キミのおこした奇跡side S


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traveltrouble


Los Angeles!


「工藤くんスゴいよっ!空に浮いてるよっ!!」
「…恥ずかしいからオメー少し黙ってろ」


あの翌日からスーツケースだなんだと買い出しにつきあわされて。
あっ!と言う間にロス旅行当日。
なんだけど、この女と機内で一緒はかなり恥ずかしい。


「ほら!雲だよ雲!雲の上にいるっ!!」
「…だから黙れって言ったよな?」
「ごめんにゃひゃい…」


俺はねみーんだよ!
時差もあるし、黙って寝てろ!
ため息つきながらシートを倒すと、また声をかけられた。


「工藤くん、工藤くん」
「あん?」
「…興奮しすぎて眠れません」
「知らねーよっ!」


勘弁してくれよっ!
こんなのがロスに着くまで続くとか冗談じゃねぇ!!
もう何聞かれても俺は返事しねぇ!
寝てやる!
…それからどのくらい経ったのか機内放送がかかり、もうすぐ到着って時。
隣を見たら口半開きで寝てやがった。
今口の中にワサビとか入れたらおもしれぇことになんだろーな…。
いや、しねぇけど。
そんなくっだらねぇこと考えてたら、着陸して機内も騒がしくなった。
のに、まだ寝てやがる、この女…。


「おい!あおいっ!」
「ふぁ?」
「いつまで寝てんだよっ!とっくに着陸してんだろ!!」
「…ええっ!?」


明らかにしまったって顔で窓の外を見ていた。


「なんで起こしてくれなかったの!?工藤くんのバカっ!!」
「…次からは蹴り飛ばして起こしてやるよ」


今起こしてやっただけでもありがたいと思えっ!!


「キョロキョロしてっと置いてくぞ」
「や、やだ!!こんなところで捨てないでっ!!」
「ぐえっ」
「こんなところで捨てられたら私あっという間に身ぐるみ剥がされるっ!!」
「わ、わかった、わかったからっ!服引っ張るなっ!首が絞まるっ!!」


コイツ思いっきり服引っ張りやがったっ!!
これから2週間ずっと首絞められてたまるかっ!


「ったく、ほらよ」
「え?」
「え?じゃねーよ、手出せ!いちいち首絞められたかねーんだよ!ほら、早く!」


は?って顔で俺の手を見てきたあおい。
仕方ねーだろ!
首絞められたくねーんだからっ!


「ほら、行くぞ!」
「あ、ちょ、」


呆然としてるあおいの手を取り歩きだす。
…コイツ背だけじゃなく手も小せぇんだな…。


「いいか?俺が先に行ってオメーのこと説明してやっから、オメーは余計なこと喋んじゃねぇぞ!」


入管で足止めとか、たまったもんじゃねー!


「あのすみません」
「はい?」
「後ろのあの子…ほら、日本人の女の子いるでしょ?」
「ああ、はい」
「僕の妹なんですが、なんていうかちょっと脳に障害を抱えてて…」
「え?」
「英語はおろか、日本語も怪しい知能なんです」
「それは…」
「アイツのことで親も離婚して名字も違うけど、僕の妹なんです。きちんと受け答えできないと思うから心配でっ…!」
「…わかった。妹さんを大切にね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」



これでなんとかなるだろう。
案の定特に何かを聞かれてるわけでもなく、あっさり解放。
しかもアイツ去り際に入管のオッサンに手振ったもんだから、オッサン俺にすげぇ同情の眼差しをくれた。
…まぁ問題なく入れたし良しとするか。


「新ちゃん!あおいちゃん!こっちよ!」


ウェルカムゲートをくぐると母さんがどこの有名人だよって感じのありがちな帽子にサングラス姿で立っていた。


「父さんは?」
「どうしても終わらせておきたい仕事があるからって、こっちに戻ってから部屋に引きこもりっぱなしよ!」


まぁその方が本人のためだしな。
母さんの愛車に乗り込み、ロスの自宅に向かう。
今回は家の敷地内で車の運転の仕方を教えてもらう予定だ。
実は今から楽しみで仕方ない。


「あおいちゃん、行きたいところややりたいことある?」
「はい!私調べてきたんです!どうしても行きたいところが、ええっと、あ、そうそう!グローマンズ・チャイニーズシアターでジョニーデップやブラットピットのサインや足型を見たいのと、あとディズニーやユニバーサルスタジオにも行きたいんですが、工藤くんが3つも4つも遊園地につきあってくれるとは思えないんで、あえてシックスフラッグス・マジック・マウンテンで絶叫したいと思いますっ!」
「…オメーさぁ、」
「な、なに?」
「なんでその予習能力の半分でも勉強に回せねーんだよ…」


普段じゃ絶対にあり得ない予習能力。
こういうところで無駄に使うから、学校じゃダメなんだなコイツ。


「だってほんとに楽しみだったんだもん…」
「あら、いいじゃない!どうせだから行きたいところ全部行きましょう!」
「却下。俺テーマパークなんか行きたくねぇし!」
「あ!でもここに身長制限があるって書いてあるから工藤くん入れないったいな!!」
「新一止めなさい!」
「身長制限で入園できねぇなんてどんな遊園地だっ!!このバカよく見ろよっ!それ料金設定の話だろ!?だいたい俺がダメならオメーも入れるわけねーだろーがっ!!」


ギャーギャーと、いつも以上に騒がしいシルバージャガーがロスの街を駆け抜ける。

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