2000年後もラブソングを


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Devote my life to you


1


「フィーナ。」


やる、とでも言うように、リヴァイさんから無造作に箱を手渡された。
…そもそもにして、今日はどうして一緒に出かけたのか、って、世間ではホワイトデーと言うイベントの日なわけで。
そういうことにすっごい疎そうな感じもしなくもないのに、そこは私より年上で今までも…元カノさん、とか…。
そう、いう人、と、いろんなイベント、過ごしてきたのか、なぁ…、なんて思ってしまうほど、意外なことにリヴァイさんは、こういうイベントには、毎回つきあってくれていた。
だから今日も別にそうとは言わなかったけど、リヴァイさんから日付指定されて、普段デートの時に着るものなんて何にも言わないのに「それなりに見れるものを着て来い」なんて言われて。
リコちゃんにどんな服がいいか、なんて相談した上で(ちなみにリコちゃんは「アイツの隣なんて何着てようがそれなりに見れるに決まってる」と言い張ってなんの参考にもならなかった…)普段着ないような少し大人びた服を着て、仕事終わりのリヴァイさんと待ち合わせた。
待ち合わせに着たリヴァイさんは、私の服を一瞥した後「行くぞ」と私を促し、ちょっとお高めであろう、ブルーノートと言うジャズクラブに連れて来てくれた。
そこで普段聞かないような音楽を聞きながら、食べないような料理を食べて、あぁ、これがこの人からのホワイトデーのプレゼントなんだ、って思っていた。
何も言わないあたり、すごくこの人らしいなぁ…、なんて。
そんなこと思っていた帰宅途中(ちなみにリヴァイさんが送ってくれてる最中)
もうすぐうちに到着、ってことろで、目の前に無造作に突き出された物体に、頭にクエスチョンマークをつけながら受け取った(受け取らないとマズイ雰囲気だったし)


「これ、」
「嵌めろ。」


なんですか?と聞く前に、リヴァイさんは短く答えた。
…………と、言うことは、この箱、開けていい、ってこと、だよ、ね……?
一応、リヴァイさんの顔をチラッと伺うように盗み見ると、無表情のまま腕を組んでこちらを見ていた。
……………嵌めろ、って、ことは、これ箱の大きさから言って指輪?だよ、ねぇ…?
なんでなんでなんで、なんて思いながら、受け取った箱をパカッ、と開けると、


「………」


月明かりの下でも燦然と光り輝く指輪が収まっていた。


「……………」
「……………」


………………えー、っと…?
今日、は、ホワイトデーで、きっとその、お返しのデートなわけで…。
でもこれは…。


「これ、」
「なんだ?」
「…高い、です、よ、ね…?」
「はぁ?」


少し声を裏返したリヴァイさんの顔を見ると、お前何言ってんだ?的な呆れ顔をしていた…。


「まぁ…、安くはねぇな。3ヶ月分、て奴だ。」
「……………なんの?」
「あ?」
「…なん、の、3ヶ月分なんです、か…?」
「………給料以外に何がある?」
「きゅう、りょう…、」
「エルヴィンやピクシスのじぃさんに最低でもそれくらいは出すものだと言われてな。」


リヴァイさんの言葉に、もう1度手の中の指輪に目を向ける。
………………もしかしなくても、この光り輝いてる石は、ダイヤモンドと言うものなんだろうか………?


「あの、」
「なんだ?」
「い、」
「あ?」
「いち、万、や、に、万、とか、の、話じゃ、ない…、ですよ、ね…?」
「………テメェ、俺の給料がそんなに少ねぇと思ってんのか?」
「そ、いう、意味じゃ、」


イラッとしたリヴァイさんの声を耳に、目の前でキラキラと、月明かりの下それは光り輝いていて………。


「…………」
「…………」


………え?リヴァイさんの給料っていくら…?
待って待って待って。
大学卒業後の初任給って確か24万くらいだったはず…(リコちゃん情報)
リヴァイさんは大学卒業後数年は働いてるから、それ以上、ってことでしょ?
それの3ヶ月分?
て、いくら………?
え?仮に初任給から給料あがってないとしても、最低でも70万はするってこと!?
この指輪がっ!!?


「…おい、お前、」
「もっ、」
「うん?」
「貰えませんっ!!」
「………あ゛?」


もし無くしてしまった場合(リヴァイさんから貰ったもの、無くしたりなんてしないけど!)私、絶対弁償出来ない…。


「貰えるわけ、ないじゃないですか…!」
「…………お前それは、」
「こ、これはお返しします!今日はご馳走様でした…!」
「あ、おいっ!」


リヴァイさんに一礼して、バタバタ自宅に駆け込んだ。
……………おかしい!絶対におかしいって!!
あの人、女子高生になんて高価なものを贈ろうとしてるの…!!
いくらリヴァイさんが社会人で、お給料もいっぱい貰ってるからってアレはさすがにおかしい…!!
あんな高価なもの貰えるわけないじゃない…!!
………でも………。
リヴァイさん、て、あぁいうの、今までも普通に、誰かに、贈ってたり、した、の、かな……?
だから感覚がズレてる、とか……。
話を聞く限り(本人からじゃなくリヴァイさんの友達のハンジさんとかからだけど)今までの……元カノさん?とか、は、すっごいお洒落でスタイルもすっごい良いお姉さんたちばかり、って話だったから……。
そういう人たちに合うプレゼントを選び慣れてて、私みたいな女子校生が持ちそうなプレゼントなんて想像も出来なかったんじゃ……。
………リヴァイさん、すっごくモテるって話だし(ハンジさん情報)有り得る…。
元カノさんたち、は、もしかして、あぁいう時、黙って受け取って、た、の、かな…。
でも私、最低でも70万もする高価なもの、貰えない、し…。
だけどそれって、リヴァイさんにすっごい失礼なこと、したのかもしれない…。
どうしようどうしようと、この日なかなか寝つくことが出来なかった私だけど、私とはまた違った理由でリヴァイさんも寝つけなかった、なんて、知る由もなかった。
そしてその翌日、


「はっ!?70万っ!!?」
「リコちゃん、声が大きい!」


学校でリコちゃんに昨日のことを話した。


「70万て何!?」
「い、いや、実際のところ、は、わからない、けど、」
「けど!?」
「お給料、3ヶ月分、て言ったら、それくらいはする、と、思う。最低でも…。」


一応、お昼休みの中庭で、人気がないことを確認して話し始めたけど、リコちゃんの驚いた声は予想以上だった…。


「なぁ、フィーナ。」
「うん?」
「1つ確認していいか?」
「な、なに?」
「お前の話しを聞くと、だ。昨日『普段じゃ考えられないような』たっかいジャズクラブに連れて行かれて食事した後で帰り際指輪を渡されたんだろ?」
「う、うん。」
「で、あのチビは言った。『給料3ヶ月分だ』って。」
「…まぁ、はっきりそう言ったんじゃなくて『3ヶ月分、て奴だ』って言った、って言うか、」
「………それってさ、」
「うん?」
「お前、プロポーズされたってことじゃないのか?」
「…………………」


リコちゃんの言葉に、一瞬で頭が真っ白になった気がした。


「ま、まさかぁ…!だ、だってプロポーズって『結婚しよう』とか、そういうこと、言われるん、じゃ、ない、の?」
「まぁそうだな。」
「だ、だって私あの時、指輪のケース渡されて『嵌めろ』って言われただけで、」
「あのチビ『拒否権』て言葉、知らないのかよ…。」
「そ、それに私まだ高校生で、」
「お前ねぇ…、」


リコちゃんは大きな大きなため息を吐いた。


「お前があのクソチビに目つけられたのいくつの時だと思ってるんだよ?15だぞ、15!内定も決まってた大学卒業間近って男が15のガキに目つけたんだぞ!誰がどう好意的に見てもロリコンであろうあのチビが、お前が中学生だろうが高校生だろうが今更気にするわけないだろ!」
「…リコちゃん、その言い方…」
「賭けてもいいけど、その指輪、プロポーズのつもりだったと思うけど?」


呆れた顔をしながら、リコちゃんは言った。
………確かに、すっごい高そうな石がついてて、しかも3ヶ月分、とか、それなら納得いく。
いくんだけど……、


「で、お前はそれを突き返した、と。」
「どうしよう!?」


急に昨夜の自分の行動に後悔の文字「しか」浮かばなくなった………。


「まぁいいんじゃないか?あのロリコンチビとそのまま別れれば。」
「リコちゃん、真面目に考えてっ!!」
「…至って真面目だけど…。」


リコちゃんは、リヴァイさんをよく思っていない(どころか、早く別れてほしがっている)
だからもう、これ幸いと、全く相談に乗ってくれる気配がなかった。
ただ、ここで悩むより会いにいけばいいだろう、とリコちゃんは言った。
…………確かにそう、なん、だ、けど…。
放課後会いに行ったらどうだ、と言うリコちゃんの言葉に、重たい足取りで、リヴァイさんの会社のある方へと向かった。

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bkm

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