君が喋る度に息がかかってこそばゆくて仕方ない
けれど不快じゃなくて

寧ろ気がかりなのは弱々しい君の心音
触れ合ってる胸から響いてくる音があまりにも小さくてギョッとした
こんなもので血液を上手く循環することが出来るのか疑わしい

耳に吐息がかかる


「私の頭には今の私と前の私の記憶がある
リセットに失敗したの
前の私は長生きで、色んな事を知ってて・・・頭はとっくに限界なのに、今の私は無理矢理自分を作って新しいことを詰めようとして・・・ね?この様なのよ」


近い内に私はもう一度リセットしようとするわ
体が真っ白な自分を作ろうと


「・・・君は予言でもしてるの?
馬鹿みたい・・・」

震える唇で紡いだ言葉に君は「そうね、本当に」って呟いて目を閉じた
僕は狼狽えて、ただ君の体がこれ以上冷えないように力の限り、君を抱き締めた




雨はきっと神様が泣いている証だよ
生まれ変わる苦痛を生き物に与えてしまった神様が哀しんでいるの

じゃあ何で僕まで泣いてるんだろう・・・?



君が前の君の分長生きで物知りならさ
結局僕は最期まで一度も君に勝てなかったわけだ





++++++
自分が何故こんなものを書いたのかよく分からないんだ

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