「ただいまです……」

 兄さんがどんよりとした顔をして帰ってきた。相当つかれてるみたい。

「んふふ、見てみて、これ」
「……無駄遣いをして。家にたくさんのお菓子があるでしょう」

 目を細めネクタイを緩める兄さんはパリコレモデルのよう。一度カミツレちゃんに双子モデルとしてデビューしなさい手配してあげるわよって言われたことあるけど、ぼく達こういうのには興味ないんだよね。ポケモンバトルが出来たら満足だから。って話が脱線しちゃったごめんね。
 無駄遣いは断じてしてないとということを証明するために、録画してあった彼女からの着信映像を流す。ぽかんとしていた兄さんの顔が微笑みに変わる。お茶を入れましょうと鼻歌を奏でながらキッチンにいくものだから、ぼくは驚いてしまう。そ、そんなに嬉しかった!? だったら、3人で彼女の自宅へ行けば良かったね。ちなみにぼく達は、小さいころ合唱団に入っていたこともあって歌は上手いんだ! 兄さんが歌えば、合わせてハーモニーを生み出すしその逆もよくある。彼女とぼく達でよく歌ってたんだけど、オトナになってからはそんな機会も減っちゃったなぁ。

「お菓子をね、取りにったらノボリさんにお疲れさまって伝えといてだって」
「有難うございます。また今度、お礼の品を持って遊びに行きましょう」
「いつ予定が合うかな〜楽しみだなぁ」

 きっと、兄さんと彼女はぼくがいなくても普通に会う。ぼくの知らないところで連絡を取って、ふらりと出かけることが出来るんだろう。オトナな付き合いが出来て、一緒にいて心地よい空間を作れるんだ。ぼくはこんなだから、ちょっと静かになると焦ってひとりでペラペラ喋ってふざけてばかり。真剣な表情は似合わない! 真面目なぼくはぼくらしくない! そう、一対一で会うより集団の中でその良さを発揮できるんだ。逆に兄さんがぼくみたいなこと出来るわけないし、お互いに足し算引き算が出来ているから3人で会うと心地よく感じるのはこのせい。兄さんは何も言わないけど無意識に分かってるし、ぼくも自然とそういう役割を楽しんでやってる。この均衡を崩すようなことを仕向けてきたら、ぼくは容赦なく兄さんになるし。それも理解してくれてる。

「おじいちゃんおばあちゃんになっても、ずっとこのままでいたいね」
「全くです」

 お互いに紅茶を一口。





告別までの指きり


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