友達
本当にごめん!と手を合わせて頭を下げる彼に小さく苦笑する。
「そ、そこまで言わなくてもいいよ・・・ただ料理当番を交代するだけだし」
「でもルカにだって予定があるし、それに無理言ってわけだから・・・」
「無理じゃないから代わったんだよ?」
ね?と言葉を重ねるとやっとテュリは顔を上げてくれた。未だに申し訳なさそうな瞳がこちらを見ている。
「ありがとうルカ。どこかでお礼させてね」
「そんな、当番の日にちを入れ換えただけで大袈裟だよ」
「大袈裟でも。じゃあよろしく」
手を振って、先程できた用事のために彼が出掛けていく。
僕は彼を見送って、食堂に移動する。パニールに事情を説明して、もう一人の当番であるファラと夕飯の支度をした。
同じディセンダーだというのに、キルとテュリでは本当に違いがある。
例えば用事が出来たとき。キルはその時近くにいた人にすぐそれらを話す。
テュリは逆に言わない。
今日みたいに頼みたいことがあれば話すけど、自分からは殆ど言わない。
ただ、それでもキルだけは全てを把握している。
あと、大抵の場合カノンノも知っている。
テュリは人を平等に見る性格だからあまりひいきみたいなことはしないけど、やっぱり二人は特別らしい。
それと、彼の所在について尋ねられるとき、決まってキルとカノンノがいないと僕かカイウスに話が来る。
その事でカイウスと首を傾げたことがあった。確かに僕らは皆と比べて、彼と一緒にいる時間が多いかもしれない。
けれど特別な訳じゃないのだ。知らないことの方が多い。
その事についてカイウスはルビアに尋ねたらしい。そしてこう返された。
私達なんかよりはずっと詳しいわよ!と。
「ルカ、本当にありがとう。助かったよ」
帰ってきてすぐそう言ってニコリと笑うテュリ。
うん、と返しながら僕はじっと彼を見つめた。
「ねぇテュリ」
「ん?なに?」
「僕らって、友達?」
きょとんとテュリが目を丸くする。そうして数回瞬きするとふにゃりと顔を緩ませた。
「友達だよ。当たり前じゃない!」
カッと、恥ずかしさが込み上げてきた。
何を尋ねているんだろう自分は。これじゃ、まるでテュリのことを疑ってるみたいだ。
本当に恥ずかしい。
「ルカ?」
「ごっ、ごめんね変なこと聞いて!あ、あははは僕、何聞いてるんだろ・・・」
いつもみたいに俯いて足元を見る。
穴があったら入りたい。
と、不意に視界にテュリの腕が伸びてきてぎゅっと手を掴まれた。
驚いて顔を上げるとテュリは変わらず笑顔のまま、ぎゅっぎゅっと手を握ってくる。
「な、なに?」
「う〜ん・・・・・・おまじない?」
「なん・・・の???」
更にぎゅっぎゅっぎゅっと繰り返し握られてから離される。
「じゃあ明日もよろしくねルカ!」
「え?う、うん」
にこっと笑ってテュリが去っていく。
僕は暫く彼の行動について自問自答を繰り返した。
次の日、昨日の出来事をカイウスに話す。
へぇと呟いた後、ポツリと一言。
「案外テュリも子供っぽいとこあるよな」
普段は大人びてるのに。
それに頷きながらふと、友達だと断言してくれたことを思い出す。
キルのように家族のような繋がりじゃなくて。
カノンノのように唯一無二の繋がりじゃなくて。
誰とでも繋ぎたければ繋げれるような繋がりだけど。
こんな僕でも、もしかしたら彼の中で少しは意味のある存在なのかもしれない。
ちょっとにやけたらたちまちカイウスにどつかれた。
そんなカイウスも少しだけ笑っていた。
++++++
友達欲しがりのルカ君にこんなちょっとした事でにやけてほしい。
それともっとカイウスと絡んでほしい。
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