Clover


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賭け


再び…!


「っ…快、斗…」
「…ゴムつけるからちょっと待って」


快斗様生誕祭目前の6月の土曜日。
私の勘違い妊娠騒動も落ち着いたんだけど。
なんと言うか…、アレ以来快斗が前にも増して異常に避妊を、ゴムをつけることを、気にかけてる気がした。
いや、それを気にしてくれるのはいいことだよ?
いいことだし、ありがたいと思うけど、なんかやっぱり、快斗も妊娠疑惑があったとき、焦ったんだな、って。
それが普通の反応なのかもしれないけど、寂しいとか、悲しいとか、どういう言葉を当てはめればいいのかわからないけど、ただ例えるなら、心にほんの少し、すきま風が吹いたような、そんな感じだった。


「じゃあ2人で過ごすことにしたんだ?」
「うん。平日だしね。うちで細やかなパーティーしよ、って。ごめんね」
「いいよいいよ!楽しんでね!」
「ありがと」


快斗の誕生日、悩んだけど2人きりで過ごすことにした。
来年はきっと、みんなと祝えないから大勢で祝った方が思い出としていいのかな?とか思ったんだけど「俺はオメーさえいてくれればっ…!」って言うから、じゃあ…、ってことで2人きりで祝う予定。
まぁ…、それ=「俺はオメーがこの服さえ着てくれればっ…!」に変換されるわけで。
去年に引き続き快斗様主催大コスプレ大会が催されることになるんだと思う。
今年はどんなコスプレが用意されるんだろって、ちょっと気になってる私がいるのは確か。


「…なんかさっきから廊下がざわついてるね?」
「ほんとだ…。何があったんだろ?…どーしたの?」
「あ、青子!ほら見てあそこ!あそこ!」
「うん…?え、あの車?」
「ただの車じゃないって!外車だよ、外車!!しかもあれ超たっかいんだってっ!!」
「…え?あれ先生の誰かが買ったの?」
「違う、違う!誰かの保護者らしいって話だけど…」


超たっかい外車で校門前に乗り付けた誰かの保護者…。
嫌な予感がしてるのは私だけじゃないはずだ…。


「あ!出てきたよっ!!」


その言葉と共に車から降りた人影を見てやっぱり!って思いと、同時にちょっとだけ、驚いた自分がいた。


「お父さん!」
「早希子!久しぶりだね」


外車でやってきたのは我が家の女王ではなく、大魔王様だった…。


「どうしたの?お母さんは?」
「日本に次回作の取材に来たんだよ」
「取材?お母さんと一緒に?」
「日本に来たなら我が子に会いに来ないわけにはいかないだろう?」
「…お母さんは?」
「しばらくこっちにいる予定だから新一も呼んで何か美味いものでも食べに行かないか?」
「…また喧嘩したのね?」
「ははははは!」


有希子ネタを華麗にスルーした大魔王様。
うちの親の痴話げんかもほんっと懲りないよなぁ…。


「今日はもう終わったのかい?」
「え?あ、うん。今日はちょうど帰るところだけど?」
「そうか、じゃあ乗っていかないかな、お嬢さん」


そう言ってドアを開けるお父さん。
…こういうところをサラッと決めるお父さん、嫌いじゃないんだよね。


「お父さんいつまでこっちにいるの?」


同級生曰く「超たっかい外車」の助手席は当たり前だけど右側だった。
まぁお母さんの車で慣れたけど。


「22日までいる予定だ」
「……………えっ!!?」


にっこり微笑むお父さんの横顔が眩しかった。
でも、22日って言ったら、


「ああ、それから米花町じゃなく早希子の住んでいるマンションに泊まることにしたから」
「えっ!?なんで!!?」
「なんでとは心外だな。推理のことしか頭にない息子とよりも、可愛い娘と交流がしたいだけじゃないか。…それとも何か?俺が泊まったら都合が悪いことでもあるのかな?」


この人もしかして有希子と喧嘩した腹いせに、快斗の誕生日に嫌がらせしに来たんじゃないの!?


「どうした?早希子?」
「…ううん、じゃああっち戻るまで私がご飯作るね」
「それは楽しみだな!」


あっはっはーって笑う大魔王様。
…聞けない!
「お父さん、大人気なく快斗の誕生日邪魔しに来たんじゃないよね?」なんて聞けるわけない!
そもそもお父さん快斗の誕生日知ってたっけ…?
ああでも、そうなると20日からの快斗命名・快斗くん生誕記念大お泊り会がなくなるわけね…。
これは後々厄介なことになるな…。


「若い娘がため息なんて吐くものじゃないぞ」


あんたが吐かせてるんだ、気づいてくれ…。
なんて言えるわけないし。
暗雲立ち込めてきた快斗の誕生日カウントダウンが始まった。

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