Attack On Titan


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ラブソングをキミに


絶望への前奏曲 9


「兵長ぉぉぉぉぉ!!」
「煩ぇ!…何の用だ、オルオ。」
「お、お体はっ!?大丈夫ですかっ!!?」
「あぁ…、だいぶ鈍っちまったがな…。」
「俺っ、ほんとスミマセン…!兵長のお体の調子が悪いのにも気づかず…!!」
「…………」
「あ、あの…?」
「…似てねぇ…。」
「え?」
「あぁ、気にするな。今日から通常通り訓練を始める。」




熱も下がり、調査兵団お抱えの医師にも大丈夫との太鼓判を押され、無事リヴァイさんが現場復帰をした。
そのことはリヴァイ班はもちろん、


「あぁ、リヴァイが復帰したのか。なら溜まってる書類を、」
「おー、ミケ。俺が持って行ってやるぜ?」
「お前はすぐサボろうとするな。」


他の班の班員(特にミケさんのような分隊長とか)にも、一安心させた。




「あれ?ゲルガーさん、どうしたんですか?」
「おー、エルド。書類持って来てやったんだが、リヴァイはどうした?」
「あぁ、兵長ならあっちに…。…て、ゆうか、」
「うん?」
「フィーナが来なかったんですね…。」
「え?あ、あぁ。アイツはほら、そういう公私混同はしねぇし、言われたらこういう雑務は率先してやるだろうが、自分から名乗り出てこの班に来るような奴じゃねぇよ。」
「あぁ…、それもそうですね。」
「…なんだ?フィーナとなんかあったのか?」
「いや…、フィーナとなんかあった、って言うか、」
「あん?」
「…ゲルガーさんも『幹部階』に部屋がある、ってことは、フィーナが本当はどの部屋にいるのか、知ってるんですよね?」
「………あぁ、そりゃあまぁ、なぁ?」
「…俺それ自体、兵長が倒れた時に知ったばっかなんですよ?」
「おぅ。それがどうした?」
「…なのにうっかりそれ忘れて夜中に部屋に行っちまって、」
「…行っちまって?」
「兵長がフィーナ上に跨らせてるとこ見ちゃって、」
「…………何ーーっ!!?」
「ちょっとっ!書類落とさないでくださいよっ!!汚れたらまた兵長に何言われるか、」
「跨るってお前だってそりゃーアレか!?」
「いや、冷静に考えると服着てたし、フィーナ自身も普通だったし、考えすぎなだけだろうけど、それにしたってあの構図が衝撃的過ぎて、」
「だってお前あの大人しい純朴田舎娘がアイツの上に跨ってってお前だって、」
「そうでしょう!?そうなりますよね!?そりゃあ恋人同士なら普通のことかもしれねぇけど、まさかだってフィーナが、」
「普通じゃねぇだろっ!?そもそも兵舎だろーがっ!!しねーだろっ!?できねぇだろっ!!?おかしいだろっ!!!」
「…俺もうあの一瞬の構図が頭から離れなくて兵長はまぁ、見るからに『そっち』もどSっぽい人だからヤらせてそうだけど、フィーナがまさか上に乗ってるってどんな顔して会えばいいのか…。」
「エルドー!…って、あれ?ゲルガーもいたの?」
「っナナバァァァァァァ!!!!」
「ナナバさんっ!!!!!」
「(嫌な予感しかしない…)何?」
「俺たちはっ!!兵舎にいるんだろうっ!!?ここはっ!!アイツの!!モーテルじゃねぇーってのっ!!!!」
「(またその話か…)この間も言ったけど、男の嫉妬は醜いよ?」
「嫉妬がどうとかの問題じゃねーってのっ!!規律だっ!!!兵士以前に人間としてのマナーだろっ!」
「そうですよっ!!!そもそも兵舎なんですよっ!!おかしいでしょっ!!!」
「悔しいならあんたらも自分の女、兵士にするか、兵団の女兵士を自分の女にすればいいだろう?」
「………いや、それは、なぁ?」
「…俺もそれはちょっと…。」
「はい、話は終わったね。仕事仕事!」




リヴァイさんが復帰して数日後、休暇をもらえた私は(基本班単位の交代制で休暇がある)リコちゃんと会っていた。


「むしろ見合いした方が良かったんじゃないか?」
「…言うと思った…。」


この前起こったママたちとの出来事をリコちゃんに話したところ、そういうだろうな、と言う言葉が案の定返ってきた。


「けど、」
「うん?」
「そのナナバさん?て先輩兵士。良い奴だな。」
「…うん。」


リヴァイさんと一緒に行った喫茶店とは違う、それでも私たちには馴染みのあるいつもの喫茶店に来ていた。


「リヴァイさんはもちろん、ナナバさんやハンジさん、ミケさんにディータさん。…ゲルガーさんはまぁちょっと困ったところもあるけど、みんな本当に良い人たちばかりだよ?」
「………どう考えても、あのクソチビに対しては賛同しかねるけど。」
「リコちゃん…。」
「でもまぁ、お前たちも『ちゃんと』恋人らしいことしてるんだな…。」


リコちゃんがコーヒーカップを手に持ちながら、独り言のように呟いた。


「『ちゃんと』って…?」
「…だってお前、考えてもみろ。」
「うん?」
「あのクソチビが『恋人』にどう接してるかなんて想像も出来ないだろう?」


あぁ見えて恋人の前でだけデレッデレだったとか気持ち悪くて想像もしたくないと言うリコちゃん。
…まぁ…、リコちゃんのその言い分は、わからなくも、ない(気持ち悪いとかじゃなく)


「けど自分の病気、お前に感染さないように部屋から追い出すなんて、意外と殊勝なことをするよな?」
「…意外と、って、」
「それまでの過程がわかりにくいけど。」


後半を付け加えるようにリコちゃんは言った。
…………いつか、リコちゃんとリヴァイさんが和解する日は来るんだろうか……。


「わ、私のことばかりじゃなく、て、」
「うん?」
「リコちゃん、は?」
「…え、」
「そういう、人、は?」
「………………別にいない。」


リコちゃんは、しっかりしていて、どこか、私の保護者のような雰囲気を出している。
だからいつも会った時は、私の心配をしてくれていた。
私の話を一通り聞いた後、リコちゃんにも話を促すけど、いつも「いない」「興味ない」だけだった(だからって今まで恋人がいなかったわけじゃない)
けど…。


「だ、れか、」
「うん?」
「できた、の?好きな、人…?」
「…………」


いつも通りの返事だった。
でも…、いつかのリヴァイさんがそうであったように、いつも通りの中に、どこか、違う表情が見えた気がした。
それに対して問いかけてみると、リコちゃんは一瞬目を見開いた後、カッ、と頬を赤くした。


「……だから別にいないって、」
「できたんだ、好きな人。」
「……………」
「良かったね。どんな人?」
「………お前、」
「うん?」
「人の話聞いてるか?」


どこか赤い顔しながら、呆れたように聞いてくるリコちゃん。


「うん、聞いてるよ。できたんだよね、好きな人。」
「…………誰も言ってないだろう、そんなこと。」
「でも、」
「何?」
「リコちゃん今までそんな顔、しなかったよ?」


ツン、と。
あれは確か、私が自分の気持ちと言うものに気づく、向き合う前。
その時もこうして2人で喫茶店で話してた。


−お前その顔、他の男にはしないよ?−


あの時に言われた言葉は、今でも覚えてる。
きっとリコちゃんは今、あの時の私と、同じ顔、してるんじゃないかと思う。


「なんか、」
「うん?」
「…ムカつく。」
「そう?私はなんか嬉しい。」
「…………」


リコちゃんはどこか赤い顔でムスッ、とした。
それを黙って見ていたら、大きく1回深呼吸した後で、口を開いた。


「言っておくけど、」
「うん?」
「本当に好き、ってわけじゃないんだからな?…ただ、」
「ただ?」
「……尊敬、と、言うか…、兵士としても、人間としても、信頼出来ると言うか、」
「…兵士、なんだ…?」


私の疑問に、リコちゃんはしまった、と言うような顔をした。


「…………は、」
「うん?」
「班長、してる奴だ…。」
「そうなの?え、駐屯兵、だよ、ね?私、知ってる人?」
「…………」
「………リコちゃん?」
「…『ソイツ』も年上だけど、」
「うん?」
「あのチビみたいに有名人でもなければ、カッコいいとか騒がれてるような奴でもないからな?」
「…私の、知ってる人なんだ…?」
「……あぁ、この前フィーナがうちに報告書を持ってきた時近くにいた奴で、名前は、」


リコちゃんはポツリポツリと語りだした。
どこか、照れくさそうな顔しながら…。


「最近、」
「あ?」
「…幸せだなぁ、って思うこと、いっぱいあるんです。」
「そうか。」


リヴァイさんがいつものように、部屋でお酒を飲んでいる。


「遠征は、相変わらず危険が多いし、大変だけど…。」
「…」
「『今』がずっと続くといいですね。」


それすらも、幸せに感じる。
この時間がずっと続けばいい。
本当に、そう思った。

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