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負けず嫌いのスポーツ大会


負けず嫌いの本気


−最近ほら、黒羽くんと工藤さん帰りバラバラだったでしょ?その時にコクって放課後の教室で抱きあってたって話だよ?−


ただの「ファン」にしては随分と執着されていると思った。
確かに顔面にボールぶつけたくなるくらいのことを言い返しはしたけど、それにしたってその時のことだけでああも集中攻撃されるのはおかしいんじゃないかって思った。
まさか本当に本気で快斗を狙っていたなんて思いもしなかった…!


−で、でも私が見たわけじゃないし!それに黒羽くんフッたって話しだから−
−近藤さん−
−う、うん?−
−火のないところに煙は立たないって知ってる?−
−…−


それも「狙う」だけじゃなく行動に移していたなんて!
疑惑ははっきりさせてた方がいい。
そう思いその日のうちに快斗を呼び出し真相を聞きだした。


−で、コクられたわけね?−
−で、でも俺ちゃんとフッたし!−
−でも抱き合ってた、と−
−だからそれは抱き合ったんじゃなく抱きつかれただってっ!−
−2人きりの教室で抱きつかれて、新一の電話がなかったら何してたの?−


その後は「僕だって男だから頭では早希子だけって拒否っても、体は反応するんです」と泣きながら開き直っていた。
…快斗がモテないって思ってたわけじゃない。
むしろモテる部類に入ると思う。
でもどこか安心してた自分がいたのは事実なわけで。
私という存在を知っていながら、快斗にこうも「女」を出して近づいてくる人はいないだろうって。
そうやって油断していたのは事実。


「快斗、いる?」
「黒羽?えーっと、あ!いたいた、黒羽ー!工藤さん!」


快斗にぶち切れたい気持ちがないかって言ったら嘘になる(いやもうブチ切れたけど)
あんた何他の女に抱きつかれてんのよ!って新一からキック力増強シューズでも借りて蹴り飛ばしたい。
でもそれだけじゃ何も解決しない。
元の芽を摘まなければ。
「だから」あの時、快斗もそう行動したんだと思う。


「どしたー?」


快斗はいつでもクラスの中心にいる。
今日も、教室の中央の机の上に座りながら友達に囲まれ談笑していた。


「寂しくなったから来ちゃった」
「………え!?」


快斗の声が裏返ったのがわかった。


「ど、どうした?」
「だって最近ずっと帰りが別々じゃない?だから、」
「だ、だからってオメー何があった!?」


昨日の今日だし。
快斗がうろたえるのはわからなくもない。
…わからなくもないけど、その言い方ちょっと傷つくんだけど。


「別に何もないけど?」
「何もないってオメー」
「何もないけど寂しくなったから、」
「え?ち、ちょ、」


そう言えば最近快斗ほんとに忙しそうにしてたから、こういうのも久しぶりな気がする…。
ちなみに昨日は女王様になりきって「ご褒美は私の笑顔よ、喜びなさい」と一切触らせなかったんだけどね。
だからほんとに久しぶり。
私の、私たちの行動に、ザワッと教室中がざわついたのがわかった。


「これからは一緒に帰れない日はバイバイのちゅうしに来ようかと思って!」


両腕を快斗の両肩に乗せて快斗に微笑みかける。
快斗はすっごい何かを言いたそうに、クチビルがぴくぴく動いていたけど、それが音になることはなかった。
チラッと快斗の肩越しに見える窓際の一角に目を移す。
目を見開いてこっちを見ている彼女が見えた。


「快斗」
「な、なに?」
「そろそろ充電してくれないと、浮気しちゃうぞ」
「……ならいっそ今こぐあっ!!」
「そういうことは2人きりの時にしようね?」
「………ハイ」


飛び掛ってきた快斗のみぞおちにぐぅでパンチを入れる。
でもそのまま抱きついてきた快斗にされるがままにしていたら、いつの間にか私を嫌いなあの子は教室から消えていた。
自分でも性格が悪いって自覚はしてる。
でも2度と快斗に体を張って、張らなくても、迫らないように、快斗は私の恋人!ってこと、再認識させる必要がある。
そんなことしても無駄!って思い知らせる必要がある。
…だから快斗も「あの時」わざわざうちのクラスにきて、おはようのちゅうしていったんだと思うし。
抱き締めてくる快斗の温もりを感じながら、売られた喧嘩に見事勝利したような、そんな気分で間もなく夏休みです!

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