Clover


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2度目のバースデー


情けない男の葛藤


「…オメー人んちで何やってんだよ」
「おー、起きてきたか?パンしかねぇぞ、ここんち」


翌5月2日。
起きてこねぇだろうなぁと思ったら、案の定昼近くまで黒羽は起きて来ず。
仕方ねぇからリビングでスッキリ見ながら朝飯を食べた。
つってもパン焼いただけだけど。
すっかりスッキリも終わっていいともまでどーすっかなぁって思ってたら黒羽がリビングに現れた。


「…帰れよ、オメー」
「帰ったらおふくろいるから煩くて帰れねーし!」
「だったら学校行きゃあいーだろ?」
「今日からGWなんだ、うち」
「バカ言ってんじゃねーよ」


なんかいつもと逆だとおかしな感じだよなぁ、と思いつつも、昨日よりも会話らしい会話が出来てるから良しとしよう。


ピリリリリ


うん?メール?


「…緊急事態です!早希子ちゃんと快斗が喧嘩した模様!しかも深刻さレベル7!!青子どうしたらいい!?…だとよ」


って、ことは工藤さんは学校行ってんのか。


「オメーなんかがどーすることもできねーから黙ってろって言っとけ」
「…」
「…ってーーなっ!何すんだよっ!?」
「お前なぁ、いつまで不貞腐れてるわけ?青子ちゃんも心配してんだろ?」
「…うるせぇなぁ。説教すんなら帰れって言っただろ!」


うーん、黒羽の機嫌がすこぶる悪い。
いやまぁ確かに、俺も青子ちゃんが他の男とキスしてたとこ目撃したらこうなるだろうけど。
いやでも青子ちゃんがそんなこと!
もし万が一そうなったとしても、きっと理由が


「そうだ…」
「あん?」
「悪ぃ、俺ちょっと電話するから隣の部屋借りる」
「むしろ帰れよオメー…」


そうだよな。
黒羽の意見だけ聞いてても埒明かねぇし、工藤さんの意見も知ってた方がいいよな。
…でも工藤さん、青子ちゃんに話すかな…。


「も、もしもし!?」
「はやっ!!」


江古田、今昼休憩だよなって確認した後で青子ちゃんに電話したら、ピリリリってなるコール音の1回目のピリって段階で電話に出た。


「ね、ねぇ和樹くん、青子どうしよう!!」
「ちょ、落ち着いて!…原因が何か工藤さん言ってた?」
「…早希子ちゃん、てゆうか…」
「うん?」
「…」
「…青子ちゃん?」
「…な、なんか、昨日、」
「うん」
「早希子ちゃんとクラスメートの男の子がキスしてたところを快斗に見られた、って、その男の子が言ってて…」


ああ…。
なんか今回の原因というかかがわかった気がする。


「その子のせいで噂がすごい広がって早希子ちゃん怒ってたんだけど半分ほんとで半分嘘って言うだけで、否定しなくて…」
「それで工藤さんは?」
「今日はもう帰っちゃった…」
「そっか…」


黒羽に見られた、ってのは本当なんだろう。
本人も言ってたし。
じゃあ半分嘘ってのはなんだ?
…でもまぁ十中八九、男から工藤さんにちょっかいかけたんだろうな、今の話聞くと。


「今日快斗学校来てないし大丈夫かな?」
「あー、黒羽なら大丈夫。いいとも見てるし」
「…え?」
「実は昨日偶々黒羽の家に用があって来たら様子がおかしくてそのまま泊まったんだけど、アイツ何があったか喋らねーんだ」
「…そうなの?」
「うん。だから喋るまでいようかと思ったらいつの間にかこんな時間に…」
「そっか…。じゃあそっちは和樹くんがいるから大丈夫だね」
「おぅ」
「…早希子ちゃん、大丈夫かな?もうすぐ誕生日なのにこんなことになって…」
「青子ちゃんはさ、」
「うん?」
「…工藤さんが他の男に自分からキスしたと思う?」
「思わない!」
「…」
「そ、りゃあ…、加瀬くんも言ってるし、早希子ちゃんも否定してないから、キス自体はあったのかもしれないけど…。でも早希子ちゃんが自分からそんなことするわけないよ!」
「…だよな」


そこは俺も同意。
カセクンがどんなヤツか知らねぇけど。


「…わかった。こっちは任せて」
「青子はどうすればいいかな?」
「…工藤さんが助けてって言ってきたら味方になってあげたらいいんじゃないかな?」


もっとも黒羽の話や青子ちゃんの話を聞くと、自分のことをベラベラと話すタイプの子じゃないみたいだし。
助けを求めてくれるかは疑問なところだけどな。


「俺今回のキャンプ行かねぇから青子にそう言っといて」
「…いや、もうお前も来ないと思ってると思うぞ?」
「はあ?」
「言いふらしてるらしいぜ?カセクンとやらが」
「…」
「お前それでいいのかよ?」
「…何がだよ」
「自分の女取られて、1人いじけてていいのかって聞いてんだよ」
「…」
「お前も案外なっさけねぇヤツだったんだな」
「…」


冷蔵庫から、昨日の残りのコーラを取り出した。


「なぁ…」
「あー?」
「俺、どうしたらいー?」
「…話合ってくりゃいいだろ、工藤さんと」
「…でも、」
「あん?」
「早希子今ぜってぇ俺の顔見たくねぇと思う」
「なんで?」
「…」
「お前自分が悪いことしたって自覚あんならまずそこ謝ったらどうだ?」
「…」
「まぁどうするかはお前次第だけどな。でも別れる気ねぇなら1人の誕生日にさせないよう、早く行動した方がいいと思うけど?」


わかったんだかわかってねーんだか、黒羽はまた項垂れた。
テレビからはノンキに「いいともー」とか掛け声が響いてる。
昨日ほどじゃないにしろ、キャップを開けて2日目の少し気の抜けたコーラを一気に口にした。

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