Clover


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2度目のバースデー


深刻さレベル7


「緊急事態です!早希子ちゃんと快斗が喧嘩した模様!しかも深刻さレベル7!!青子どうしたらいい!?…だとよ」


時を遡ること十数時間前の5月1日夜8時になる少し前。
いつもの地元連中とビリヤード行くかってなって集合場所に向かおうとしていた時。


「おぅ、悪ぃ!今からそっちに行くから!」
「あー、いいいい。それより宮、黒羽と一緒?」
「へ?黒羽?…いいやぁ、俺1人だけど?」
「…黒羽と連絡取れねぇんだけど」
「…は?」
「何回電話しても出ねぇし、メールも返って来ねぇし。…アイツどうした?」


どうしたって聞かれても俺だって四六時中黒羽のお守りしてるわけじゃねーっての!
でもまぁ、


「うちからの通り道だし、黒羽んち寄ってから行くわ」
「悪ぃな」


電話を切って歩き出す。
小学校こそ道のこっち側とあっち側って感じで学区が違ったけど、俺んちから黒羽んちはほんとに近い。
だからこそアイツいっつも俺んち襲撃に来るんだろうけど、と。
…あれ?電気ついてねぇ。
いねぇの、か?


キィィ


え!?
玄関開くし!!
はっ!?
なんかあったのか!?


「お、お邪魔し、って、お前そんなところで何してんだよっ!!電気くらいつけろよ!」


玄関開けたら廊下の隅で項垂れて座ってる黒羽を発見。
学ランがあまりにも暗闇と同化してて、俺今フツーに違う世界の人間見ちまったのかとビビッたんだけどっ…!!


「おっまえ、こんなとろこで何やってんだよ!加藤たちがビリヤードするって何回も電話してんのに出ねぇって心配してたぞ?」


パッ、と電気をつけて黒羽を見た。
…………は?
コイツなんかズボンずり落ちてねぇ?


「俺行かねぇから帰って」


…よくわかんねぇけど、なんかあったんだな、きっと工藤さんと。
ため息吐きながら電話をかけた。


「おぅ、俺。悪ぃけど俺と黒羽今日不参加な」
「は?なんかあった?」
「いいやぁ、なんも?ちょっとこの間してた約束忘れてただけ」
「…ふぅん。まぁいーけど」
「悪ぃな」
「おー、じゃあまたな」


電話を切って黒羽を見たら、何故か睨まれていた。


「オメーと約束なんかしてねぇぞ、さっさと帰れ」


うーん、俺的にこれは結構重症だと思う。


「何があったか知らねぇけど茶くらい淹れてやるから話聞かせろ」
「オメーんちじゃねーだろ!帰れよっ!」
「だからあえて俺が茶淹れてやるって言ってんだろ!どーでもいいけど、その目グサイものを仕舞え。お前のタマなんか見たくもねぇ」
「…目グサくて悪かったな」


いや実際は見えてなんかいなかったんだけどな。
玄関先でパンツ下ろして何やってんだ、コイツ。


「は?何かの冗談か?」
「…」


黒羽邸キッチンで冷蔵庫にあったコーラを入れてリビングソファに座る黒羽に出してやった。
とりあえずコーラを一杯飲んだら少し話す気になったらしい黒羽がポツポツと口にし始めた。
いやいやいやいや、


「工藤さんが他の男とキスしてた?」
「…」
「お前それ何かの見間違えだろ?」


工藤さん、そんなことするような子じゃないし。


「見間違えじゃねーから言ってんだろ!してたんだよっ!他の男と!!」
「…それでお前どうしたんだよ?」
「どうって?」
「工藤さんに聞いたのか?」
「…」


聞いてねぇのかよ…。


「お前なぁ、お前の勘違い、って可能性も」
「だから勘違いじゃねーって言ってんだろ!?俺の目の前で他の男に髪触らせて逃げもせずにキスまでしたんだよっ!!」


なんかやっぱりイマイチ信憑性がねぇんだよなぁ…。


「それで工藤さんは?」
「…うちに連れて帰ってきたけど?」
「は!?今いんの!?」
「いるわけねーだろ!…俺のこと引っ叩いて帰ってったよ!」


ああ、だからコイツ左頬が少し赤く…うん?


「ちょっと待て」
「…なんだよ」
「お前工藤さんにどこで引っ叩かれたんだ?」
「どこ、って、玄関でだけど?」
「…お前さ、」
「あん?」
「まさかとは思うがさっきのあの場所でヤろうとして引っ叩かれたんじゃねぇよな?」
「…違ぇ」


ああ、そうだよな。
いくらなんでも


「ヤろうとしたんじゃなくて、ヤった後で引っ叩かれた」


今度は俺が項垂れた。


「お前さぁ、いっくら自分の彼女だからって、あそこでヤるかフツー?」
「…」
「引っ叩かれて当然だろ」
「…んで俺だけが悪ぃんだよっ…!」


いやいや、その前後関係はわからねぇけど、これに関しては明らかにお前だけが悪いだろ。


「だいたい怒り任せにそんなことしたって」
「おい」
「あん?」
「説教される気なんかねーから、説教する気ならもう帰れ」


そう言って黒羽はリビングから出て階段を上っていった。
元々工藤さんバカだとは思ってたけど。
その工藤さんに裏切られてちょっとコレはやべぇんじゃねーの?
いやそもそも、あの工藤さんがほんとに裏切ったのかって話なんだけどな…。
でもまぁ、今それを言ってもはじまんねぇし…。


「おー、俺」
「お兄ちゃんどうしたの?」
「悪ぃけど今日黒羽んち泊まるから、明日の朝メシいらねぇって言っといて」
「また黒羽くんち?」
「おー」
「ほんっと、仲良いね、お兄ちゃんと黒羽くん」
「…まぁ頼むわ」
「わかったー。今度ケーキね」
「太っても知らねぇぞ」
「太んないよっ!」


ブチッ、と電話を切った妹にため息を吐く。
黒羽もケーキでごまかされてくれたら楽なのになぁ…。
このままだとあの2人キャンプ来ねぇだろ。
そんなことになったら青子ちゃんが悲しむじゃねぇか。
俺ってつくづく黒羽のお守り担当なんだと気の抜けたコーラを一気に飲み干しながら思った。

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