キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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巡る季節


キミが見せるギャップ


工藤新一と遭遇してから、…あおいちゃんが俺の中で「トクベツ」なんだと認識してから、今までに拍車をかけて電話するようになった。
平日は早々会いに行くわけにもいかねーし、これくらい許されるだろって、気づけばほぼ毎日電話していた。


「明日やっと練習試合だな。あおいちゃん今度は転ばないといいね」
「もう転ばないです!」


笑いながら言う俺に、あおいちゃんはそう言った。
…でも、あの日のあれがあったから、今こうして電話してるんだ。
あのアクシデントには今となっては感謝だけど、あれがその時だけのアクシデントじゃなく、日頃のドジりやすさの延長だって思いもしなかったけどな。


「かっ、髪切ったの!?」
「おー、似合うだろ?」


そーいや髪切ってから初めて会うんだっけ?
目をパチパチと瞬きさせて俺を見上げてくるあおいちゃんになんだか笑いがこみ上げてきた。


「え、なんでなんでなんで」
「なんで?んー…気合?」


あの男に負けたくねーって言う意思の表れなんて言えるわけもなく、


「俺マジで優勝目指してっから今年!」


そう言って更衣室に入った。
着替えて道場に向かう途中、


「工藤くん頑張ってぇ!!」


グラウンドから黄色い声が聞こえてきた。
俺の位置からは姿は見えない。
けど、


「ナイスシュート!!!」
「きゃーー!!!工藤くーん!!!」


あ、今アイツがシュート決めたな、ってその声援で伝わった。


「部長?どうしたんです?」
「ん?あー…うるせーな、って思ってな」
「あー…、まぁサッカーは、ねぇ?」


人気ありますからー、と後輩が言う。
…どーこがいいんだか!
弓道の方がカッコいいじゃねーか!
そんなこと思いながら道場について、じゃあ始めるぞってなって。
位置について弓を引き始めた。


キリキリキリキリ


無用な雑念も、騒音も、


シュッ!


全てが掻き消されるこの瞬間が、たまらなく好きだった。
全て射終えて、フッと視線を向けたらこちらを見ていたあおいちゃんと目が合った。
そして今度はあおいちゃんの番になって。


「…」


位置についたあおいちゃんが大きく息を吐いたのがわかった。


キリキリキリキリ


…そーいや去年も思ったな。


シュッ!


この子の型は、まるで教本に出てきそうなほど綺麗だって。


キリキリキリキリ


直接話すようになって、性格を知って。
もし先に性格を知っていたなら、こんな綺麗な型で射れるなんて、思いもしなかったかもしれない。


シュッ!


あぁ、でも違うか。
裏表がなく素直な子だからこそ、こんなにも基本に忠実な綺麗な型で射れるのか。


キリキリキリキリ


あれから1年。


シュッ!


まさかこんな想いを抱くとは、あの時は思いもしていなかった。
普段からじゃ想像つかないほどの真剣な眼差しのあおいちゃんは、


「…」
「!」


射終えた後、俺の方を見て音が出そうなほどの柔らかい笑顔で笑っていた。


「…ずりぃ女…」


そのギャップを見せて、落ちない奴いねーだろ。


「「「ありがとうございました!」」」


帝丹との2度目の練習試合も無事に終わり、部員たちと帰宅途中。


「部長って、帝丹のあの背の小さい黒髪の人と知り合いなんすか?」


電車内でそんな話題を振られた。


「なんで?」
「あの人、ちっちゃくて可愛くないです?」
「それ思った!てか見た目にそぐわず弓道上手くね?あの子!」


男子部員の間では目下あおいちゃんが話題の中心で。
…ほらな、言わんこっちゃない。


「あの子」
「はい?」
「俺の彼女だから手出したらタダじゃおかねーからな?」
「……は、え?ええっ!?」
「部長、彼女いたんですかっ!?」
「嘘!?部長の彼女って誰!?」
「だから今日いた帝丹の、」


いつの間にか女子部員も話しに合流して、駅に着くまでの間しばらく話題の中心はあおいちゃんだった。

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bkm

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