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天仔ネタ4


「息子ぉっ!!」
「あ、ヒナ・・・っぶ!!」

ばぁんっと、勢いよく扉が開いたかと思ったら、弾丸の如く我等が天仔様が唯に突進した。

「ゆ〜ぅゆ〜ぅ〜!」

そのままぎゅうぎゅう締め付ける。
ちなみに二人は真正面からぶつかったので、緋雅哭よりちょっと身長の低い唯の顔は、丁度谷間に挟まる形で抱きすくめられている。

始めはいきなりの事に頭がついていかなかった唯だが、挟まれたことによる酸欠と、締め付けられる圧力から、次第に彼女の腕の中で暴れだした。

「むぅ!むぅぐぐ!!」
「ゆぅ〜ゆぅ〜!ゆぅ〜ゆぅ〜っ!!」
「・・・ぐ、ぷはっ!は、離せヒナ!!苦しい!」
「当たり前だ!私の愛に包まれて苦しまないわけがない!」
「ヒナのおっきぃのの間違いだろ!いいからはーなーせー!」
「なんだよ〜ぅ!私の温かくて柔らか〜い愛が分からないのかぁ!!」
「んなのいらんっ!離せ〜!」

ぎゅうぎゅう。ジタバタ。
きゃいきゃい。ギャーギャー。

騒がしくて賑やかな二人のやり取りが室内に木霊する。
実は日常茶飯事なこのやり取りに、いい加減慣れてきたガリアははぁと溜め息を吐くと、傍らで何やら書き物をしているルーフィドに声をかけた。

「おいルーフよぉ」
「はい?どうかしましたかガリア?」
「いつも思うことがあんだが聞いてくれるか?」
「私で相手になる内容でしたら喜んで」
「なら言うがよぉ。
何であのガキんちょは、あのでけーのに挟まれといて、顔色一つ変えないんかねぇ?」


頬杖をつきながら、ぴっと二人を指差しガリア。
ルーフィドは「ん〜・・・」と考えるように唸った後にっこりと笑って、

「慣れでしょうね」
「慣れか」

そう結論づけた。
ガリアはもう一度ぎゅうぎゅう、ギャーギャーしている二人を見る。

一応、多分、唯は思春期とやらを迎えている年頃の少年の筈なのに。育て親の緋雅哭が、黙っていれば美人でボインな女性のせいで、本来抱くべき異性への興味が薄くなっているんだろう。
だからたまーに、ふざけ半分に話をふっても「は?」みたいな反応をあの子供は返してくる。
唯をガキたらしめているのは緋雅哭にも一因があるように思えた。

『てかそれって・・・育ててんじゃなくて逆に後退させてんじゃねぇか・・・?』

(きっと)健全男性代表のガリアが、そんなことを考えていることも露知らず、二人のじゃれあいはまだ続いている・・・。




「だぁーっ!くっそーい!!いい加減にしろよヒナ!暑い!苦しい!痛い!」
「その程度の三重苦、私の愛を感じていればなんとでもない筈なのに。何故私の愛は届かないのかしら?」
「知るかっ!離せ!離せ!離せ!離せ!はーなーせー!」
「あぁ・・・あの可愛いゆーゆーはどこにいってしまったのかしら・・・?無邪気で無垢なまま『ひぃーなー』って、両手を広げてハグを求めてきたゆーゆーはどこに!」
「いつの話だよ!!」
「うぅ・・・思い出すわ、私の愛を受け取ってくれていたゆーゆーの姿・・・!
そう!あれはゆーゆーが八つぐらいの新月の夜、私の布団に潜り込んできたら不安そうに『ひな、まっくらだよ、こわいよぅ』と言いながら甘え「ギャアアアアァァァァッ!!
なんちゅう話を掘り出してんだっ!!言うなぁ!その先を言うな!」
「一緒にお風呂に入ったらお湯が熱くて『やぁだひな!はいらないの!でるの!』って駄々をこねた可愛「わああああぁぁぁぁぁぁっっ!!
知らないぃ!オレそんなこと言ってないぃ!!」
「あぁ!そういえばいきなり私の膨らみに触れて『なんでやわやわしてるの?』と問い掛けてきた愛らし〜い思い出も・・・」
「・・・っの、バカ野郎っ!!!もう口を開くなこの破廉恥天仔ぃ!!」
「まぁ、破廉恥だなんて言葉を覚えて使えるなんて、成長したわねゆーゆー」

赤裸々な過去を暴露され、顔を真っ赤にした唯の発言に、感心した緋雅哭が彼の頭をよしよしと撫でる。
すると今まで暴れていた唯の動きが、ジタバタからわなわなに変わる。

「〜っ!、う〜〜〜〜ぐ〜〜〜〜!」

誉められて嬉しい気持ち、バカにされてるようで悔しい気持ち、頭を撫でられて気持ちいい気持ち、お子さま扱いされていて恥ずかしい気持ち。
それらが混ざりあって、熟した林檎並みに顔を真っ赤にして、ついでに瞳を潤ませて、唯はぷるぷると緋雅哭の腕の中で堪えて、堪えて、堪えて。



「・・・・・・ヒナのバカ野郎〜〜〜っ!!!」


大声で吠えて勢いよく彼女の腕から抜け出すと、そのまま室外へと逃亡した。






++++++
一日一ハグなヒナと、やられすぎて女性の体に耐性が出来てしまったゆーゆー。

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