キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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New York Case


友人の評価


「行くのやめよう、かな、ニューヨーク」


快斗くんと初めての喧嘩も無事に和解できた。
そのことにホッとして、うっかり昼寝をしてしまった私(何せ快斗くんの添い寝つき!)
でも目が覚めて頭がすっきりしたら、そもそもの問題のきっかけになったことは解決していないことに気づいて。
そう呟くように言った私に、


「行ってきなよ。あおいちゃん、楽しみにしてたんだろ?」


意外なことに快斗くんは後押しした。


「で、でも、」
「ただし!」


快斗くんはピッ!と人差し指を立てて、少し私に顔を近づけて


「工藤新一と2人きりにはならないこと!これは譲れねーからな?」


どことなく拗ねてるような…、そんな顔で言ってきた。


「蘭ちゃんもいるんだろ?あの子はしっかりしてるし、あの子と一緒ならまぁ」
「…蘭がしっかりしてるって、なんで知ってるの?」
「えっ!?い、いやー、あの子しっかりしてそうじゃん?顔が」
「顔が」
「うん」


そう言われて蘭の顔を思い出す。
確かにおじさんに似ずにしっかりしてそうな顔してる気がした。


「じ、じゃあ行ってこよう、かな」
「おぅ、そーしな。その代わり」
「うん?」
「帰ってきて俺に構わないと拗ねるからな?」
「ぷっ!」


快斗くんはちょっとムスッとした顔をした。


「拗ねる宣言してから拗ねる人初めて見たー!」
「いきなり拗ねるよりいいだろ?」
「快斗くんが拗ねるって例えばどんな?」
「例えば…?そーだな…ご飯を全部チョコアイスにするとか?」
「何それ美味しそう!」
「米もなし、おかずもなし、チョコアイスのみ!」
「えっ…それは…」
「ご飯作ることを拒否して拗ねる!」
「それは嫌かなー」
「んじゃあ、帰ったら俺を構ってくれたらいいよ」


ね?と言う快斗くん。
快斗くんはカッコいい。
けどこの時初めて男の人を、可愛い、って、ちょっと、ちょっとだけ、思ってしまった。
そしてニューヨーク出発の日。


「あおいもニューヨーク初めてだよね?私も初めてだから緊張するなー」
「ニューヨークってちょっと大人ーって感じするよね」
「わかる。仕事がデキる人が多いイメージある」
「だよねー」
「おら、オメーら準備できたら行くぞー」
「「はーい」」


引率者・工藤新一の元、蘭と並んでスーツケースをガラガラと押していた。
じゃあチケット取ってくる、って新一くんがカウンターに行ってる間、蘭と2人になった。


「そーいえば、」
「うん?」
「黒羽くん、あおいがニューヨーク行くこと許してくれたんだね?」


蘭はにっこり笑っていう。


「え?快斗くんがなに?」
「あれ?聞いてない?この前、黒羽くんが米花町に来た時、私と園子の3人でちょっとお話したんだよ」
「…えっ!?」


あ、これ秘密だったのかも、って蘭が口を抑えた。
…いやいやいやいや


「それいつの話し!?」
「…ほら、あおいがケータイの電源切ってた日あったじゃない?あの日にあおいのマンションで偶然黒羽くんと会ったから少し、ね」


まずったなー、って顔の蘭。
…快斗くん、蘭のこと「しっかりしてそうな顔」って言ったけど、めちゃくちゃ会話してて、しっかりしてるの把握したんじゃん!


「あの日、ニューヨーク行きのことが原因ー、みたいなこと言ってたから、もしかしたらあおい来れないかもしれないなー、って思ってたけど、来れて良かった!」


ふんわり優しく笑う蘭。
蘭はほんとに、優しいし可愛いよなー…。


「快斗くんが、」
「うん?」
「『蘭ちゃんはしっかりしてるし、あの子がいれば大丈夫』って、」
「えー、嬉しいなー、そんなこと言ってもらえて」
「でも、」
「なにー?」
「新一くんとは2人きりになっちゃダメ、って」


そこまで言うと蘭はちょっと噴き出した。


「なるほど。じゃあ黒羽くんのためにも私があおいを守らなきゃね!」


責任重大!と蘭が右手に握り拳を作って見せてきた。


「…蘭、は?」
「うん?」
「快斗くんと話してみて、どうだった?」


うーん、と少し考える素振りを見せた後で、


「正直に言っていい?」


ちょっと伺うように私を見てきた。


「も、もちろん…!」
「黒羽くん、最初に見た時なんとなく、新一に似てるなー、って思っちゃったんだよね」


ごめん、て困った顔で言う。
…いやでもそれは確かに原作でも描かれていたことだから、謝ることでもなんでもない。


「でもこの間初めてちゃんとお話して、新一よりしっかりしてる、っていうか…『男の子』っていうより『男の人』って感じがした」
「おとこのひと…」
「うん。なんて言うかなー。例えば新一だったらね。ホームズの話しかしなくてまだまだ子どもだなー、って感じる時あるけど、黒羽くんは、あー、この人にはちゃんと『恋人』がいて、その子のこと大好きで…その子のために何でもしてあげたいんだろうなー、って思ったの」


ふわり、と音が出そうなほど綺麗な顔で蘭は笑う。
その笑顔は同じ女の私が見ても、綺麗で可愛いと思う。


「しかもその『大好きな子』って私の友達でしょ?だからちょっと力になってあげたくて、余計なアドバイスしちゃったけど、上手く伝わったようで良かった!」
「…アドバイスって?」


私の言葉に蘭はもう何も言わずに笑っていた。


「あおいが好きになった理由、ちょっとわかる気がしたよ」
「すっ、好きになっちゃダメだからね!?」
「あはは!ならないならない!」


ただでさえ、中森さんのことがあるのに、蘭までそんな、なんて思って口走った私に、蘭はおかしそうに笑う。
…うん、まぁ、「蘭が快斗くんを」好きになることは、ない、とは思う。
だってもうすぐ、蘭の「好き」がはっきりする事件が起こるんだから…。

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bkm

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