Clover


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最後の夏


2人からの提案


「だからね、男の人だから仕方ないとは思うの。思うんだけど、どうも納得できなかったと言うか…」


快斗が宮本くんにトップレスの金髪お姉ちゃんズの写メを送ってきてから数日後。
現在米花町の阿笠邸地下室で、哀ちゃんと密談中。
受験勉強はどうしたかって言われそうだけど。
してますよ、勉強。
私より遥かに頭のいい小学2年生に教えてもらってます。
今はその勉強の休憩中。


「別にいいじゃない。ノーマル、ってことだけははっきりしてるんだから」
「そういう問題じゃないでしょう」


哀ちゃんは、相変わらず平和ね、と言いながらコーヒーをブラックで飲んでいる。


「じゃあどうしたいの?」
「どうしたい、っていうか…。とりあえずさっきも話した通り、友達の彼氏で快斗の親友の部屋のベットで撮った写メは送ったんだけどね。その後どうしようかなぁ、って」


眠気覚ましも兼ねて私も最近はコーヒーを頻繁に口にする。
最も哀ちゃんのような濃いブラックは無理だけど。


「…いい方法があるわよ」
「え?」
「つまり『2度と女の裸に興味がなくなる』ようにすればいい話でしょ」
「…興味なくなる、ってそんな簡単にいけば浮気する人間世界から消えるどころか、少子化が加速して大変でしょ」
「あら。用は方法次第、でしょう?あなた以外の女の裸に興味を持ったらどうなるか、教えてあげればいいのよ」
「教えてあげるって?」


ニヤリ、と口角を上げて笑う哀ちゃんに、嫌な予感がしなかったか、と言ったら嘘になる。
でも…、


「それ本当にやるの?」
「あら?やらないの?」


まさか快斗のお母さん、千影さんを巻き込むなんて…。
哀ちゃんの意見は「いつも同じ手−新一にぎったんぎったんにさせる−だから彼は慣れてしまいバカなこと繰り返す」らしく。


「あなたの話だと、母親に頭が上がらないみたいじゃない、彼」
「まぁ…、そうだけどね」


幸い良くしてもらってるんでしょ、彼の母親に、と哀ちゃんは言う。
他の女に興味を持つ=千影さんからの説教が待ってる、と…。


「考えとくわ…」


まぁ…。
私が泣いて喚いてどうこうするよりは、効くかもしれない。
そんな風に何か良い手はないか、考えていた時。


「はぁい!早希子ちゃん!元気?」
「千影さん!」


快斗のお母さんがスイスから帰国した。
一応、この人の口利きで願書出してるようなところもあるから、わりと連絡を密にしてる。
でもまさか今日帰ってくるとは知らなかったなぁ…。


「快斗今いないからって、他の男に目移りしたらおばさん泣いちゃうぞ!」


なんて言いながらコブシを見せてくる千影さんに、むしろ泣かされるのは私なんじゃないかって思う。
さすが「女王様」だわ…。


「快斗あっちで元気にしてるかしら?」
「あー…、元気みたいですよ。主に下半身が」
「…………え゛っ!?」


私の発言に千影さんの声が裏返った。


「な、なに下半身が元気って!?あの子まさか浮気でもしてるのっ!?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけどね」


この時は私が殴られるくらいなら、むしろ快斗を殴ってもらおうかな、くらいの軽い気持ちで話した。


「…でもまぁ、男の人にとっては普通のことかもしれないなぁ、って思ってはいるんですけど、」
「ダメよ!」


千影さんは、頭を抱えながら息子の行為を嘆いた。


「いい?早希子ちゃん。男が浮気するのはある種仕方のないことかもしれない」
「はい」
「でもそれを未然に防ぐのは女の仕事でしょ!」
「…はぁ」
「そういう小さい芽を放っておくと後々大きな問題に発展しかねないのよ!」
「…」
「いいわ、私がどうするか考えるから。…全く、あの子こういう面は真面目だと思ってたのに!」


…どこら辺が?
あなたの息子、中学の時女子のスカート捲り放題って話でしたよ。
そして現在はコスプレ命で真面目というより変態街道まっしぐらです。
けど何かに火がついたらしい千影さんが、快斗のお仕置きを考えてくれるようだったからお任せすることにした。


「ゲイバー、です、か…」
「そうよ、いっそのこと掘ってもらうくらいの身の危険を味あわせなきゃ!」


千影さんの案は、自分の知り合いが経営してるゲイバーのお姉さんたちのところに連れて行って、世間の荒波を叩き込んでしまえ作戦だった。
…ゲイバー、ねぇ。


「それで上手くいきます?」
「いくわよ。なんたってあの子は誰が見てもストレート!1度ほんとに掘られるくらいの身の危険を感じればいいんだわ!」
「…でもそれじゃあ快斗が可哀想じゃ、」
「だーから!早希子ちゃんがそんなに甘いからダメなのよ!いい?こういうのは最初が肝心なの!あの子がもう2度と他の女で勃たなくなるように徹底的にするのよ!」


すごくありがたいことなんだけど、私どうしてこんなにこの人に気に入られちゃったんだろう…。
万が一私と快斗が別れた場合、他の女で勃たなくなったら大変なんじゃないかなって思う。
…まぁ、別れる気はないですけど。
そして千影さんプロデュースの元、快斗へのお仕置きが執行される日が来た。


from:お母さん
sub :快斗くん
本文:予定通り今空港に向かったわよーvあんまり怒らないであげてね。こっちで頑張ってたんだから!


快斗のスケジュール把握のため、お母さんとも連絡を取ることにした。
あまり詳しくは知らないけど、かなり頑張ってお母さんの知り合い(つまり著名人たち)に連日売り込んでいたようだ。
たまにお母さんから快斗に内緒で送られてくる写メでもその奮闘ぶりが伺えた。
自分の夢のため。
だから必死なのかもしれない。
でもまた少しだけ、快斗を遠く感じたような、複雑な気持ち。


ピリリリリ


from:あーちゃん
sub :快斗
本文:早希子ちゃんの予想通り、和樹くんちに帰ってきました。かなり傷だらけで青子が駆けつけた時は、大乱闘だったよ拝|゚Д゚|p ちなみに今は口げんか中(ノ_-;)ハア… 早希子ちゃん、今おばさんと一緒に快斗の家にいるんでしょ?快斗に荷物置きに帰るように言うね。


「時間的に青子ちゃんからのメールかな?」
「当たりです。宮本くんちで大乱闘したみたいですよ?……あ、もしもしあーちゃん?メールありがと。うん、家に帰るようにそれとなく言ってくれる?…ははっ、大丈夫だよ。快斗と変わってもらえるかな?」


そしてこの後快斗と話、予想通り私に会いに来ることなく、久しぶりの自宅に戻ってきた快斗を引きつれ、女王様提案のお仕置きが繰り出された。

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