Clover


≫Clap ≫Top

負けず嫌いのスポーツ大会


着火


「俺は最後の最後まで早希子と敵になるくらいならコートに穴開けるって言ったんだぜ!?」
「で、もちろん聞き入れてもらえなかった、と」
「くすん…」


明日はいよいよスポーツ大会、って時。
バレーボールに出ることを今だゴネてる快斗。
でも人数の関係で華麗に却下され、3年目にして初めて快斗と敵対することになった。
…まぁたかがスポーツ大会で、だけど。


「うちのクラスの応援をしろなんて言わねぇ!俺の応援をしてくれっ!!」
「え、無理」
「無理!?無理って何!?」
「私本当にあーちゃんやクラスの子たちと焼肉行きたいから無理」
「焼肉がなんだ!?そんなに肉が食いてぇなら俺が焼いてやるっ!!!」


そういうことじゃないだろう、黒羽快斗…。


「快斗も最後のスポーツ大会だし、クラスのために頑張ったら?」
「俺は毎年頑張ってただろ!?」
「…ああ、うん。去年も一昨年も購買パンの半額券ありがとう」
「だろ!?じゃあ今年くらい頑張らなくても!」
「そういう人が多いから、うちのクラスわざわざ担任が自腹切ってくれるんだよ?快斗は進学しないんだし、学生生活もあと少しでしょ?ちゃんと1つ1つイベント楽しんでさぁ」
「早希子はいいのか?」
「え?」
「俺と敵になってもオメーはいいのかって聞いてんの!」


…たかがスポーツ大会でしょ?


「あーちゃんと焼肉行くためなら仕方ないよね…」
「俺より青子が大事なのかっ!?」
「いや、あーちゃんが大事ってより、クラス行事が大事?」
「…オメーがその気なら俺だって!今の言葉絶対後悔させてやるからなっ!!」


そう言って走って帰って行った快斗。
…ええっと、今日は久しぶりに都合が合うから一緒に夕ご飯食べるんじゃなかったっけ?
まぁ…、いいか。


「あれ?早希子ちゃん快斗と帰るんじゃなかったの?」
「の、予定だったんだけど中止になったみたい?」


快斗って新一と同じくらい負けず嫌いだからなぁ…。
1度「敵」ってなると、すっごい勝ちに拘ってきそう。


「早希子ちゃん、バレーの調子はどう?」
「うん。地味ーに練習しただけあってそれなりのチームプレイは出来るようになったよ。ソフトボールは?」
「青子のスパルタのお陰で入賞は余裕!でも優勝はなぁ…」
「あーちゃんなら大丈夫だよ!焼肉行けるよう頑張ろうね」
「うん!」


でもうちのクラス全部門優勝したら担任いくら払うの…?
さすがにいくらで食べ放題、な焼肉屋だろうけど。
ほんとにボーナス使う気なんだろうな…。
今時珍しい先生だわ…。
うん、ほんとに頑張ろう。


「工藤さんそっち!」
「オッケー!」


バシッ!!


そんなこんなでスポーツ大会当日。
うちのクラスは順調な滑り出し。
私は3年連続バレーボールだし、背も低い方じゃないから、アタックも決まりやすくわりとアタッカーに抜擢されてる。
でも連続で上げられるとさすがに疲れる。
1セット終わり男子と交代。
汗を拭きふぅ、とため息を吐いたところで視線を感じて振り向いた。


「快斗」
「絶好調のようじゃねーか、お姫さま?」
「快斗のクラスも勝ちあがってるって聞いたよ」
「トーゼン!うちも優勝狙ってっから!」


にやり、と笑って言う快斗。
…ああ、厄介な闘争心に火をつけてしまったのかもしれない。


「このまま勝ち進めば次の次で早希子のクラスと当たるんだけど?」
「え?…あ、ほんとだ。意外と早く当たるんだね」
「カンプナキまでに叩きのめしてやるから楽しみにしてろ」
「黒羽ー!バスケで呼ばれてんぞー!」
「今行く!…じゃあお姫さま、俺より青子を選んだこと後悔させてやるよ」


そう言ってクラスメートと去っていった快斗。
…しまったなぁ。
新一と良い勝負で負けず嫌いな快斗が闘争心に火つけたらほんとにうちのクラス叩きのめされるんじゃ…。


「工藤さん、男子サッカーの応援行かない?ってみんなで言ってるんだけど」
「あ、うん、行こう行こう」


まぁ…、私が直接快斗と戦うわけじゃないから、男子頑張って、と言うしかないか…。


「では、ただいまより3-A対3-Eの試合を始めます。礼!」


第1セットは女子の試合。
チラッと体育館内を見回したら、どうやら快斗はバスケ会場にいるらしくまだ姿がなかった。
その方がやりやすいかも


「ん?何?」


考え事をしていたら、私のジャージがつんつん引っ張られて我に返った。


「あのね、こんなこと言いたくないんだけど、」
「うん?」
「3Eのバレーボール出る子たち、なんて言うか、」
「なに?」
「…黒羽くんのファン、て、いうか、」


そう言われてグルッと敵チームのコートを見る。
…あの顔覚えてる。


−黒羽くんカワイソー−
−さっさと別れればいいのに−


誕生日直前、快斗と喧嘩した時に私に暴言吐いてきた子たち。
…快斗と同じクラスだったのか。


「工藤さんのこと、あんまり良く思ってない、っていうか」
「嫌いなんでしょ、私のこと」
「え!?い、いや、そこまではっきりはわかんないけど、」
「大丈夫、わかってるから」


私が見てることに気づいたのか、こっち見てヒソヒソ何か話している。
…だからって快斗がもうすぐ来るし、何が出来るわけじゃないだろうけど。


ピピーッ


試合開始のホイッスルが鳴り響く。
直後、


バシィィッ


「!?」


私に向かってボールが飛んできた。


「工藤さん大丈夫!?」
「…大丈夫、当たってないし」


大丈夫、なんだけど、今私の顔のすぐ横に飛んでこなかった!?
チラッと相手コートを見るとまたヒソヒソと何かを話していた。
…。


バンッ


「…いったぁ…」
「く、工藤さん腕真っ赤!無理しなくていいんだよ?」
「…大丈夫、レシーブしなきゃ試合にならないでしょ」


明らかに。
明らかに私を狙って来てる。
しかも聞くところによるとあのアタッカー高2の夏までバレー部だったらしいから正確さや早さが他の子と段違いだ。
あの時の言動がまさかこんな形で返ってくるなんて思いもしな


バシィィ


ピピーッ


「工藤さん!」


元バレー部の放つ轟音の後ホイッスルが鳴り響く。
クラスメートが駆け寄ってくるけど、痛くて顔から手が離せなかった。


「工藤さん大丈夫!?」


一瞬の油断。
それまでは避けたりレシーブ受けたりしてたけど、考え事してる隙をつかれて顔面でレシーブ受けるハメになるなんて…!


「口の端切れてるよ!?」


口の中でじんわり錆びた鉄の味が広がる。
チラッと相手コートを見たら、明らかにこっちを見てクスクス笑ってた。


「ほ、保健室行く!?」
「…た」
「え?なに!?」
「あったま来た!」
「え!?」


蘭にも言われたけど、双子だから似てるんだよね。
新一と同じくらい、私も負けず嫌いってところが!
やられたまんまで終わらせるわけないでしょう!?
私の闘争心に火がついた瞬間だった。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -