Clover


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最後の夏


新パターン


「だいたいオメーらがいちゃつくとこなんか見たくねーんだよっ!!気づけよっ!!」
「ここは俺の家だっ!!俺の家で俺が青子ちゃんとどう過ごそうが勝手だろ!?」
「俺がいねぇ時にしろよっ!!」
「お前が勝手に来てんだろ!?」
「快斗、早希子ちゃんから電話だよ」
「……えっ!?」


青子から渡された携帯。
もう嫌な予感しかしねぇ…。


「も、もしもし?」
「随分と楽しい時間を過ごしたみたいね?快斗」


怒ってる…!
この音程は確実に怒ってる声だっ…!!


「い、いや、俺は、」
「てゆうか、」
「うん?」
「帰国したことすら知らされてないって、どういうことかな?」


間違いない。
今この携帯からメデューサのビームが電波に乗って流れてきてる!


「い、いやそれはなんていうか俺は一刻でも早く日本に帰ろうと」
「したわりには私のところに真っ先に逢いに来てはくれないのね?」
「ち、違うんだ!だいたいオメーがあんな写メ送ってくるからっ」
「そう…」
「え?」
「私が悪いわけ」
「え!?い、いやだからそう言ってるわけでもな」
「わかったわ」
「え?」
「次からはヌードビーチで男の人と戯れてる写メ送るようにするから。じゃあね」
「あ!おいっ!!」


ツー ツー ツー


俺は今死んだのかもしれない…。


「今日泊まっていいか?」
「今すぐ帰れ」


なんだよ、オメーだってニヤけたんだろ金髪美人のトップレスにっ!!
共犯じゃねぇか!!
なのにっ…!
なのに俺だけメデューサの餌食に…!!!


「快斗とりあえず荷物家に置きに行けば?」
「…ソースル」


空港から直で宮の家に来たものだから、スーツケースを宮ん家の庭に隠して忍び込んでたんだけど、一旦これ置きに家に帰ることにした…。
あぁ、でもなぁ、なんか一気に疲れが出たって言うか、どうせ説教が待ってんなら明日でもいいかな会いにいくの…。
いや決して会いたくないわけじゃないどころか現地で仕入れてきた女性用ネイビーコスを着てもらいたいなんて思ってるわけだし俺的には早く和解して早希子ちゃんとラブラブにゃんにゃんしたいなぁ、なんて思う主に下半身が元気な高校男児なわけで。


「ただいまー…」


誰がいるわけでもない家の扉を開け、誰が答えるわけでもない言葉を言う。
あぁ、やっぱり今日中に行った方がいいのか…?


「お帰り、快斗」
「お、おまっ、なんでっ!?」


はぁ、とため息吐きながら久しぶりの我が家に帰ってきたら、会いに行こうかどうしようか迷っていた女が立っていた。


「あら?快斗帰ってきたの?」
「おふくろ!?」


しかも早希子の後ろからおふくろまで出てくるし…!


「えぇ。昨夜あっちを出たみたいですよ?」
「へー、そうなの?で、お土産は?」
「たくさんあると思いますよ。ずいぶん楽しんでたみたいだし」


…新しいパターンだ!
俺てっきり工藤新一に攻撃させるんだとばっかり思ってたのに…!!
まさかおふくろ味方につけるなんてっ…!


「そうだ、快斗あんたも行く?」
「へ?ど、どこに?」
「早希子ちゃんをこれからBarに連れて行こうかと思ってるんだけど」
「はっ!?バーってあのバーのことか!?」
「受験の息抜きにご飯誘われたんだけど、どうせなら行ったことのない場所がいいなぁって言ったらBarに連れてってくれるって」
「ふざけんなっ!!俺たちまだ未成年っ!!」
「あっそ。じゃああんた留守番ね」
「お荷物お持ちします!!」


…くっそ!!
あの酒乱な早希子をBarなんかで野放しにした日には翌朝どこにお持ち帰りされてるかわかんねぇじゃねぇかっ!!


「快斗」
「え?」
「ごめんね、疲れてるのに…」
「…早希子ちゃんっ!!」


本当に申し訳なさそうに言う早希子に思わず抱きついた。


「…ごめんな、連絡しなくて」
「いいのいいの!…快斗頑張ってたんだもんね。私こそごめん」


なんだ、早希子怒ってねぇじゃねぇか!
そりゃそうか!
こんっな傷だらけな俺見たら、そりゃー早希子も心痛めるよな!
あぁ、久しぶりな早希子ちゃん相変わらずフローラル!!
もういっそここで


「いってーーーっ!!!」
「来る気ないなら早希子ちゃんから離れてくれない?」


さっき宮と殴りあってボロボロだけど、今の俺はおふくろの平手くらいなんともねぇっ!!
じゃあ今日はBarで一杯飲んで、そのまま早希子ちゃんちに雪崩こんでお代官様おやめくださいなんて言われても嫌よ嫌よも好きのうちじゃなんて禁欲生活1ヶ月とちょっとな18歳青春真っ盛り!!
もう今日はどんな攻め方しようかなんて頭の中そればっか考えながらBarに向かった。
…のが、間違いだった。


「へー、じゃあロスに行ってたの?」
「あ、あの!もう少し離れてください!」
「やだ照れてるぅ!可愛いぃ!!」
「さっすが千影さんご自慢の息子くん!!」
「すみませんっ、僕ほんとにそんな趣味はっ!!」
「あら?でも千影さんにもあの綺麗な彼女にも『好きにして』って言われてるのよぉ」
「ええっ!?おい!!早希子助けろよっ!!」
「モッテモテで嬉しいでしょ?」
「おまっ!!男にモテても嬉かねぇだろーがっ!!!」
「失礼しちゃーう!もう工事済みなんだから女よアタシ!」
「触らせんじゃねーよっ!!!!」


バーはバーでもゲイバーに連れてきやがったっ!!!
この大男、股間触らせやがったっ!!
確かに無かったけどっ!!
そういう問題じゃねぇっ!!!


「なんの嫌がらせだっ!!」
「ヌードビーチで男の人と戯れる写メ送った方が良かった?」
「……………ココでいいです」
「だそうですよ、お姉さん」
「はい、じゃあ快斗くんこっちねー!」


この女ぜんっぜん申し訳なくなんか思ってねぇじゃねぇかっ!!!
おふくろと2人カウンターでカクテルを傾ける早希子。


「快斗くんも大変ねぇ?」
「あ?」
「女の嫉妬」


嫉妬?
嫉妬っていうかこれは…。


「あの子昼間千影さんとここに来て、『夜、若くて粋の良い男連れてくるから、2度と女の裸に興味沸かなくなるくらいにしてください』って言ってきたのよ」
「…え?昼間?」
「理由はよくわかんないけど、快斗くんが観念したらこう言えって言われてる」
「あ?」
「まず千影さんからは『あんたの負けよ』それからあの綺麗な彼女。あの子からは『今度ふざけた真似したらほんとに掘ってもらうから』だそうよ。女って嫌よねぇ!でもアタシはむしろ掘られたい方だから!」


なんて言って酒を薦める女、いや男、いやいや工事済みだから女?
もうこの際どっちでもいい。
つまりアレか?
俺の行動は最初っから読まれてて、俺が今日帰国することも、いや、それは有希子さんが言ったんだろうが、宮んち行くだろうことも、その後早希子に会いに行かずとりあえず自宅に戻ることも、全っ部読まれてたってわけか?
チラッと早希子を見ると、


「…」


カクテルを持ち上げ「乾杯」と口パクしていた。
知ってたけど。
わかっちゃいたけど、改めて実感したこと。
アイツの怒りを買うようなことを率先してやっちゃいけない。


「じゃあ快斗くん、かんぱーい!」
「触るんじゃねぇっ!!」


俺はこの日、今までとは違う意味での身の危険を感じてボロボロになった。

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bkm

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