カオスバースデー
ガチャリ。
「今日は・・・」
「きゃあ!ベルその服可愛い!!似合いすぎ!」
「えへへー!コトハもスカートすっごく可愛いよぉ!!」
「・・・・・・・・・」
扉を開けたら茶髪の女の子と金髪の女の子が抱き合っていてその背後に頭を抱えた眼鏡君が悲痛な視線をオレに送って出迎えてくれました。
「・・・いらっしゃい」
「え・・・どうも・・・」
眼鏡君ことチェレンという少年は、げっそりしたままオレを迎え入れてくれた。
これはどういうことなんだろう。
状況が理解できないオレ―トウヤは呆然として室内を見渡す。
テーブルには切り分けられたケーキ。
床に散乱した色とりどりのビニールテープ(多分クラッカーでも使ったんだろう)。
そして・・・トウヤの存在に気づくこともなく互いを褒めちぎりじゃれるコトハとベル。
「・・・失礼。説明を求めても?」
「・・・構わないよ」
承諾してチェレンは大きな溜め息を一つ漏らした。
説明の前にまずトウヤが現れた経緯を話すとこうである。
今日も元気にサブウェイ漬けをしていたトウヤの元に一通の着信が入る。
発信元は・・・トウヤの想い人のコトハ。
彼は名前を確認してからコンマ一秒の早さで通話ボタンを押した。こういう時には単純である。
画面に表示されたコトハの元気な姿にに嬉々しながら「どうしたの?」と話を促すトウヤ。
コトハからの用事はこうだった。
今日の午後、彼女の幼馴染み兼親友であるベルの誕生日パーティーをするのだが、たまには趣向を変えて誰か誘おうよ!という流れになりコトハはトウヤを誘ってきたのだ。
トウヤはそれを受けた。
ベルとはコトハ繋がりで何度か話したこともある。
純粋にイイ人である彼女の誕生日に誘ってもらえるなんて光栄だった。
・・・もっともトウヤとしてはコトハからの申し出は殆どの場合反射で受けてしまったりするのだが。二回目だがこういう時には単純である。
そこで通話を切って、誕生日なのだから何か送った方がいいと、近くにあった小物屋でヨーテリーのストラップを買う。
ちなみにトウヤ君、友人のアキラさんから女の子が喜ぶのはどんなものか、というレクチャーを何度も(強制的に)受けたのでプレゼント選びは慣れっこである。
そしていざ行かん!とコトハを含む幼馴染み三人の故郷、カノコタウンに降り立ち、コトハから教えてもらった家の扉を開けたら・・・そこは異世界でした。
こうしてトウヤは異次元に現れてしまったのだった。
「まずは二人の状態を説明するけど・・・単刀直入に言わせてもらう」
「うん」
「酔ってるんだ」
「うわ、本当に単刀直入だぁ・・・」
チェレンの言葉に顔をしかめながらチラと少女達を伺う。
にゃんにゃんしてた。
幻覚かな・・・頭に猫耳。お尻に尻尾が見える気がする。
「・・・誤ってお酒でも飲んじゃった?」
「いや・・・そうじゃない・・・ベルのおばさんお手製のケーキに・・・洋酒が入ってたんだ」
ぎょっとしてテーブルの上のケーキを凝視・・・が、疑問に思って首を捻る。
「洋酒って・・・ただの香りつけだろう?そもそもアルコールぐらい調理中にとぶだろうし」
「あぁ、その筈なんだ。けど・・・どうやらとばしきれてなかったみたいで・・・」
チェレンがチラと幼馴染みを伺う。
ぎゅ〜って抱き合っていた。
目の保養にいいだろうがいかんせん、少年達にはちょっと刺激が強い。
「・・・で?オレはどうすればいい?邪魔なら帰るけど?」
「・・・不本意だけど、これはいくらなんでも僕の手には余るから手伝って貰えると助かる」
その申し出にトウヤは目を丸くする。
思い出せる限り、チェレンという少年は自分に対していい感情を抱いていない。
「コトハという幼馴染みに言い寄るいけ好かない奴」というのが彼の評価だろう。
そんな彼が素直に頭を下げて物を頼んできたのだ。
「・・・とりあえずどうするの?」
「まずは取り抑えよう。それから水でも飲ますなりすればいい」
「オーケー。じゃあオレはコトハを抑えるね。いくらなんでもまだそこまで親しくなれてないベルさんを抑えるのは無理だから。
・・・あらかじめ言っとくけど下心なんてないよ?」
「・・・だったらそれで頼む」
こうして奇妙なタッグを組んで、二人の少年はじゃれる少女を抑えるべく動いた。
(ほらベル!いい加減コトハから離れろよ)
(ふわぁ!何するのチェレン!嫉妬?嫉妬なのぉ!)
(何馬鹿げたことを・・・)
(コトハ、立てる?)
(はれぇ?トウヤだぁ!いつ来たのぉ?)
(今さっきね。ほら、そのままじゃ折角の似合いの服が台無しだよ?)
(ふぇ?似合う?うわーい、トウヤが褒めてくれた〜(にぱー))
(・・・・・・キュン)
(下心は無いって言ってなかったか?そこのキザ野郎・・・(ゴゴゴゴゴ・・・))
++++++
うちのトウヤは恋は盲目並に一直線。
仲良しベルコトと苦労人チェレン君と出来る子トウヤ書きたかった。
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