■思春期真っ盛りですから
「優作さん!お世話になります!」
「やぁ、よく来たね」
家についたら、なんつーか、父さんがくたびれた小汚ないオヤジになってた…。
「父さん仕事は?」
「終わらせたぞ?でもまぁ、少し寝むらせてくれ…」
むしろ寝てくれ。
って言いてぇくらいだ。
あー、なんか俺もまだ眠ぃし、部屋で寝てっかな…。
「今日は疲れてるだろうから、お家でディナーよ!でもまだディナーまでに時間あるし、新ちゃんとその辺散歩してきたら?」
「え、俺も寝てーんだけ」
「はい!そうします!工藤くん行こう!!」
いやオメー、俺の意見聞けよ。
話遮られたけど、俺今寝てーって言ったよな?
でもなんだこの期待に満ちた眼差し…。
ちっ!
めんどくせぇなぁ!!
「ほら、行くぞ!」
「ありがとう、工藤くんっ!」
少し気だるい体に鞭打って、ロスの街を歩き始めた。
「工藤くん、工藤くん!」
「あー?」
「すっごいでっかいホットドック!サイズがアメリカン!!」
「あー…でもこっちじゃフツーじゃね?」
「工藤くん、工藤くん!」
「あん?」
「あっちあっち!アレ見てっ!!向こうに見えるあのハリウッドって字、私テレビで見たことあるっ!!」
「…良かったな」
「工藤くん、工藤くん!」
「今度はなんだよ!?」
「今の人の胸見た!?体の前にスイカがついてる勢いだよっ!!さすがアメリカンっ!!!」
「んなこといちいち報告すんじゃねーよっ!!!」
なんだよ、体の前にスイカって!!
確かに今の人異常なほどデカかったけどっ!
「あ、工藤くん工藤くん!」
「だからなんだ!?」
「ほら、これリード!」
「…はあ?」
「コレ買って首につけて!私がリード持つから!そしたら迷子にならないひゃいいひゃいいひゃい!」
「むしろオメーに首輪につけて俺がリード引っ張ってやるよ!」
「じょ、じょうひゃんでひゅ…」
「ほら、行くぞ!」
「…はい」
壊れたな、コイツ…。
いつもなら引っ張るな!とか言うのに、引っ張られてもへらへらしてやがる…。
なんか不気味だ…。
「テーマパーク巡りぃ!?」
「そう!優作さんが連れてってくれるって!!楽しみだね!」
「…俺は行か」
「工藤くんは絶叫系大丈夫だよね?今回は絶叫系乗り倒す予定だから楽しみ!!」
「…だから俺は」
「新ちゃんはそこまで絶叫系好きじゃないのよねぇ…」
「えー!?なんでなんで!?…もしかして怖い?」
「怖かねーよっ!つきあえばいーんだろ!つきあえばっ!」
母さんとあおいがわーい、とか言ってバンザイしてる。
母さんのテンションにフツーについていけるコイツがすげぇ。
「はい?」
「工藤くん、入っていい?」
「どーした?」
メシも食って、ああやっと眠れる、明日からテーマパーク巡りとか、絶対寝とかないとだろ、って時。
ドアを叩いて遠慮がちにあおいが入ってきた。
「お願いがあります」
「あん?」
「…一緒に寝てください」
…はあ!?
は!?
一緒に寝て、って、えっ!?
「広すぎてどうしていいかわかんなくて…」
「いや、フツーにベットで寝りゃいーだろーがっ!」
「だってあんな広い部屋で1人って落ち着かないし…」
な、何言ってんだ、コイツ!
だって一緒に寝るってっ!
は!?
意味わかって言ってんのか!?
…いや、コイツのこの顔はわかってねぇよな。
まぁ別に一緒の部屋で寝たからってどうにかなるわけじゃねぇし…。
「わーった。じゃあそこのソファに」
「工藤くんが寝て私がベット使うね!」
「オメーがっ!!ソファに寝るんだよっ!!」
「女の子ソファに寝かせる気!?」
「嫌なら自分の部屋に帰れっ!!!」
人の部屋に乗り込んできといてなんだその態度はっ!
「このソファ、ベットになるから…って、あれ?」
「…ならないよ?ベットに」
「…っかしーな、去年来た時は…」
なんか引っ掛かってんのか、ベットにならない。
なんだぁ?
使ってねぇから出にくくなったか?
…っよ、っと!
引っ張り出すのに結構力いるな、コレ。
「おい、出来たぞ」
「…」
「おい?…って寝てるしっ!」
あり得ねぇ…。
人の部屋乗り込んで来て、ソファーベッド作ってる間にベットの中央で丸くなって寝やがったっ!
だからベットは俺が使うって言ったじゃねーかよっ!!
ああ、でもすっげぇ気持ち良さそうに寝てやがるし、叩き起こすのもなぁ…。
かと言って俺が運ぶのもお断りだ。
「ったく!しゃーねーなっ!」
腹冷やして風邪引かれても困るし、あおいに布団かけてやって俺も眠ることにした。
「…ん…」
ビクッ、て。
自分でもその声に反応したのがわかった。
…ないないないないないっ!
俺コイツをそういう対象で見たことねーしっ!
だいたいもう寝てぇんだよ、俺はっ!!
そうは思うものの、自分が思ってる以上に俺は健全な思春期の男だったんだって。
明け方ようやく寝ついたことで、我が身の未熟さを思い知った。
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bkm