キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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変わる今


モヤモヤしていたのは


中学3年の夏。
帝丹中学サッカー部は都大会決勝でPK戦の末敗れた。
PK戦突入を決めた同点ゴールは新一くんが決めた物だったけど、勝敗を決めたPKを外したのもまた、新一くんだった。
どう声をかけていいのかわからなかった私は、お疲れ様と、負けちゃったけど帝丹サッカー部カッコ良かったよ、とだけメールをした。
そして、


「優勝、東京都江古田中学3年黒羽快斗!」


ネット配信された全中弓道大会で快斗くんは宣言通り優勝した。
表彰式もネット配信されていて、表彰台センターに立ってメダルをかけられる快斗くんが大きく画面に映し出されていた。
きっとまた快斗くん人気出ちゃうなー、とか。
また「可愛い女の子」からプレゼント貰うんだろうなー、とか。
そんなこと思ってしまった。


「あおいちゃん、見てくれた?」


優勝はおめでとうだけど、快斗くんが今よりももっと人気者になるのはな、って思ってしまった私は、快斗くんに連絡出来ずにいた。
そしたら夕方電話がかかってきた。


「うん、見たよ。優勝おめでとう」
「ありがとな!」


快斗くんの声は上機嫌だ。
そりゃあそうだろう。
ずっと頑張ってきて、ついに優勝出来たんだから。


「カッコ良かっただろー?」


笑いながら聞いてくる快斗くん。
…むしろ快斗くんがカッコ良くなかったことなんて今までないんじゃないの?


「また人気出ちゃうね」
「え?」


快斗くんが誰からプレゼント貰おうが、誰から声をかけられようが、私はそれを問いつめることは出来ないけど。


「関東大会の時も、何か貰ってたじゃん」


嫌味くらい言っても許されると思うの。


「見てたよ、関東大会の時『可愛い女の子』から何か貰ってたの」


快斗くんが優しいのは私にだけじゃない。
快斗くんは「可愛い女の子」に優しい。


「あんな大きくネット配信されちゃったら、プレゼント渡す子増えるんじゃないの?」


そう言った私に、


「あおいちゃんさー、」
「…なに」
「もしかしてスネてる?」


快斗くんはそんなこと言ってきた。


「べっ!別にスネてなんかいないしっ、」
「あれ?俺の勘違い?」
「そ、そーだよ、勘違いだよっ!別に私は、」
「そっかー、勘違いなら仕方ねーや。でも勘違いついでにドア開けてくれると嬉しかったりするんだけど?」


ピンポーン


快斗くんの言葉の直後、家のチャイムが鳴った。


「え?今チャイム…?」
「うん、俺が鳴らしたの」
「…えっ!?」


バタバタとドアを開けたら、


「「たっだいまー!」」


目の前の快斗くんから聞こえる声と耳元から電話越しに聞こえる快斗くんの声が重なって聞こえた。


「な、何してるの!?」
「直でこっち寄って岐阜土産渡してから帰ろうと思ってな」


そう言いながら、ピッ、と通話を切った快斗くん。
えっ?岐阜から直行できたの??うちに???なんで????


「最近いっそがしいし、疲れて電話もろくに出来なかったから、帰り顔出すって決めてたんだよなー」


そう言えば、快斗くんとちゃんと会って話すのは関東大会以来な気がする。
はい、岐阜のお土産、とビニール袋を手渡されつつ、


「俺が忙しかった時間で、あおいちゃんスネちゃったみたいだし?」


ニヤッとしながら快斗くんが言う。


「だ、だから別に私はっ、」
「スネてない?」
「スネてなんかいないですっ!」
「じゃあ寂しかった?」
「な、に言って、」
「俺は寂しかったけどなー、あおいちゃんに会えなくて!」


あおいちゃんは違うのかー、って快斗くんが残念そうな顔をした。


「わ、たし、は、」


あぁ、そうか、って。
快斗くんが忙しそうにしてて、週末もあんまり会えなくなって。
そんな中で快斗くんに声をかけたり、プレゼントあげる「可愛い女の子」を見て、モヤモヤしていって。
もしも快斗くんがその子の方に行っちゃったら、って…。
快斗くんは優しいから、その子にも私にしてくれたように連絡取り始めるのかも、とか…。
快斗くんがもっと人気が出て、今よりもいろんな人に囲まれてって、このまま私のこと、忘れちゃいそうで嫌だって…。
でも「ただの友達」は、そんなこと言えないから…。


「寂しかったよ、俺は。あおいちゃんは?」


そうだよ。
「ただの友達」が言うのはおかしい。
けど、快斗くんもそう思ってるなら…。


「さ、みし、かっ…た…」
「うん。ごめんな。…これは待っててくれたあおいちゃんにあげる」


そう言って快斗くんはかばんから取り出した金メダルを私の首にかけてくれた。

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