キミのおこした奇跡side S


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浪花の連続殺人事件


浪花食い倒れツアー


「オジサーン!コナンくーん!お待たせしました!」
「おー、あおい!あいっかわらず小せぇなぁ、お前!」
「…伸びたもん、少し」
「そうかー?でもお前、背丈のわりに胸ばっか成長してどーすんだ!」


ピピー


「セクハラですっ!」
「なんだその笛!?」
「蘭が貸してくれたの!『お父さんがセクハラなことしたらこれ吹いて!』って」
「…アイツ…」


あっという間に服部に言われた大阪旅行当日。
米花駅であおいと待ち合わせ、ってことになったんだが、さっそく駅であおいとオッチャンが漫才始めた…。
この2人が揃ったところ初めて見たけど、そうか、揃うとボケ漫才が始まるのか…。
…てことは俺がツッコミの止める役にならねーとじゃねぇか!!
なんかもう行く前から疲れが出てきた…。
新幹線に乗り込み、オッチャンはすっかりてっちりに頭持ってかれてる。
あおいと俺はというと、途中うとうととして会話が途切れもしたが、良い感じに談笑が出来ていた。
そのあおいが京都辺りでケータイを弄り始めた。


「服部くんもう駅にいてくれるって!」


ケータイ画面を見ながらそう言うあおい。
…てことは何か?
今ケータイ弄ったのはあの色黒とメールやり取りするためか?


「あおい姉ちゃんて、」
「うん?」
「…いつ平次兄ちゃんと番号交換したの?」


俺にだってメアド教えねぇくせに!
なんであんニャロォあおいのメアド知ってんだよ!


「この間蘭が何かあったら困るから番号教えておいてって服部くんに言われたからって、教えてくれて、その後そのアドレスにメールして教えたんだよ」
「…へー、そーなんだー」


じゃあ何か?
俺も蘭に新しいケー番教えとけとでも言えばいいのか?
そしたらオメーは電話に出るのか?
っても、最近蘭やオッチャンの目があって電話自体してねーけど。


「コナンくん、大阪行くの嫌だった?」
「へ!?い、いや、別に嫌じゃないけど、」
「ならよかった!」


そう言って笑うあおい。
あおいと大阪に来たこと自体は嫌なわけじゃない。
でも、あおいがパッと出の大阪色黒男にフツーにメールしたり電話してると思うのが異常に腹がたった。


「ソレ、」
「うん?」
「そのストラップ、自分で買ったの?」
「え?」


イライラした気持ちを抑えながら、あおいをチラッと見たら、ケータイについてる鍵のストラップを握り締めていた。
…いつからあのストラップが俺がやった黒猫ストラップの横についてたのか思い出せねぇけど、気がついたらたまにあおいはあのストラップを握り締めてる時があった。


「人からのもらいもの、だけど?」
「誰からのもらいもの?」


まさかクロバからとか言わねぇよな、オイ。


「な、ななななんでそんなこと聞くの!?」
「………あおい姉ちゃんたまにそのストラップ握り締めてるからなんか意味あんのかなぁって思って」
「え!?わ、私そんなに握り締めてる!?」
「うん。ケッコー握ってる」
「…そっかぁ…」


そのストラップを見つめて、また握りなおしたあおい。
…で、結局誰からのもらいもんなんだ?って聞こうとしたとき、


「くぁー!やーっと大阪か!さー、今日は食い倒れるぞー!!」


オッチャンの馬鹿でかい声に俺の言葉は音になることなく消えていった。


「お!こっちやこっち!!」
「服部くん!…お世話になります」


服部が指定した改札まで行くと、先日も会ったばかりの色黒探偵がにっこにこして立っていた。


「ほな、さっそく大阪観光といこか!」


そう言って服部の後をついていく俺たち。
改めて考えてみると、すっげぇおもしれぇ組み合わせだよな、このメンバー…。


「あれが、天王寺動物園!あれが、大阪ドーム!ほんでここが通天閣や!どや?えーとこやろ?大阪!」


最初はここ!と、通天閣に案内してもらったんだが。
オッチャンがタバコ吸いに行って、あおいが望遠レンズに夢中になってる時に服部を連れ出した。


「で?なんで大阪に呼んだんだよ?」
「だからこの前言うたやろ?俺のおかんが毛利のおっちゃんに挨拶したいんや、て」
「…ほんとにそれだけか?」
「まぁ、強いて言うなら、」
「強いて言うなら?」
「お前とあの姉ちゃんの仲がどんなもんか見てみたい、ちゅーのもあったんやけど」


ニタァと笑う服部。
…俺はそんなことのために呼ばれたのか?


「いっぺんお前らに大阪見せたろ、おもたんや!…人間なんかいつ死んでしまうかわからへんからのぉ」


らしくない感傷に浸る服部は、犯人逮捕直前に刺されて死ぬ夢を見たらしい。
…死ぬのは俺らしいが。
ふざけんじゃねーよ!
ったく、ほんっと、コイツもボケ担当かよ!


「すまんすまん!平次くーん!」
「お、やっと来よった!」
「大阪府警東尻署の坂田です。いやー、えろーおそなってすんません」


刑事?
…まさかコイツ刑事を運転手に使うんじゃねーだろうな。
服部に気をとられていたら、あおいの体がビクッと動いたのが見えて声をかけたら、視線を感じるとか言ってきた。
…視線?


「別に怪しい人いないみたいだけど?」
「気のせい、かな?」


少し首を傾げながらも、通天閣を後にした。
…のはいーんだが、おいおい、パトカーで大阪観光かよ。
どーなってんだよ、大阪府警!
本部長の息子にいいように使われてんじゃねーよ!
なんて思っていたら、隣にいたあおいが小さく唸り声をあげて何かを考えているようだった。


「ど、どうしたの、コナンくん」
「…あおい姉ちゃん、なんかあった?大丈夫?」
「え?…だ、大丈夫だよ!大丈夫!大阪観光、楽しもう?ね?」
「…ならいいけど」


さっきの視線のことと言い、なんか様子がおかしい。
…気がする。
そんなこと考えていたら、今日の運転手坂田さんがうどん屋さんに連れてきてくれた。


「どや?これがほんまもんのうどんや!ダシが透き通ってて底まで見えるやろ?」


へぇ!薄味だけど美味ぇじゃねーか!


「おお、平次!どうしたんやその子!新しいコレか?」


んなわけあっかよ!


「ち、ちちちち違いますっ!全然違いますっ!!私は東京から来た、っ!?」
「ん?どうした?」
「…なんでもないです」


またあおいが首を竦めるようなしぐさをした。
…視線、ねぇ。
やっぱり誰も怪しい奴なんていねぇよな…。


「うんめー!うめーじゃねぇか、このたこ焼き!!」
「こんなおっきいたこ入ってるの初めてだね!」


マジで美味ぇ!!
この出来立てってのも美味さを引き立てるんだよな!
オッチャンと2人でパクパクたこ焼きを口に放り込んだ。


「お好み焼きー?なんでたこ焼きの前に言えへんのや!」


大阪って言ったらやっぱ食い倒れだよなー!
うどんにたこ焼きにお好み焼き!
あ、でも夜のてっちりの分のスペースも残しとかねぇとだし、…後で軽く体動かしとくか。


「僕の知ってる近い店、案内しましょか?」


坂田さんの案内でお好み焼き屋に連れてきてもらった。
場所も近くてこの時間ならてっちりまでには腹が減るだろう。


「ほんなら俺、おかんに連絡してくるよって。オッチャン!メシも忘れんといてや?」
「メ、メシと一緒にお好み焼き食べんのか?」
「フツーやんけ!お好み焼きはおかずやで?メシにタレがついてそれがまた美味いんや!」
「おもしろいね、大阪って!」


炭水化物に炭水化物って!
そんな食生活しててアイツよく太んねぇな。


カタン


「あ、あの!そこは友だ」
「あんたやろ?工藤って」
「えっ、」


さっきまで服部がいた席に座ったポニーテールの少女。
「工藤」の名前を出したその子は冷たく鋭い目でこっちを見ていた。

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