キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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全中弓道関東大会!


王子再び!


「芳賀さん、キョロキョロしてると迷子になるよ?」


ディテクティブ・にゃんこのファーストケースも無事に終わり、頭の中がすっかり英語一色!
工藤くんてば「今年の夏もハワイだろーからオメーちったー英語話せるようになれ」とか言ってあり得ない分厚さの単語帳を投げつけてきた。
…学校の授業以外でも英語勉強しなきゃだなんてっ!
なんて嘆いているのもつかの間。
ついにやってきた!
待ちに待ったこの日がっ!!
全中弓道関東大会っ!!!
主将にキョロキョロするなって言われてもやっぱり探してしまうのは仕方がないと思う!
だって!
また黒羽くんにっ!!
それだけでもうあの単語帳すら帳消しだ!


「芳賀さんこっちねー」
「は、はいっ!」


でもほんとにキョロキョロしすぎて迷子になっても困るから、程よく主将の方を見ながら歩いていた。
今日は杯戸総合体育館の特設会場で大会が行われる。
体育館のギャラリー席はコートを囲んで座れるようになってるけど、弓道の大会の場合矢があらぬ方向に飛んでいくことも想定し、的とは反対側の席しか開放されない。
だから黒羽くんもこっち側の席のはずなんだけど…。


「おい、アイツ!」
「ああ、アイツが去年の全中3位の黒羽だ…」


ざわっと、それまでとは違うざわめきが辺りを包んだ。
そのざわめきの中心に、黒羽くんがいた。


「1年で全中3位とか、調子乗ってんじゃねー?なんか気にいら」
「そんなことないですっ!黒羽くんは本当に凄いんですよ!!!」
「…キミ誰?」


全然知らない近くの席の人が黒羽くんの悪口を言っていたのを思わず止めに入ってしまった。
にゃんこならまだしも、黒羽くんが調子に乗るだなんてっ!!
近くであの姿を見たらきっとその考えが間違ってたってわかるんだからっ!!!


「黒羽ー、先生が、」
「ああ、はい」


黒羽くんたちはギャラリー席の最前列に行って、私のいるところからちょっと離れてしまった。
でもいいんだ。
私の後ろにいられるより前に座ってもらった方がよく見えるし…!
それにしてもやっぱり黒羽くんはカッコいい!!
あの人だけ後光さしてるっ!!
あんなに光ってる人他に知らないっ!!!


「芳賀さん、それ以上見てると黒羽くんに穴が開くよ…」
「それは困りますっ!!」
「うん、じゃあちゃんと席に座って試合を!見ててくれる?」
「はい!」


ああ、でも黒羽くん私のこと忘れちゃったかなぁ…?
あんな運命的な出逢いを(恐らく一方的に)したのに、きっと黒羽くんには数ある出逢いの1つでしかなさそうだもんなぁ…。
さっきの人たちみたいに「キミ誰?」とか聞かれたらショックでテムズ川を泳いで帰る勢いだ。
…私泳げないけど。
それくらいショックってこと!
でも、


−このまま頑張れば、関東大会良いとこいけると思うけど?−


そう、この日のために頑張ってきたんだから!
黒羽くんと一緒に全中!!
今年は鳥取!!
そんな旅先で黒羽くんとっ!!!


「芳賀さん、頑張って!」
「はいっ!!」


1張り1張り、神経を集中させて射る。
最近、トランペットも吹かせてもらえてたから、集中力も安定してきた気がする。
大丈夫、後1張り。
この1張りもきちんと的に納めれば黒羽くんと


−クロバ、クロバうるせぇんだよっ!!!−


「あっ!」


しまっ


びよ〜〜〜〜ん


しまった!そう思うよりも早く会場に間の抜けた音が響いた気がした…。


「ま、まぁよく頑張ったって!ね?」
「…」
「ほら、芳賀さんには来年もあるし!!」


あの最後の1張り。
集中力が途切れたせいで論外な結果に。
そのお陰で私の関東大会はあっけなく幕を閉じた。


「だからそんなに」
「主将」
「なに?」
「そんなに慰められると余計凹むんでもう放っておいてください」
「…」


…にゃんこめっ!
こんなところで出てきやがってっ!!
そもそもにゃんこがあんなことしなかったらこんなことには


「…ん…ちゃん!」


あのバカにゃんこ帰ったらどうしてくれようっ…!!


「芳賀ちゃん!」
「はい!?…えっ!?」


誰よ、私を気安く「芳賀ちゃん」なんて呼ぶヤローはっ!
なんて思って睨みながら振り返ったら、そこには後光が眩しい人が立っていた。


「芳賀ちゃん久しぶり!」


芳賀「ちゃん」!?
あの黒羽くんが芳賀「ちゃん」!!?


「お、おおおおおお久しぶりですっ!」
「ははっ!芳賀ちゃん相変わらず噛みすぎ!」


私っ!
私「芳賀」に生まれて良かった!!!
黒羽くんが芳賀ちゃん!
私を芳賀ちゃんっ!!


「俺さー、てっきり芳賀ちゃん年下だと思ってたけど、同い年だったんだな!」
「あ、いえ、あの、はい!よく小学生って言われます!」
「小学生〜?さすがにそれはねーだろ!」


なんて良い人っ!!
さすが黒羽くんっ!!!


「おしかったな、試合」
「み、見てたんですかっ!?」
「…敬語!」
「え?」
「俺たち同級生!だから敬語なし!OK?」
「お、おーけぇ…」


工藤くんがいたらバーロォ!オーケェじゃなくOkayだ!
とかって発音ツッコミそうだとか、どうでもいいことを考えながら、目の前で爽やかマイナスイオンを出してる人を見ていた。

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bkm

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