Clover


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閑話


もう1つの誕生日


早希子に何かあったかなんて、そんなのすぐわかった。
でも、本人言いたくねぇみたいだし?
ってことは十中八九黒羽関係なんだと思う。
…あんニャロォ、次に会ったらただじゃおかねぇ!
そして5月4日朝6時。
朝イチで行くんだからね!って蘭に念を押され学校行くよりも早く起きた。
…早希子から電話来ねぇな。
まさかほんとに今日1人じゃねぇよな…?
でも昨日のあの様子だと黒羽が参加するキャンプに行くはずねぇだろーし…。
なんで灰原もキャンプに行くんだよ!
早希子の話聞いてやれよっ!!
だいたいあの変態早希子に何しやがった!?
ほんとにタダじゃおか


「うるせーーー!!朝っぱらから5分おきに電話してくんじゃねーよっ!!!」


あれ?


「…オメー黒羽か?」
「俺意外に誰が休日のこんな時間に早希子のケータイに出んだよっ!?」
「…早希子はどーした?」
「休日の朝7時前なんだ、寝てるに決まってんだろっ!?俺だってオメーがしつこく早希子のケータイ鳴らさなきゃ寝てたんだよっ!!」


…あれ?


「オメーら喧嘩してたんじゃねーのか?」
「…なんの話だ?」
「早希子が灰原に泣きついてきたんだよ!」
「……それはまぁ、解決したし」
「…してたんだな?喧嘩」
「えっ!?」
「テメー早希子に何しやがった?」
「…お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません」
「はあ!!?」
「番号をお確かめの上おかけなおしください」
「バカ言ってんじゃねーよっ!!」
「The number you have dialed is not in service any more. Please be sure you have checked your telephone directory and are dialing again. Thank you.」
「あ、おいっ!」


アイツ切りやがった!
しかも電源切ったなあの変態っ!!
…でもまぁ早希子と一緒みてぇだし?
まぁなんとかなったのか?
いやそれにしたって


「って、わけなんだよ!あり得ねぇだろ、アイツ!!」


現在トロピカルランド内ジェットコースター待ちの列の中。
そういや去年このコースターに乗った後にジンとウォッカの取引見たんだよな…。
なんて考えながら蘭に昨日からの出来事を話した。


「あり得ねぇと思わねーか?」
「…あり得ないのはあなたよ、新一」
「…へ?俺?」
「去年は去年でホームズホームズ!今年は今年で早希子早希子っ!!なんなのよっ!?今日なんの日かわかってんのっ!?」


蘭が今にも般若になる勢いで睨んできた。


「なんの日、って、俺の誕生日?」
「そう!つきあってから初めてのっ!新一の誕生日よ!!それなのに口から出る言葉は早希子早希子っ!!なに考えてんのよっ!?」


軽く殺気を飛ばしている蘭。
…俺はどうやら今命がヤバイらしい。
頭の中で警鐘が鳴り響いている。


「口を開けばホームズか早希子の話ばっかりじゃないっ!!」
「お、おい、謝るから落ち着けって!」
「ホームズと早希子と私!誰が1番大事なのよっ!?」


昔、母さんが出てたドラマを見た時に「仕事と私どっちが大事?」って聞いてた女がいたのを思い出した。
…正直バカな女だと思った。
だってそうじゃねぇか?
天秤にかけるにしても、それは比べるようなもんでもない。
女も大事かもしれねーが、その女を養うため何より自分が生きていくためにも仕事は必須。
比較するようなものじゃない。
俺はこんなバカな女だけはお断りだ。
そう思ったいつかの自分を思い出した。
ホームズと早希子と蘭?
いやだってオメー、それは比較するようなもんじゃねーじゃねぇか!
ホームズは俺が永遠に敬愛する名探偵だし、早希子は俺と血を分けた唯一無二の妹だ。
なのにオメー、その2人と比べるってどういうことだよ?
でもまぁ、蘭が望む答えはわかる。
それくらいは俺にだって推理できる。


「オ、オメーに決まってんだろ」


フイッと横を向いたため、蘭の表情は見れなかった。


「新一…」
「…」
「今の間は何?」
「…へっ?」
「そこは嘘でも私だって即答するもんでしょっ!?」
「ええっ!?」
「しーんーいーちーー」
「ち、ちょっと待て!落ち着けっ!今日は俺の誕生」


日、って言う前に蘭の上段回し蹴りが炸裂。
…したと思った。


「…いっ!?」
「今日は誕生日だからこれで許してあげるけど、次はないわよ?」


思わず瞑った目を開けると、目の脇3センチのところに蘭の足が来ていた…。
あ、あぶねぇ、あぶねぇ…。
俺、今日誕生日で良かったぜ…。
この日を境に、蘭の前では極力早希子やホームズの話をしないよう心に決めた。


「…ねぇ、新一」
「あん?」
「確かにホームズや早希子の話はだいぶしなくなったよ?」
「おぅ」
「でもだからって今度は黒羽黒羽って、早希子の彼氏の話しかしてないじゃないっ!!!」
「………えっ!!?」
「そんなに黒羽くんが気になるならもう早希子入れて3人でつきあえばいいでしょっ!!?新一のバカーー!!!」


蘭からの正拳突きが繰り出されながらこの会話がされるのは、それから1ヵ月後のこと。

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bkm

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