Clover


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賭け


賭け


だいたいあの人が絡むとロクことがない。
それは前っから知っていた。
で、今回も見事にロクなことがなかった。
娘の彼氏の誕生日に合わせて帰国とか、ほんっとあの人、俺にスピリチュアルアタックするのが好きだよな…。


「偶然だって!たまたま誕生日翌日の22日までいることになったんだからそんなに怒らないでよ」


んな偶然あるかよ!
あの人は全て調べ上げた上で嫌がらせしてんだ!!
…とは、さすがに早希子に言えなかった。


「何してんの?」
「だって早希子ちゃんこれから放課後直帰でしょ?なら今するしかねーし!」
「しないから!」
「いってー!オメーなぁ、俺は誕生日もまともに祝ってもらえねぇんだぞ!?」
「それとこれとは話が別でしょ!?」


ばちーん、と、早希子の右手がクリティカルヒットした。
はっ!?
俺もしかして大魔王が去るまで禁欲なわけ!?
…早く国に帰りやがれっ!!!


「で、ほんとに電話で祝われるとは思わなかったんだけど」
「ごめんて…。朝学校に行ったら1番に言うから」
「へーへー」
「18歳おめでとう、快斗」


いっくらなんでも、早希子も家抜け出したりとかしてくれるんだろうなぁ、とか?
淡い期待してた俺がバカだった。
そういやコイツ、家族をこよなく愛する女だったわ…。
そんなわけで6月21日、俺の18回目の誕生日。
…まさか1人で迎えるなんて!
ちっくしょー!
全てあの大魔王のせいだっ!!


「…は?休み?」


翌日、朝イチでお祝い言いにくるとか言ってたわりに、全く来ない早希子に業を煮やし、早希子のクラスに行ってみても姿がなく。
学校来てねぇってどういうことだよ!


「なんかねー、お父さん明日帰るから1日つきあえって言われたってメール来たよ?あ、快斗誕生日おめでと」


またあの人かっ…!!
まさか今日会わせねぇとか言わねぇよな!?
どんだけ邪魔すりゃ気が済むんだよ!!
その後休憩時間に早希子に電話してみるものの、電源切ってやがった…。
俺今日誕生日なんだけど…。
くっそー、明日覚えてろよ!?
そう思いながら放課後、学校を出ようとした時。
なんか廊下がざわついてる。
イチイチ関わりたくねぇし、そのまま帰ろうと校門に向かった。
…のが、間違いだった。


「やぁ、快斗くん。久しぶりだね」
「お、お父さんっ…!」
「だから何度言ったらわかるのかな?『お父さん』という名前じゃなく、私には優作と言う親からもらった素晴らしい名前があるんだが」
「ゆ、優作さん…。どうしたんです?早希子…さんは?」
「早希子は今用があっていないが、少し、君に逢っておきたくね。この後都合は良いかな?」


良くねぇから出直してこい!!
なんて言えるわけもなく、この人が学校に乗り込んできた翌日、話題になった「超たっかい外車」に乗せられた。
…俺これから監獄に入れられるんじゃないだろうか。


「ああ、その格好は困るから、少し着替えてもらうよ」
「は?」


そう言って連れて来られたのは紳士服売り場。
そこそこ値の張るいわゆる「正装」って感じの服を買い与えられた。
…俺いろんな意味で今日この人に料理されるんじゃねーだろうな?
そんな一抹の不安が胸を過ぎった。


「え?ホテル?」
「ここの展望レストランを予約していてね」


は!?
ほんとに美味しく料理されるとか言うの!!?
早希子どこ行ったんだよっ!!!!
早く出てきて俺を助けろっ!!!


「快斗くん、お酒は?」
「…いえ、まだ未成年ですので」
「つまり飲めるということだね。じゃあシャンパンを」
「かしこまりました」


誰も飲めるなんて一っ言も言ってねぇじゃねーかっ!!
聞いてんのか俺の話っ!!
ポーカーフェイスが俺の十八番じゃなかったら、今頃顔どころか全身引きつらせてこの人絞め殺してるぜ!?


「では…、おめでとう18歳」


やっぱ知っててやってたんじゃねーかっ!!
と、心では思っていても、


「ありがとうございます」


笑顔で答える自分を自分で誉めた。
その後はまぁ…、当たり障りねぇ話。
学校どうだ?とか、マジックについて、とか。
ぶっちゃけあんたにゃ関係ねぇだろ、って話をした。
…俺今日なんでこの人と食事してるわけ?
しかも正装させられてさー…。
俺の目、いや舌?でもわかるたっかいだろーなぁってシャンパン出されてさー…。
たぶんこの後ここご自慢のフルコース?
え?何、俺最後の晩餐?
ああ、やっぱりこの後監獄なわけ?


「さて、快斗くん」
「はい?」
「…私と賭けをしないか?」


シャンパンを傾けた大魔王がニヤリと微笑んだ。

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bkm

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