Clover


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戸惑い


隠した本音


「え?早希子が?」


最初に早希子の異変に気づいたのは青子。


「うーん…。青子の気にしすぎならいいんだけど、最近あんまりお昼食べてない気がするんだよね…。早希子ちゃん1人暮らしだから心配で…」


毎日一緒にメシ食ってるから気づいた些細なことだった。


「わかった、注意してみとく」
「うん、お願いね」
「おー。…青子」
「うん?」
「サンキュー」


ほんっと青子と幼馴染みで良かったって、この後痛感した。
青子の言葉を受けて、早希子の様子を注意深く見るようになった。
別にどっかがすげぇ悪ぃとか、どっかを痛がってるとか。
そういうのはナイ。
ただ、青子の言うように、食欲が落ちてる気はした。


「…んっ…快、斗っ…」


抱く早希子もやっぱりいつも通りで。
単に生理が近いだけなんじゃねぇか?とか。
すげぇ楽観的に考えてた。
でも、


「…そういや前やらなくなったのいつだっけ?」


女は生理期間sexをしない。
男はsexが出来ない期間を生理だと解釈する。
この時初めて、まさか、って思った。
まさか早希子、って。
俺の考えすぎならいい。
だけど、


−快斗!痛い!止めてっ!快斗っ!!−


思い当たることがある。
生でヤったどころか、あの時中で出した。
んな先のことまで考えず、ただあの時は本能のまま動いていた。
日数的に考えても、十分あり得る。
この時のこと、他人が聞いたらサイテーじゃねぇ?って思うと思う。
でも、早希子が妊娠したかもしれない。
その可能性に気づいた時、嘘だろ、って。
あり得ねぇ、って。
正直、目を背けたくなった。


「気をつけて行くんだぞ?」
「わかってるー」


たぶん、早希子は気づいてない。
てゆうか気づいてないからこそ、俺が求めるままに体を許すんだと思う。
…そのまま気づかず、単に俺の思い過ごしであってほしいって、心底思った。
でも…、


「早希子!おっはよ!」
「快斗…。おはよ」


アイチャンのところに行った翌々日のいつもの朝。
明らかにそれまでとは違う早希子の態度。
ああ、気づいたか、って。
いや、もしかしたら、アイチャンのことだ。
さっさと病院連れて行ったかもしれねぇって思った。
それからしばらくは早希子の出方を待つことにした。
でも俺に言うような素振りをみせねぇし、かといって青子に相談してるわけでもなさそうだった。
ただ、1人で悩んでいる。
早希子が1人で考えてるように、俺も俺でこの先のこと、考え覚悟を決める必要がある。
どっちに転んでも、いいように。
2日経っても、3日経っても、早希子は黙ったまま。
俺から切り出せばいいのかもしれない。
でも、俺からは、切り出せなかった。


「快斗ごめんっ…」


なんでオメーが謝んだよ。
悪ぃのは後先考えず、嫌がるオメーを無理矢理ヤった俺じゃねぇか。


「赤ちゃん、できたかもしれない」


泣かないように、泣かないように。
声震わせながら言ってきた早希子に、俺は本当に、自分のことしか考えてなかったんだと思った。


「あとはオメーが今生むか、後で生むかの違いなだけってこと!」


それは他の誰でもない、自分自身に言い聞かせた言葉。
これからも一緒にいるのはコイツしかいねぇ。
それは間違いない。
でも、「今」と「後」じゃ大きな違いだ。
アメリカに、連れて行きたいと思っていた。
だけど連れて行った後に出来るか、連れて行く前に出来るかじゃ、大きく違う。


「ごめん、ね」
「は?何のごめんだよ?」
「…ありがと」


そう言って俺の胸に顔くっつけて、しがみついてる早希子。
早希子が顔をくっつけてる場所からじんわり濡れた感触が広がっていった。
俺が気づいてからと、早希子が俺にすぐに打ち明けて来なかったことで考える猶予が与えられ、早希子に対していつも通り接する心のゆとりが出来た。
何よりこの、ある種のポーカーフェイスは俺の十八番だったから。
…けど。
俺は、青子から早希子の異変を聞いていなかったら、どうしただろう。
俺が気づく前に早希子が気づいて、早希子から聞かされていたら、どうしただろう。
今でさえ、こんな状況に追い詰めていたんだ。
たぶんきっと、すげぇ早希子を傷つけたんじゃねぇかって。
相変わらず悪運だけはあると思った。


「どーすっかなぁ…」


思わず漏れる本音。
どーするかなんて、選択肢はもうないけれど。
後は覚悟を決めて行動するだけ。
いつの間にか寝た早希子の寝顔を見ながら、小さく息を吐いた。

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bkm

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