平和島 | ナノ

 

車内では九十九屋真一をマナーモードに設定し、
 ご使用はご遠慮下さるよう、
 お願い致します。
 また、折原臨也の付近では
 電源をお切り下さい。
      株式会社 平和島静雄鉄道

↑のシナリオ?を機械からいただいたので膨らましてみた。









普段乗っている新宿行きの電車ではなく仕事帰りのサラリーマンがごった返す電車へと間違えて乗ってしまったことで、普段は感じない圧迫感や嫌悪感、息苦しさにため息を漏らしたくなる。
周りを見渡しても汗臭い暑苦しい男ばかりで、さすがに女性の方々はすでに女性専用車両へと避難を終えているようだ。正直羨ましい。
目線を何処に向けても誰かと目が合ってしまいそうで、それが酷く面倒な俺は目を瞑って自分の思考を深くまで沈ませてみることにしてみた。


(今日は池袋に行ってもシズちゃんに会わなかったし良かったな…取引相手は満足していたし、この電車ラッシュを除けば最高な一日として終わりそうだ……)


シズちゃんと池袋で会わない、これは俺の中でトップに輝く最良事項だ。これがクリア出来たのであれば他は概ね良しであっても充分なのである。
なんだか俺がシズちゃんを特別視しているみたいでひどく感に障りはするが、事実であるのだから仕方がない。此の際黙止しておこう。

(それにしてもこの人数はひどいんじゃないかな…不景気だからってみんな残業しないわけ?…全く日本の将来が危ぶまれるよ……)

人間をこよなく愛する情報屋はそうやって人間の終末を悲観するが、そこで自分の周囲に違和感を感じた。

(なんか俺の周りだけ、人数多くないかなぁ…気のせい?)

先程よりも心なしか密着度が増したような気さえする。向こうを見てみると明らかに隙間が出来ているというのに、周囲の男たちは広がろうとする素振りを見せない。
男たちは皆、それぞれ携帯端末を手にしていてそれがまたこの異様な雰囲気に拍車をかける要素と成っていた。


「………っひ!」


訝しがりながらも無視しようとした臨也の太ももに誰かの手が当たった。それを判断する間も無く、その手は離れようとしないまま下から上へと掌を這わせ、厭らしささえ感じる触れ方をしてきた。
気が抜けていたせいもあるのだろうか、臨也は嫌悪感から素直に小さな悲鳴をあげてしまい、反射的に自分の利き手で口を押さえようとした。
すると、そこで一つの事に気が付いた。

(腕が、動かせない……?!)

自らの意思、命令に反して臨也の右腕は動かなかったのだ。
周りの男たちの体躯が圧迫しているせいで、腕どころか首まで満足に動かせない状態になってしまっていたのだ。
なんということだ、とつり革に引っ掛けていた左腕も下げようと試みたが肩が痺れにより固まってしまっていて、無理に動かすと痛みを伴って動かすことが出来なかった。

臨也が一人奮闘している間にも、どうやら痴漢行為をしているらしい背後の男は無防備な太ももを撫で回す。時折尻たぶの方にも範囲は広がり、臨也は気持ち悪さからその身体を小さく震えさせるしかなかった。


臨也は世間一般で眉目秀麗と呼ばれるに相応しい容姿をしていたが、電車やバスなどの大人数用の移動手段を利用するときも人の密集する不快感が嫌でラッシュの時間を避けていたことが幸いして、今まで男に痴漢などされたことがなかった。つまり今回が初めてであった。
だから同姓である自分に痴漢行為を働くこの男が理解できなかったし、その行為から快感を感じることなどできず、ただ嫌悪感のみを感じることしか出来ないのだ。

心の中で、クズがっ…と悪態を吐いてみても男には伝わらず、大人しい臨也に調子に乗った男はさらにその行為を過激なものへとしていった。

後ろを撫で回していた手は前へと回り、スラックスからインナーの裾を引きずり出し手を差し入れてくる。
あまりにも大胆なその手際に臨也は他の男たちが気付いてしまうのではないかと焦りを感じた。

男が男に痴漢されているなんて知られてたまるか、という心情とは裏腹に、背後の男以外は全員、未だ携帯の画面を食い入るように見つめていて、先程と特に様子が変わっていないように感じた。
ほうっ…と少しの安心から息を吐こうとした瞬間、下腹部に思わぬ刺激を受けて吐こうとしていた空気の塊は喉の途中で急に止まり、臨也は激しく噎せた。


「っは、っは………ぅえ、」


噎せる臨也を他所に痴漢の手は止まらない。しかし胸の二つの突起を同時につつき始められたのが分かり、臨也はそこで疑問を浮かべた。

(痴漢の手はどちらも胸のとこにある…じゃあ、今のはなんだ……?)

突起を弄る手は摘まんだり爪を立てたりして臨也を追い詰めているままだ、嫌な予感がして、胸を見ないようにしつつそのまま視線を下のほうに向けてみると。

「なっ………ぁ、あぁ!」

臨也がその光景に驚いて口を開いたのと下腹部に当てられた前の席に座る男の膝が押し上げられるのは同時だった。
狙ったかの様なタイミングで口からははっきりと嬌声だと言える声が出てしまった。
急いで唇を噛み締め押し殺そうとしても二人の男たちからの攻めは止まらない。
胸の突起への攻めも始めは痛さしか感じなかったのが、今では快感を拾い始めてきていて臨也を苦しめる。
その刺激により反応し始めた下腹部を、さらに前の男の膝が刷り上げることにより直接的な快感を与えられ、臨也にとっては堪らなかった。

ねっとりと後ろの男は耳を舐め上げ始め、周りなど気にしていない様子である。
それに対し前の男はスポーツ雑誌を両手に掲げ顔を臨也から隠してはいるのに、足を上下、時に捏ね回すように動かしていて周りには気付かれないようにしながらも、大胆な行為に及んでいた。


「っふ…あぅ……んんんぅ…」


口を噛み締めていても漏れ出す声は最早隠せてなどいなくて、唾を呑み込むような音が周囲の男たちから聞こえてきた。
後ろの男や前の男からではないところから聞こえてきた音に臨也は快感に耐える為に伏せていた目を開ける。


横にいる若い男が自分の表情をじっと見つめていた。


「ひっ……えっ、なに、ちょっと…んぅう!!」


なかなかにホラーじみた様子に悲鳴を漏らすと、男は臨也の顎に手を掛けてなんと唇を合わせてきたではないか。
何が起こったのか、されているのかの判断がつかず呆ける臨也の口内に、男は舌を滑り込ませ臨也の舌と無理矢理絡み合わせるのでキスは激しいものへと変化していく。

「ん!うぅぁ…はぁ……んうううう!!」
(えっ、なんで…やめろよ!!!)

おぉ……と周りから感嘆の声が聞こえた。
どうやらこの車両で自分に注目していない男はもういないようだ。
臨也が顔を真っ赤にさせながら快楽に溺れているさまを見てあちらこちらで男たちが自分たちの股間へと手を伸ばし始めた。
はぁはぁと荒い息がそこら中から聞こえてくる。そんな異様な空間の中心にいながら臨也は未だに自分の置かれた立場というものを理解できていなかった。

(なんだよ!こいつらなんでこんなこと、を。頭おかしいんじゃないの!!!)


「…っは、ああん!いやっやめろよ…!!」


もう臨也には取り繕う理由などない。ここまで盛大に集団による痴漢行為が行われているのだ。
自分の自尊心を守ることなどできそうにもないので、まずはこの愚かな行為を止めようと試みた。
しかし男たちは臨也の必死な様子を笑い、我よ我よという風に臨也の淫らに火照った身体へと手を伸ばしてきた。
胸で小さく主張していた突起はすでに二つの性器へと変わり、代わる代わる様々な厚さの掌や指先で捏ね繰り回される。
臨也のペニスは既に下着から取り出されていて、根元から幹を大きな掌が擦りあげ先端や雁首を細い指先が弄くる。
先走りは床に垂れる程溢れ出てきており臨也の射精の限界が近いことを示していた。

どこから伸びているのかも分からないたくさんの腕に触られて、臨也の身体は喜びを感じていたがその心は苦痛と羞恥と絶望に涙を流していた。

「ひっ、く……くそ、やめろよ!!!」

心だけでなく実際に臨也は目から少しずつ涙を流しながら男たちに訴える。
どうして、なんで、自分にこんな仕打ちをするのだと。

確かに臨也は自分がどれだけ悪逆非道な行為をしてきたかちゃんと自分で理解している。
しかしそれがこの行為の理由になるとは思ってはいないのだ。
だから、何故こんな仕打ちを受けなくてはならないのだと訴えたかったのだ。知りたかったのだ。


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