Clover


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負けず嫌いのスポーツ大会


凍てつく焼肉パーティ


「みんなグラスいったかー?」
「こっちまだでーす!あと3つ、あ!ありがと!先生準備できましたー!」
「よし!えー…それでは、ソフトボール以外は惜しくも優勝を逃したものの、総合2位に輝いたお前たちの頑張りに今日は先生のおごりで2時間焼肉食べ放題!よく頑張った!かんぱい!!」
「「「「かんぱーい!!」」」」


スポーツ大会も無事終了。
うちのクラスがどうなったかって言うと、青子率いるソフトボールは2−1の接戦を制し優勝!
…けどあとの球技は残念なことによくて2位という成績だった。


「あ、あーちゃんお肉焼けたよ」
「青子ねー、ハラミが、」


早希子ちゃんがその後どうなったかって言うと…、


「…工藤さん、やっぱりちょっと腫れたね」
「うん?」
「ここ」


早希子ちゃんの向かいに座っていたクラスメートがとんとん、と自分の口の端を指差した。


「ああ…。まぁ、スポーツやってる上では仕方ないよね」


そう言って苦笑いの早希子ちゃん。
でも乾杯の時に配られたウーロン茶を飲んでいる時一瞬顔を歪めたから、やっぱり滲みてるんだと思う。
早希子ちゃんが燃える第3セットは25対13で青子のクラスの圧勝。
でもまだどこか不完全燃焼だった早希子ちゃんは次の準決勝でも相手チームを圧勝。
…その疲れが出たのか決勝では見事ボロ負け。
でもすっきりしたからいいんだって。
その一言に本人よりも、みんながホッとしたのは言うまでもない。


「ちょっとトイレ行ってくるね」


そう言って早希子ちゃんが席を離れた直後、


「でも工藤さんがあんな燃え上がるとは思わなかったわ…」


当然のネタ振りになった。


「て、いうか、」
「うん?」
「工藤さん美人だから無駄に迫力あって怖かったんだけど…」
「みんなはいいよ!私なんて!私なんてあの迫力でもっとしっかりあげろって何回言われたことか…!!」
「近藤ちゃん、今日は先生がおごるって言うから飲んで飲んで」


って言いながら傾けるのは担任同伴なんでもちろんソフトドリンクなんだけど。
今日の1番の被害者はセッター役をやらされてた近藤ちゃんだろうな…。


「でもさー、」
「うん?」
「なんて言うか…、女の嫉妬て怖いって痛感した」
「…」
「あれは工藤さんじゃなくても怒るし、むしろみんなの前でああやってやり返した工藤さんはすごいと思うけどね」


早希子ちゃんは試合に勝っても気が治まらなかったようだけど、あの試合を客観的に見ていた青子からしてみたらどこらへんが?って思う。
だって早希子ちゃん、相手にやられたことそっくりそのままお返しして、早希子ちゃんの顔面にボールぶつけた相手の顔面にボールをぶつけて鼻血を噴かせたんだもん。
そして試合後出血させた相手のところに行って謝るのかと思ったら「凹凸が無さ過ぎて顔だなんて気づかなかったわ、ごめんなさい。鼻血が出るってことはそこが顔なのよね、次から気をつけるから」って、公衆の面前でこれ以上ないくらい可愛い笑顔で言い放ってコートから去って行った。
その場にいた誰もが一瞬で石にされたのは言うまでも無い。
快斗が壁際でひっそり泣いていた。


「でもあの噂、ほんとだったんじゃない?」
「あの噂、って?」
「3Eのあの子、黒羽くんにコクったって噂」
「え!?何それ!?」
「あれ?青子知らない?」
「知らない、知らない!!快斗コクられたの!?」
「って、話聞いたよー?」
「いつ!?いつの話!?」
「えーっと、確か1度目が去年の、」
「1度目!?1度目って2度目もあるの!?」
「青子ほんとに知らないんだね…」
「なに、みんな知ってるの!?」
「知ってる、っていうか、わりと有名?」
「なんで!?」
「なんで、って、あの子けっこー体張って黒羽くん狙ってるって話だったし。最近ほら、黒羽くんと工藤さん帰りバラバラだったでしょ?その時にコクって放課後の教室で抱きあってたって話だよ?」
「ずいぶん楽しそうな話してるのね?」


ぱちぱちぱち


美味しそうな音を立てながらお肉が焼きあがっていく。
…テーブルとは対照的に周囲が凍りついた気がしたから不思議だ。
ううん、「気がした」じゃなくて「凍りついた」んだと思う…。


「もちろん詳しく聞かせてくれるんだよね?近藤さん」
「えっ!!?」


やっぱり今日1番の被害者は近藤ちゃんだって思った瞬間だった。
そしてこの後しばらく、お肉の焼きあがる音と近藤ちゃんのすすり泣く声以外何も聞こえない空間が青子たちのテーブルを包んだ。
うん…。
快斗の言うとおり、早希子ちゃんは本当にメデューサになれるのかもしれない…。
そしてそのメデューサの次の獲物は間違いなく快斗だろう、って。
ご愁傷様、って、他人事のように思っていた。

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bkm

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