■心配性大量発生
「先生!」
「どうした?芳賀」
「昨日感動が大き過ぎて、今日賞味期限の鳥取のお土産を食べ忘れてきたので一瞬帰らせてくださいっ!!」
「よし、そのまま問2な」
「くぅ…!!」
昨日の黒…快斗くん(まだ慣れない!)の余韻が凄すぎて、3つ入りプリンの1つしか食べれなかった私は、今朝学校に来る前も1つ食べてきたのにあと1つ家に残してきてしまって。
そんな勿体ないことできるわけないじゃん!て先生に直談判したら秒で却下された。
…ちぇっちぇっちぇーだ!
合宿終わったら速攻家に帰って絶対プリン食べるんだから。
ただのプリンじゃないんだよ?
あの黒羽くん…快斗、くん、が、わざわざ買ってきてくれたプリンなんだよ!?
「ったく!こういう時のためのお前の保護者はどこ行った?」
「保護者?」
「工藤だ、工藤!」
先生が盛大なため息を吐いた。
…そーいえば工藤くんからメール着てたな。
合宿終わった翌日に羽田発の飛行機でハワイに来るように、って!(しかも夏休みの宿題終わってない奴持ってくるようにとも言ってきた!)
もうちゃんとわかってるのに、心配性だよなー。
「あおいちゃん、ちゃんと1人でハワイまで行ける?」
なんてちょっと臭くさしてたら、あっという間に勉強合宿も終わり帰宅。
砂プリンは賞味期限すぎても(ギリ)美味しかった。
もしかしたら胃腸的には宜しくないのかもしれないけど、健康だけが取り柄の家に生まれた私のお腹は無敵にセラミックだった。
この瓶、1つ取っておこうかな、快斗くんからのお土産だし…。
なんて思っていたら、当の快斗くんから電話がきた。
「大丈夫だよ、空港はきっとどこも一緒だよ!」
「あおいちゃん英語出来んの?」
「…気合?」
「それほんとにたどり着ける!?」
快斗くんもなかなかの心配性なんだって知った。
ちょっと擽ったいような気もする。
「大丈夫大丈夫!お土産買ってくるから待っててね」
「いや別に土産はいらないけど、無事に行って帰ってこいよ?」
私、快斗くんと毎日連絡してるんだよなー、って。
こういう快斗くんの優しさにホロリとしちゃう。
だって工藤くんからはまず聞くことのない言葉たちだから!
じゃあ行ってきます、って言って通話を終わらせた。
そしてハワイに行く日。
from:黒羽快斗
sub:着いたら
本文:メールちょうだい
from:工藤新一
sub:出発前に
本文:飛行機乗った段階でメールしろ
2人から催促メールが着た…。
私もしかして信用ないんじゃ…、なんて思いながら空港に向かった。
「芳賀あおい様ですね、少々お待ちください」
チケットカウンターでパスポートを見せたら、お姉さんがここで待つように言ってきた。
…なにごと?
「お待たせ致しました。芳賀あおい様。ハワイのお母様からのご依頼で搭乗ゲートまでお連れ致します」
「…えっ!?」
ハワイのお母様なんてそんなまさかだってそんな。
まさかまさかと思いつつもお姉さんに促されて搭乗する飛行機のゲート前まで連れて行かれた。
一旦ここで工藤くんにメールを返す。
そして飛行機に乗ること数時間。
「芳賀あおい様。お母様からのご依頼で入国ゲートまでお連れ致しますね」
無事ハワイに着陸!
って思ったらまた別のお姉さんが私に近づいてきた。
そしてそのお姉さんに連れられ、つつがなく入国審査も通りゲートをくぐったら、
「あおいちゃーん!待ってたわよー!!」
薄々そんな感じしてたけど、ハワイのお母様こと有希子さんがサングラス姿で待ち構えていてくれた。
…やっぱり私信用されてない!!
1人で飛行機にも乗れないと思われてる!!
しかも有希子さんにまで思われてる!!!
「よぉ、ちゃんと来れたな」
ひどい!って思ってる私の前に、有希子さんとはまた違ったサングラスをかけてる工藤くんがいた。
「工藤くん、ちょっと見なかった間にすっかりハワイアンだね」
「オメーは相変わらず意味わかんねーな」
ほんのり日焼けしてる工藤くんからどことなくハワイアンな匂いがした。
「どーだった?勉強合宿」
「あ、先生に保護者はどうしたのか聞かれたの!」
「は?保護者って?」
「工藤くんのことだってさ!なーにが保護者よって思わない?私がちょっとプリン食べに帰りたいって言っただけなのに!」
「はぁ!?オメーそれマジで言ったのかよ!?」
「え?言ったよ。賞味期限切れるから一瞬帰らせてくださいって!そしたら工藤どこ行ったーってなったの!」
「…はぁ…」
工藤くんが頭を抱えた。
それを見た有希子さんが苦笑いしながら、とりあえず家に行こうと車に促してくれた。
車に乗り込んで、ソッと快斗くんに無事着いたよメールを送った。
心配性な人たちに囲まれハワイ☆バカンスを過ごした。
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bkm