竜持07


話は全く違うけど,これと設定が同じ.


「おい降矢,邪魔なんだが」

「すいません」


横柄な彼女は,僕と同じクラスのシェリアさん.

綺麗な見た目と裏腹に,口が悪いと評判です.

でも,実際彼女は口が悪いんじゃなくてキツイだけなんですよ.


「ごめんな,気を悪くしないでくれ」

「大丈夫ですよ」

「ありがとう」


僕が彼女を擁護する理由はひとつ.

思いを寄せているからですよ.


「最近,図書館にあまり来ませんね?」

「あー…そういえばそうだな」

「前に読みたがっていた本が入ってますよ」

「ん,じゃあ近々行こう」

「えぇ,お待ちしてます」


彼女は結構図書館に来てくれるので,仲がいいんです.

そうじゃなきゃ,僕だって周りと同じように陰口叩いてたかもしれませんね.

でも,口が立つだけあって頭もいいんですよ.




放課後,シェリアさんが図書館に来ました.

ちょうど凰壮くんの相手をしていたので,気付かなかったんです.


「…降矢」

「あ,シェリアさん.すいません,凰壮くん席を外しますね」

「おー…」


凰壮くんは,窓際の天使に夢中でした.

毎日ここに来て眺めているんですよ.

いい加減勇気を出せばいいのに,困った人です.


「新刊,期限短いのか?」

「そうですね,最大1週間です」

「読みきれる気がしない」

「また延長しに来たらいいですよ」

「ふーん…」

「でも,特別ですからね?ホントは駄目なんですけど」

「いいのか?」

「内緒ですよ」

「ん,ありがとう」


僕が出来ることはこのくらいですから.

シェリアさんだから目を瞑るんですよ?

なんて,ちょっとクサイですかね.


「お前の弟,毎日ここにいるのか?」

「そうなんですよ.毎日ああして,窓際の天使ちゃんを見てるらしいんです」

「…飽きないもんだな」

「まったくです」

「あ,書くものがない.借りていいか?」

「どうぞ」


シェリアさんに,ボールペンを貸して,記入してもらいました.

癖のある文字に,ついつい目が行ってしまいますね.

返すときに指が軽く触れて,ドキッとしてしまいました.


「ペン,ありがとう」

「いえいえ.今日はもう帰るんですか?」

「…別段用事なんてないしな,そのつもり」

「なら,もう少し居ません?良かったら一緒に帰りましょうよ」

「それは構わないが…わかった.じゃあ荷物取ってくる」

「はい」


よっしゃー!!!という思いで叫び出しそうになったのを堪えました.

一緒に帰られるなんて,なかなかないので.

この時点で凰壮くんとは一緒に帰れませんね!!

シェリアさんと二人で下校…!!!!


「シェリアさんは,読書以外に何か好きなこととかあります?」

「ない」

「じゃあ,趣味は読書?」

「あぁ」

「おススメの本とかあります?」

「小説が好きなら●●●●という作者の書いた本が面白い.言葉こそ難しいが,結構展開の読めないサスペンスが多くて,降矢くらい本を読む奴なら楽しめると思う.エッセイなら■■■という人の本が印象に残ってるな.なんとも捕らえ難い視点と的確な物言いには,読んでてすっきりする」

「へぇ」

「まぁ…私の主観だからな,おススメと言えるのかどうかはわからない」

「じゃあ今度読んでみますよ.それで感想を伝えます」

「別に伝えてくれなくてもいいんだが…まぁ,そこそこ楽しみに待ってるよ」


いらない,と完璧に断らないところにシェリアさんらしい優しさが見えます.

興味のないことには無頓着なのに,好きな事となったら熱くなる.

まるで誰かを彷彿とさせるような感じですよね.


「降矢のおススメは?」

「僕は▲▲▲▲というのなんですけど,今年のベストセラーになった本です」

「書店で見かけたことがあるな…内容は?」

「ミステリーなんですけど,本の薄さの割りに内容がめちゃくちゃ濃いんですよ.リアリティのある世界観は,惹きつけられます」

「…今度見てみる」

「感想,待ってますから」

「読むとは言ってない」

「そう言っていつも読んでくれるじゃないですか,僕のおススメ」

「お前のおススメは,表紙をめくってみても,ハズレがないからな」


実はこうやって本を紹介するのは初めてじゃないんですよね.

感想というか意見を交換することは結構あるんです.

シェリアさんの自由奔放さが,僕は好きなんですよ.

まるで,虎太くんのような…そう,虎太くんのような,あれ?


「私,こっちだから」

「あ,はい.じゃあまた明日」

「うん」


あ,今気付きましたよ.

彼女,虎太くんに似てるんですよ!

そっけない態度を取るくせに実はものすごく想ってくれてたり,好きなものになると目を輝かせて語ったり,嫌いなものはとことん嫌いだったり.

納得です.






―好きになった人が,兄に似ていました―





「凰壮くん聞いてくれます?僕,虎太くんに似た女子が好きなんです」

「はぁ!?」

「ものすごく無愛想な癖に,自分の好きな事になると本気出して,感情がすぐ顔に出ちゃったり,さり気なく優しさを見せたり…」

「(そんな女版虎太みたいなやつが本当に存在するのか…?)」

「凰壮くんで言う天使ちゃんみたいな感じです」

「お,おぉ…(言えねぇ!口が裂けても天使ちゃんが竜持に似てるとか言えねぇ!!)」


血は血.


「上手くいくといいな…(変なとこまでシンクロしてんなよな…!これで虎太が俺似の奴好きになったら笑えねぇ)」




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