Clover


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2度目のバースデー


広がる噂と好奇の目


「あーちゃんごめん、」
「うん?」
「私キャンプ行かない」
「……えっ!?」


快斗をひっ叩いて家を飛び出した翌日の5月2日の朝。
目、は、ずっと冷やしてたから腫れてない。
でも「何かあった」なんて一目瞭然な顔をして登校した。
そして何か聞かれる前に、青子にキャンプの不参加を告げた。


「い、行かない?行かないってなんで?」
「なんでも何も行かないものは行かない」
「…快斗と何かあったの?」


それ以外理由がないじゃない。
だからって、あなたの幼馴染みに玄関先でレイプの如く無理矢理ヤられたのよ!
なんて、言えるわけなかった。


「…とにかく行かないから」
「ち、ちょ、早希子ちゃん!」
「工藤さんおはよう」


名前を呼ばれてそっちを向いて、向いたことを軽く後悔した。


「昨日大丈夫だった?」


出た、元凶。


「加瀬くんおはよう。昨日って?早希子ちゃん何かあったの?」
「うん。俺とキスしてたところを黒羽に見つかって無理矢理連れて行かれちゃったから心配してたんだ」
「…え?キス!?」


隣にいた青子だけじゃなく、わりと大きい声で言ったものだから、クラスの半分くらいがこっちを見たのがわかった。
これはもう、噂が広がるのは時間の問題だ。


「黒羽に酷いことされなかった?」
「…仮に、」
「え?」
「仮に快斗と何かあったとしても、今後あなたとだけは絶対に何も起こらないからそんな心配してもらわなくて結構よ」


口達者な探偵や、口の悪い科学者と長いこと一緒にいたせいか、私もそれなりに口が立つようになったようだ。


「ね、ねぇ工藤さん。さっき噂で、」
「快斗の前で他の人とキスしてたってヤツ?半分ほんとで半分嘘」
「ちょ、早希子ちゃん、あんまりそういうこと言わない方が」
「朝のアレでどうせみんな知っちゃったんだし、今さらでしょ?」
「早希子ちゃん…」


自分でもイライラしてるのがわかる。
キス「した」んじゃなく「された」のに。
でも快斗がその現場を目撃したのは事実。
こういう噂はおもしろおかしく広がる一方だ。
イライライライラ。
時間の経過と共に噂も広がり、好奇の目が向けられているのがわかる。


「あーちゃん、ごめん。私帰る」
「え!?あ…うん…、わか、った…」


これ以上イライラして関係のない青子にまで当たりたくないし。
まだ今日の授業も半分残ってるけど、適当に理由をつけて帰ることにした。


「黒羽くんカワイソー」


そして玄関に向かう途中の廊下で、さらにイライラの元となるような出来事に遭遇。
快斗は男女問わず人気がある。
…中には本気で狙ってる人もいるだろう。
そういう人間は、ここぞとばかりにつついてくる。
それはどこにいっても起こり得る現象だ。


「さっさと別れればいいのに」


イライライライラ。
わざと私に聞こえるように言う耳障りな声。
声の主の方に目を向ける。


「…こっわーい!睨まれちゃった!」


くすくす笑う女の声がまたイライラを誘う。


「1つ、良い事教えてあげる」


このイライラを、青子にぶつけなかっただけ、良しとしよう。


「快斗、凄くメンクイだから自分磨きもできないあなたたち程度の人間がどんなに騒いでも絶対に見向きもしないわよ?」
「っ調子に乗ってんじゃ」
「ついでに!…口の悪い下品な女も大嫌いだから仮に私たちが別れても絶対にあなたたちのところにだけはいかないから。残念だったわね」


顔を青くしてる子、赤くしてる子、それぞれだけど。
私の脳裏に浮かんだのは、口の端を持ち上げながらコーヒーを飲むあの子の顔。
…私は去年1年間で随分と哀ちゃんに鍛え上げられたようだ。
今度また会いに行こう。
そんことを思ったら、少しだけイライラが減った気がした。

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