血も滴る告白タイム
「さっきから何スネてんですか。」
「拗ねてない。」
「それを拗ねてるって言うんです。」
あぁ、うざったい。いつもは仕事仕事で興味なんて示してくれないのに今日に限ってやたらとかまってくる。
けしてこの間みたマキちゃんとのツーショットが気に食わないわけじゃない…多分。
鬼灯がどれだけ誰と何をしていようがまいには関係ないんだから。
まいの面倒見係、鬼灯はそれだけ。それだけの関係。
「いつまでついて来んの?ここどこよ。」
「あなたが私の顔をみるなりサッとどこかへ行くからでしょう。私こそ同じことを聞きたいですよ。もう地獄の刑場に入りましたよ、どこに向かってるんですか。」
そういいながら鬼灯はまいと一定の距離を置きながらついてくる。
閻魔殿で彼と目が合い、反射的に逸らしてしまった。
空気が重苦しく感じてその場を逃げるように去った。ここまではいい。
その後鬼灯は怪訝そうな顔をしてまた何事も無く仕事に戻る、はずなのに。
そのまままいの後をついてくるのだ。
引き止めるでも近づくでもなく、ただ声が聞こえる距離を維持してついてくる。
引き離そうと早足で歩いても見たが鬼というものは足が速いのだろう。まいがどれだけ早く歩いても涼しげな顔でついてくる。
おかげで止まるわけにもいかず閻魔殿を超え、いかもに地獄!という場所まで来てしまった。
まいにもここがどこなのか、どこに着くのかわからない。
「仕事は?毎日忙しくてまいにかまう時間なんて無いんでしょ?」
「それが分かってるならわざわざ面倒なことしないでもらえますか?」
「まいがどこ行って何しようがまいの勝手!」
後ろで鬼灯がため息をつく音が聞こえた。
ほら、どうせ面倒なんじゃないか。さっさとあの書類まみれの机に帰ればいい。
「それで仕事が終わったらマキちゃんとイベント楽しめばいいんじゃない!?」
慌てて口をつぐんだ。思ってたことが口にでてしまった。
いまさら口を押さえたところで鬼灯には聞こえているだろう。
「そういうことですか…」
またため息が聞こえる。今日ほど穴があったら入りたいと思ったことはない。
その瞬間まいの体がフワッと宙に浮く。
「ぅえ!?何?」
「面倒がかかる上にまいさんはヤキモチ妬きなんですねぇ。先日キチンと説明したでしょう?マキさんはイベントに出てくださるだけ。それ以上もそれ以下もありません。」
「そんなの信用できないもん…あんな可愛い子だったらいつグラッて来るかわかんないし!」
お姫様だっこで抱えあげられてきっとテンパってるんだ。
本当なら嬉しいはずの展開なのに、いつもは遠い鬼灯とこんなに密着しているのにあのアイドルの存在がすごく大きい。
鬼灯の眉間にシワが寄る。
「私の話ちゃんと聞いてますか?それ以上もそれ以下もありませんと言っています。しかも仮に私とマキさんがどうかなったとしてあなたには関係ないでしょう。」
終始顔色を変えずに鬼灯は言ってのけた。
まいはよっぽど応えたのか言葉がでない。
「か、関係あるもん…あんな可愛かったらまいじゃ勝てないし、まいだって鬼灯のこと好きなのに!」
もうなんとでもなれと思ったのか、ずっと内に秘めていた気持ちを押し出すように声に出すと鬼灯の胸を押して地面に着地する。
「まいの気持ちも知らないで!ちょっとはこっちにも構いやがれ!鬼灯のバカ!せいぜいピーチ・マキとあんなことやこんなことしてれば!?」
そういって無我夢中で走り出す。
「あ、まいさんそっちは池です。」
鬼灯が言ったが早いかまいが池にダイブしたが先か、呵責される亡者にも負けず劣らずの絶叫で落ちていく。
しかもここは地獄。地獄の池といえば当然
「やだー!鉄くさい、これ血の池じゃん」
「そりゃあ地獄ですから。ちょっとは頭冷えました?」
池のそばでまいを見る鬼灯がしゃがみこみ手をさしだす。
「…ちょっと冷えた。いきなり怒ってごめん」
「よろしい。ついでに教えてあげますが、私も結構あなたのこと好きなんですよ。」
そういうと状況が飲み込めないまいを池から引き上げ血まみれの服を掴む。
「あぁ、すごくインパクトのある姿になりましたね。一応血なので早めに洗濯しないと落ちませんね。私の部屋にシャワーがありますのでどうぞ使ってください。」
そういうと血でぐっしょりぬれた彼女の手を掴んで閻魔殿に帰っていった。
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