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雷の話



薄暗い夕方の校舎。
窓の外には止めどない雨が降り、グラウンドには幾つもの水溜まりが出来ていた。
人も疎らで話し声の無い静かな校舎に、雨粒が屋根を打つけたたましい音が響く。

その最中、パッと全てが白く染まる。

薄暗さが元に戻ると同時に遠くからのゴロゴロと響き渡る重い音。


「雷だね」

軽い口調で呟いたのは自分と同じく窓に視線を向けていた優顔の男。
窓から顔を逸らし、赤みの強い目を笑みに細めてじっと見つめられた。
自分の中の不快指数が一気に跳ね上がる。

「テオは雷は苦手?」
「別に」
「そっかそっかー強いなーテオは」
「うるさい」

ニマニマと嬉しそうなやらしい顔がうざったい。
これは構ったらいけないと思い、もう一度視線を外へ向けた。
そのタイミングで再び空が光り、遠くに見える鉄塔の近くを真っ白な線が走って消えた。

「雷って“神”が“鳴”るで神鳴とも言うらしいね」

泰斗が独り言のようにポツリと言った。
相手にする気もなくて無視をする。

泰斗は一人で喋り続ける。

「今じゃあ雷が電気だと分かっていて、その電気で夜も明るい生活をしてるから、雷が光ったり、音がしても驚く程度のものだよね。
でもさ、雷の正体すら分からず、日が沈めば真っ暗闇になるような昔は違うよな。
太陽もないのに一瞬で全てが明るくなって、遠い遠い空が光ってさ。おまけにどこからともなく何かわからない音が轟いて、そりゃあ恐ろしいものだったろうね。
雨のように備える事もできず、時には猛威を奮うことさえある。人の力ではどうすることもできない。
まさに“神の御業”ってわけだ」

遠くで空を割った光の声が響いている。
雨は未だに弱まる気配を見せず、溜め込んでいた粒を地面に落とすまま。

また辺りを白く染め上げる光が落ちる。間髪入れずにどこか近くで銃声にもにた激音が轟いた。

「今も昔も、神様が鳴り響かせる力は恐ろしいものだねぇ」

緊張感の無い声が、雨音の籠る部屋で大きく聞こえた気がした。



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猛烈な雨と雷にあったので書いたもの。

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