Lと未熟な『ワタリ』の話。 | ナノ


  ソファで寝そべる女


「日本はひさびさですね。ワタリ」
「そうですね。日本のL専用のセーフハウスに帰ったらすぐにコーヒーを用意します。」
「ありがとうございます。日本にいると和菓子がたくさん食べられるので私も楽しみです。」

運転席の初老の男性、ワタリとひどい猫背の男、『世界の切り札』とも呼ばれる探偵のLはそんな話をして世界中にあるLのセーフハウスのひとつに向かっていた。

「では、車を止めてまいりますのでLはどうぞ先に上がってください。」

そういい残しワタリは車を駐車しにいった。
素足にかかとを履き潰した靴でLはヒョコヒョコとセーフハウスに向かう。
クルクル回る椅子とたくさんのお菓子とモニターと捜査資料に囲まれた部屋からめったに出ることの無いLが外を歩いているだけでなんだか違和感を感じる。

あぁそうそう。たしか日本にはとっても座り心地のよいソファがあった。
ついたら一番にそこに座ろう。

久しぶりのセーフハウスにはみなれた風景とお目当てのソファ。そしてそこに寝そべる女の姿があった。

「おや、Lどうしました。入り口で突っ立って。」
「ワタリ、私の目が間違っていないのならば私専用の家のソファに見知らぬ女が寝そべっているんですが。」

しかしワタリは特に驚いた様子も無く部屋に入ると寝そべった女の肩を優しく揺らした。
女はビクッとしたあと勢いよく起き上がり

「あ、おかえりなさい〜。」

と手を振ってふにゃっと笑った。

「ワタリ、この方はどなたですか?」

Lはまだ警戒しているのか鋭い目つきで彼女を睨む。
女はLのお気に入りのソファから立ち上がってつかつかとLのほうへ歩いて

「へぇ〜初めてみた。あなたがLなの?」
「L、この方はレミさんとおっしゃって今までこの場所を手入れしてくださっていました。そしてとても優秀な捜査官でもいらっしゃるんですよ」
「そんな優秀だなんて…。手入れといっても埃かぶらないように掃除したり書類の整理したりぐらいなんだけどね。」
「そうですか。」
「ワタリさんは私の恩人なの。孤児の私はワタリさんの孤児院で育ててもらったの。私は平凡だからハウスじゃなくて普通の孤児院だけどね。」

レミは物怖じもなくLにグイッと近寄る

「だから私ワタリさんを尊敬しているしワタリさんの力になりたいの。ワタリさんの仕事を手伝うためにここにいるわけ。」

レミの言葉にLは少し目を見開く。表情の乏しいLだがレミはLが驚いていることが分かった。

「だからこれからよろしくね、L」

レミは握手を求めるように片手を差し出す。
Lもしばらくそれを凝視したあとポケットに突っ込んだ片手をぎこちなく差し出す。
ワタリはそれを見てにっこりしたあとLに出すお砂糖だらけのコーヒーの準備を始めた。

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