キミのおこした奇跡side S


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噂の2人、携帯購入


モーセの誓い


「携帯購入の保護者欄にサイン?」
「そー。ほら、ちょっと話したじゃねーか。転校生の、」
「おお、なんと言ったかな?ええっと、」
「芳賀。芳賀あおい。…アイツ保護者がいなくて携帯買えねぇんだ…。だから頼めねぇかな?」


学校行って、人がいないところで博士に電話した。
簡単に事情を説明したら、快く引き受けてくれた。
博士もなんだかんだで世話焼きだ。
引き受けてくれると思ったんだけどな。


「芳賀いるかー?」


昼休み、芳賀のクラスに行く。
いつも思う。
なんで他のクラスに行くたびにこうやって遠巻きにジロジロ見られなきゃなんねーんだ。


「ちょっと来て!!」
「あ、おい、ちょ、」


なんかよくわかんねぇけど、軽く怒り気味の芳賀に手を引っ張られ教室から廊下に連れて行かれた。
どこに行くのかと思えば1年の教室の端にある階段の踊り場。
つーかコイツ手掴むのはいーけどどさくさにまぎれて爪立てて掴みやがった!
いてぇじゃねぇかっ!
猫じゃねーんだから爪しまえよっ!!


「いってぇなぁ、なんだよ」
「学校で私に話しかけないでっ!」
「…奇遇だな、俺もそれには賛成だ」


学校で女と話してるとロクなことがねぇ。
すーぐ、工藤くん○○さんと仲良いの!?どういう関係!?とかな。
俺の勝手だろって話だ。


「で!?」
「あ?」
「用件!なんか用があって来たんでしょ!?」
「ああ、オメー放課後空けとけ」
「…はあ?私今日から部活が」
「断れ。こっちの用事が緊急」
「断れー!?入部初日にそんなことできるわけ」
「ケータイ!買いに行くから空けとけよ?」
「…え?」
「俺んちの隣に住んでる阿笠っておっさんに頼んだら快く引き受けてくれたから。でも明日以降はちょっと家空けるらしーから今日買いに行くぞ」


黒目がちのでっけぇ目を何度か瞬きさせて驚いていた。


「じゃ、そういうことだから放課後空けとけ。俺もついてってやっから」


そう言って教室に戻ろうとした。
ら、どっから沸いたんだか人だかりが出来ていた。


「2人でケータイ買いに行くんだって!!」
「やっぱり工藤くんと芳賀さんつきあってんだよっ!!」
「なんだ、工藤女に興味ねーみたいなこと言ってたくせに!」
「コイツはそういうヤツだよなー」


だから嫌なんだよっ!!
女とちょっと話すだけですぐにコレだ!
やってられっかっ!!


「うるせーーー!!!どけ!邪魔だっ!!!」


さっと、人だかりが割れ道が出来る。
くだらねぇことで騒いでんじゃねーよ!


「でもさー、実際好きでもねぇ子のケータイ一緒に買いに行くかフツー」
「行くんじゃねーか?俺がそうだし」
「だからお前がおかしいって言ってんだって!俺達の話聞いてんのかよ工藤!」
「絶対下心があるっ!」
「ねーよ、バーロォ」


教室に戻ったらついさっきのことのはずなのに、みんな知ってて。
正直うんざりだ。
うるせぇから教室から出ると、蘭と園子、それから移動教室なのか何かを抱えてる芳賀がいた。


「大丈夫、私工藤くんとなんでもないから!蘭、安心して!」


…何言ってんだ、コイツ。
当たり前なことをなんで蘭に力説してんだよ。


「私好きな人いるし!」


…。


「あおいの好きな人って新一じゃないの!?」
「全然違うよ!その人は工藤くんよりもカッコよくて、工藤くんよりも紳士で、工藤くんよりも」
「工藤くん工藤くんウルセェんだよっ!!」


何が工藤くんよりもカッコよくて紳士だっ!
きっとロクでもねぇヤツに違いねぇ!
男は背が高けりゃいいってもんじゃねー!!
中身だ、中身っ!!


「安心しろ、俺もオメーなんか好きじゃねーよっ!!」
「ちょっと新一!」
「それは良かった、ほんとに」
「あおい…」


それまではベラベラ喋ってたのに、急に芳賀が大人しくなった。


「ほら新一謝って!!」
「あ?なんで俺が」
「工藤くんが心にもないこと言ったからあおいが落ち込んじゃったじゃない!!」
「え?私?…別に落ち込んでないよ?」
「ダメ!新一、ちゃんとあおいに謝って!新一が仲良くなった女の子なんてほんとに珍しいんだから、大事にしなきゃ!」
「いや俺は」
「謝んな、工藤くん!」
「謝って新一!!」
「…わ、悪ぃ…?」
「あ、うん、こちらこそ?」


俺今謝る必要あったか?
は?コイツ別に俺の言動に対して落ち込んじゃいねーだろ?
なんで謝らされたんだ?


「つーかオメーさ、」
「うん?」
「俺に学校で話しかけんなよ?ウルセェことになっから」


すっげぇバカを見るような目で見られてる気がする。
コイツにだけはされたくない目だ。


「オメーと話すとうだうだ周りがウルセェ」
「その言葉をそっくりそのまま工藤くんにお返ししていいでしょうか?」
「は?なんで俺に言うんだよ。オメーが俺に話しかけなきゃ済む話だろ?」
「…じゃあ金輪際私に話しかけないでいただけますか?」
「オメーが喧しく工藤くん工藤くん連呼しなきゃ話かけねーよ」


俺の名前をあんだけ喧しく連呼してたらフツー声かけるだろーが!
ほんっと、バカだなコイツ。


「まぁ、そう言うことだから気をつけろ。それと、放課後教室まで行ってやっから忘れんじゃねーぞ」
「ああ、うん、わかった。待ってる」
「オメーらも早く教室戻んねぇと先生来るぞ」


教室に入る直前でチラッと見たら、蘭と園子がなんかヒソヒソ話してるのが見えた。
断言していい。
絶対ロクでもないことだ。
園子が絡むと噂も広がる速度が変わる。
アイツの前ではほんとに芳賀に近づかないようにしよう。

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bkm

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