キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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卒業までの過し方


今年も


あおいちゃんが寝ちまったし、年越して早々にお開きした俺は、めっずらしく朝も早くから目が覚めてリビングに行った。
お袋が起きてくるわけねーし、あおいちゃん、も、きっとまだ寝てるだろーし。
正月番組でも見てっかなー、とか思った時、バタバタと廊下から音が聞こえた。


「あ!あおいちゃん起きた?大丈夫?」


ちょっと髪に寝癖をつけてるあおいちゃんはリビング内をキョロキョロと見渡した。


「あ、あのっ、私、昨日の最後の方、覚えてなく、て、」
「あぁ!なんかねー、俺が風呂入ってる間にお袋のグラス間違えて飲んじゃったみたいで、酔いつぶれたんだよ」
「…ェェエエ工」
「頭痛いとか吐きそうとかない?」
「………わ、私なんか変なことっ、」


俺の言葉に青くなって聞いてくるあおいちゃん。
変なことなんてなかったけど、昨夜のことを強いて言うなら王子様発言をしたくらいだ。


「いや、何もなかったんじゃない?」


俺の言葉にビミョーそうな顔をしたあおいちゃん。


「それよりあおいちゃん!あけましておめでとう!」
「…あ、あけましておめでとうございます!」


俺の言葉に、あっ!と驚いた顔をした後で深々と頭を下げたあおいちゃん。
…今年は俺彼氏だし?


「今年もよろしくな」


なんて思って、腕を引っ張って頬にキスした。
ん、だけど。


「だ、」
「うん?」
「だめェェエエ工!!!!」


あおいちゃんは下を向いて思いっきり俺の身体を押した。
…えっ、て思ったの束の間、


「私まだ顔洗ってないどころか、なんなら昨日お風呂入ってないから近くに来ちゃだめぇ!!」


俯いて顔は見えないけど、髪の間から見える耳を赤くしながらあおいちゃんはそう叫んだ。


「なら風呂入ってくる?どーせお袋もまだ起きねーし!」
「…うん。そーする…」


下を向いたまま部屋を出て行ったあおいちゃん。


「はぁぁぁ…」


…今年も俺の彼女がすげー可愛い。
知ってた、やべーくらい可愛い。
揺るがず今年も可愛い。


「ふぁーあ、おはよう、早いのね」
「…おー、はよー」
「あおいちゃんは?大丈夫?」
「あーうん。今風呂入ってる」


しばらくしたらお袋がリビングに降りてきて。
じゃあ今のうちにおせち料理用意しましょうか、っておせち料理をテーブルに並べた。
そうこうしてるうちにあおいちゃんも戻ってきて、じゃあ食べようってなった。
今年はお袋指導の元、あおいちゃんが煮豆を作った。
いつもとは少し味付が違うけど、これはこれでいいと思ったが、本人的には納得できなかったみたいで、次こそは!って話だから、次もあるようだ。
食べ終わってお袋が初詣に出かけると言った。
昨日早々にあおいちゃんを爆睡させたことに対して悪いと思ってるのか、それが俺たちに対する気遣いなんだろうと思った。
あおいちゃんと2人になってリビングで正月番組を見ていた。
寒波も去ったし、明日は初詣行けそうだなー、とか。
今年はどこの神社にするか、とか。
映し出されるテレビ番組とは全く違うことを考えていた時だった。
隣に座っていたあおいちゃんが俺の方に近づいて座り直した。
俺の右腕とあおいちゃんの左腕は接触している距離で。
あおいちゃんはソファの上で体育座りをして少し俯いていた。


「どーした?」
「………………お、」
「お?」
「お風呂、入った、し、」


すっげー小さい声で言うあおいちゃんに、これもしかして、って思った。


「か、顔も、洗った、し?」


言った後でちょっとクチビル噛んでるあおいちゃん。
……もーさぁ!そんなんされたら何もしねーって選択なくなるだろ!?


「今年もよろしくな」


さっきのように頬にキスすると、


「よ、よろしくお願い、します」


目を潤ませて俺を見てきて。
それをつまり、物欲しそうな顔、って言うんじゃねーの?
なんて言えねーし、きっとたぶん、物欲しそうにしてるのは俺の方だから。


「今年は良い年にしたいですねー!」
「皆さんはどんな年にしたいですか?」


そんな声がテレビから聞こえる。
どんななんてそんなん決まってる。
今年も一緒に過ごしていけるように。
正月番組をBGMに、気が済むまで触れるだけのキスをしていた。


「あおいちゃんてー、」
「うん?」
「うちに泊まる時、置いてあるソープ使わねーよな?持ってくるの大変じゃね?使っていーんだぜ?」


気が済むだけした俺たちはそのままソファの上でくっついていた。
そしたら必然的にさっき風呂に入ったばかりのあおいちゃんから良い匂いがしてくるんだけど、それはうちに置いてあるものじゃなくて。
あー、また自分で持ってきたのか、と思って口にしたんだけど。


「だ、だって!そんな私には快斗くんの匂いはまだ早いって!」


ガバッ!と立ち上がって言うあおいちゃんに腹筋が震えた気がした。


「俺の匂い」
「は、早いよ、そんなまだ駄目だってそんなそんな」


もー何言ってるの、みたいに赤い顔して言うあおいちゃん。


「ふっ、」
「え?」
「あははははー!!」


俺の匂いが早いって何!?
まだ駄目とか、もっと別の言い方あるだろ!!


「か、快斗くん?」
「今年もいっぱい笑って過ごそうぜ」


爆笑する俺を不思議そうに見るあおいちゃんにそう言うと、一拍間をおいて、笑いながら大きく頷いた。


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bkm

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