キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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巡る季節


2度目の練習試合


快斗くんが帝丹に来てから、


「オメーなぁ…何やってんだよ!いいか?これは、」


新一くんが今までに輪をかけて口出ししてくるようになった気がする…。
それは勉強だったり、普段の生活の中でのことだったりするわけだけど、…今までに増して口出しされてる気がする…。
…気のせい?
それと同じく、


「あおいちゃんがこの前言ってたさー、」


快斗くんの電話回数も心なしか増えてる気がする…。
普段会えないから快斗くんからの電話は嬉しいよ?
嬉しいんだけど、1回の通話が長くなってるのは、気のせいじゃないと思う。
え、なんでなんでなんで。


「明日やっと練習試合だな」


今日も今日とて快斗くんと電話してるわけだけど。
明日は江古田中との練習試合があって。
でもなんかサッカー部もうちのグラウンドで練習試合らしく、あ、じゃあ新一くん見に来ないじゃんとか思って、ちょっぴりホッとしたとか絶対に言えない。


「あおいちゃん今度は転ばないといいね」
「もう転ばないです!」


去年はだって、待ちに待った快斗くんがそこに、なんて思って緊張しすぎて転んじゃったけど、だってそんなたった1年でまさかこんなにほぼ毎日電話してるとか私この1年激動だったんじゃないっ!?


「「「よろしくお願いします!」」」


翌日の練習試合。
江古田中の人たちが来たんだけど、


「かっ、髪切ったの!?」
「おー、似合うだろ?」


快斗くんがいつもよりちょっぴり髪を短くして、より爽やかマイナスイオンを倍増させて現れた。
え、なんでなんでなんで。


「なんで?んー…気合?」


俺マジで優勝目指してっから今年!って言って更衣室に消えて行った。
…無理、かっこよすぎる!!
江古田の人たちあの快斗くんを毎日見てるの!?ズルくない!?ねぇズルくない!?!?


「芳賀さん、こっち手伝って!」
「あ、はい!」


着替えも終わって、弓道場にみんなが揃って、さぁ練習試合を始めます、ってなって。
あぁ私そう言えば、去年も思ったな、って。


キリキリキリキリ


シュッ!


快斗くんが弓を射るその姿が、優しく笑っている時とは比べ物にならないくらい凛としててカッコよくて。


キリキリキリキリ


シュッ!


真剣な眼差しが、誰よりカッコよくて。
人って、1年経っても全く同じこと思うんだ、って。
真っ直ぐに的を見つめて決して狙いを外さない快斗くんを見て、去年と全く同じ感想を持つ自分がなんだか不思議に思えた。


「…」
「!」


全て射終えた快斗くんがチラリとこちらを見て。
ずーーーーっと快斗くんを凝視していた私と当然のごとく目が合うわけで。
その瞬間、ふわりと快斗くんが微笑んで。
弓を引き締める音だけが響く世界で、唯一ふわりと音が聞こえた気がした。
…快斗くんはズルい。
あんなに真剣で凛々しい姿を見せた後で、こんなにも優しく微笑むところ見せられて、ドキドキしない子、いないと思う。


「…ふぅ…」


快斗くんがそこにいるから、っていうのは、あるかもしれない。
でもそういうこととは別として、私もしっかりしなきゃ、ってなんとなく気合が入って。
大きく1つ息を吐いた。


キリキリキリキリ


1年前は、どうしてたんだっけ?


シュッ!


あぁ、そうだ。
快斗くんがそこにいて、途中で目が合っちゃったからすごく緊張したんだ。


キリキリキリキリ


そしたら新一くんが口パクパクさせて「へたくそ」って言ってきて。


シュッ!


それに頭にきて射たら、今までで1番綺麗に弓を引けたって主将に褒められたんだっけ。


キリキリキリキリ


あれから1年。


シュッ!


あの時よりも私も少しでも上手くなってたらいいなって。
快斗くんを見てて思った。
全て射終えた後で顔をあげると、快斗くんがそこにいて。


「…」


今のこの音のない世界で、快斗くんに私の音が届いたらいいなー、とか。
そんなこと思った。

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bkm

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