■本気のスポーツ大会
「じゃあ出たい種目に名前書いてくださーい」
スイート薔薇風呂誕生日を過ごした快斗は、最近なんだか忙しそうにしてる。
放課後は「俺ちょっと用あるから!」で、学校解散。
何してるかわからないけど、まぁ…勉強に精を出せる時間が与えられ、夏休み前の期末試験は無難な点数を納めることが出来た。
そして期末試験が終わったと言うことは、恒例のスポーツ大会があるってこと。
「早希子ちゃん何にする?」
「んー、バレーボール、かなぁ?」
「やっぱり!じゃあ青子もそうする!」
毎年恒例スポーツ大会。
男子はサッカー、バスケ、バレー。
女子はソフトボール、バスケ、バレー。
私はただ走るのは苦手。
でも球技なら何故か人並みにはできるから不思議。
その人並みにできる球技の、スポーツ大会でやる3種の中で唯一部活でしたことある、って言っても前の世界の記憶だけど、バレーボールにした。
というか、去年も一昨年もバレーボールだったんだけどね。
…もっとも小学校の頃の「クラブ活動」ってのでやっただけだから、経験あるってうちにも入らない気もするけど。
「あーちゃんはソフトボールが得意なんだからソフトボール選択したらみんな喜ぶんじゃない?」
「そうすると早希子ちゃんと一緒じゃなくなるからいーの!最後のスポーツ大会くらい仲良い子とやりたいし!」
ああ、私愛されてるわ。
なんて思いつつも、去年も一昨年も青子はクラスの成績を上げるために頑張ってたもんなぁ、なんて思った。
「今年は景品出ないの?」
「3年生はねー、受験の息抜き、って感じだから出てくれるだけでありがたいから、全クラス一緒の参加賞だよ」
「ふぅん…。じゃあやる気出ない人もいるだろうね」
「青子みたいなね」
「ははっ」
去年も一昨年も優勝クラスには近所のスーパーの商品券や学食パンの割引券とかが配られたから、みんな必死だったんだけど。
3年は参加賞だけならやる気出ないどころか出ない人もいそうな気がするわ…。
「3年は参加賞のみだと言ってみんな手を抜かないように!」
なんて担任が釘をさすけど、参加賞だけで盛り上がるわけがない。
「お前たちが受験の良い息抜きになるように、先生が1つ約束しよう!」
まぁ授業がないだけ息抜きにはなるけどね。
「各球技このクラスが優勝したら、1学期の打ち上げも兼ねてその球技の参加者全員に焼き肉をごちそうしよう!!」
ざわっ
「マジで!?」
「全額おごり!?」
みんなの目の色が変わった瞬間だった。
「先生のボーナスもっていきやがれ!」
「俺サッカー経験あるぜ!」
「私中学の時バスケ部だった!」
「早希子ちゃん、青子、」
「わかってる」
「先生!中森青子3年連続ソフトボールに出ますっ!!」
こうして、3-A全員本気のスポーツ大会に向けて動き出した。
「早希子はバレーボール?」
いつもの屋上昼休憩。
日差しがキツくなってきて、昼「休憩」になってない気もするけど。
「うん。快斗は?またサッカー?」
「俺今年は人数の関係でバスケとバレーの掛け持ち!自分で言うのも何だけど、何やらせても人並み以上で困っちまうぜ!」
「…そう」
万能ってツラいよなー!なんて、すごい嬉しそうに話してきた。
「じゃあ今年は快斗の応援できないね」
「…え!?なんで!?」
「だって快斗もバレーボール出るんでしょ?バレーボールは1セットずつ男女交替で出るじゃない。私あーちゃんと焼き肉パーティ行きたいし、優勝狙うから」
「…」
「…」
「…」
「…」
「早希子ちゃん!」
「…なに?」
「俺バレー断ってくるっ!!」
それだけ言うと食べかけのパンを投げ出し、あっ!!と言う間に屋上から出ていった。
…うん、平和だ。
快斗が戻ってくるまでお弁当食べるの待ってようかな…。
見上げると、どこまでも青く澄んだ空にもくもくと広がった飛行機雲だけが浮かび、これから来る夏本番を知らせていた。
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bkm