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その一言が私の全て

 夜の黒が、闇の無が私の全てを蝕んでいく。



『それは違う』



 何が違う?何が正しい?

 私の問いかけは、何度も否定の波に呑まれてしまうだけだ。



 あの人のことが好き?違う。愛している?違う。愛せない?違う。側にいたい?違う。側にいられない?違う。あの人は私を好きじゃない?違う。愛している?違う。何が違う?


『それは違う』


 その一言は答えになっていないのに、全ての問いを無効にしてしまう。焦燥から目をそらそうとしてみた蛍光灯の明かりさえも、全ての色を褪せさせていく。



 視界までも無に浸食されそうになった時、私は最後の問いを投げかける。





 私はもう、全てを終わりにしたいの?


『それは違う』



 視界に色が戻ってくる。これまで聞きたかった全ての答えを聞けた気がした。その答えは、夜の闇の中でも私という存在が失われない、唯一の言葉だった。



 急に眠くなってきた私は、全てを無に託した。明日も『存在』として生きるために。



その一言が私の全て
問うことは信じようとする手段に他ならない