ラブソングをキミに


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3つのうちの1つ


5


「調査兵団に、来てみない?」


にっこり、と、笑うハンジさん。
調査兵団、に、来てみない、って…。


「絶対ダメだー!!」


それまで黙っていたコニーがいきなり叫びだし、体がビクッ!となった。


「姉ちゃんをお前たちみたいな変人集団に任せるわけねーだろ!!」
「コ、コニー…。」


村の子供たちが、コニーのことを「バカコニー」と言ってたけど、なんて言うか…、命知らずって言うか…。
仮にも現役兵士たち(しかも1人は確実に怒ってる!)を相手に「変人集団」なんてこれ以上怒ったらどうするの…!!
なんて思っていたら、


「あははは!確かに変人の集まりだけどね!」


ハンジさんは気持ちいいくらい爽快に笑い飛ばした。


「でも、キミのお姉さんを守れるくらいは強いよ?」
「うっ…」


ハンジさんの言葉に、コニーは言葉を詰まらせた。
村でのことがあってから、…もしかしたら、私が「記憶喪失」と言われてから、コニーは私を「守る」と言うことに対してすごく敏感になっていた。
そこをハンジさんはあっさり突いてきた。


「別にいきなり調査兵団に入れ、なんて言わない。特にフィーナのようなコは壁外に出たら一瞬で捕食されちゃうだろうし?調査兵団に入る前にきちんと訓練兵として訓練を受けてもらわなきゃいけない。だよねぇ、エルヴィン?」
「あぁ。それなりに訓練を受けたものでも、生存率の低い壁外、なんの訓練もなしに連れて行けるわけがない。」
「だろ?だから最初はそうだな…、シガンシナの壁の上から見てもらうくらいでいいんだけどさ。私たちと一緒に、来てみない?」


…えー、っと…。
調査兵団、て言うのは、現役の兵士なわけで。
その兵士をしている人から、うちの兵団の様子を見に来い、みたいに言われて…?
…なんで?どうして?


「フィーナ。キミのその力が、人類に希望を与えてくれるかもしれないよ?」
「絶対ダメだー!!調査兵団って言うのだってダメなのに、壁外に姉ちゃん連れてく!?絶対ダメだ!!」
「…煩ぇな、このガキ。おい、また黙らせていいか?」
「まぁまぁ、リヴァイ落ち着いて。」


コニーやハンジさんたちの声が、遠くで聞こえる。


−キミのその力が、人類に希望を与えてくれるかもしれないよ?−


ここは、長い長い、夢の世界。
だから、あり得ないことが、起こり、あり得ないことを言われる世界。
私が誰かの役に立つどころか、「人類の希望」なんて、なれるわけない。
だけど…。


「わ、たし、」
「うん?」


例え夢の中だとしても、そんな風に「誰か」に必要とされるなんて、今までなかったから…。


「い、行って、みたい。」
「姉ちゃん!?ダメだって言って、」


ドサッ


「コニー!?ど、どうしたの!!?」
「煩ぇから黙らせただけだ。エルヴィン、このガキ見ててくれ。」
「…俺がか?」
「善は急げ、って奴だ。ハンジ、行くぞ。」
「はーい!じゃあフィーナ、行こうか!」
「い、行くって?コニーは?」
「言ったろう?とりあえずシガンシナの壁の上から見てくれるだけでいい、って!それなら今日中に行って帰って来れる。コニーはエルヴィンが見ててくれるよ。」


チラッ、とエルヴィンさんを見ると深い深い、ため息を吐いた後、苦笑いをしていた。


「子供は嫌いじゃないが、なるべく早く帰ってきてくれると助かる。」
「て、わけだから、ちゃちゃー!っと、行って帰って来ようじゃないか!」
「で、でも、きゃあ!?」
「テメェは黙ってついてくればいいんだよ!」


そう言ってリヴァイさんは、私を荷物か何かのように肩に担いだ。


「…リヴァイ、そこはせめて抱っこかおんぶしてあげなきゃ…。」
「はぁ?じゃあテメェが持って行けばいいだろ?」
「…私は馬を用意してくるよ。」


じゃあ後で、とハンジさんは去っていった。
まさかこの人と2人きり!!しかも「持って行け」って私荷物なの!?
なんて頭がパニックになりかけているところ、


「おい、フィーナ。」


わき腹の向こうからリヴァイさんの声が聞こえた。


「怪我したくねぇならそのまま動くんじゃねぇぞ。重くなる上、迷惑だ。わかったな?」


何1つ、リヴァイさんの言葉に返事などしていないけど、何1つ返事をしないことに対して納得したとでも思ったのかリヴァイさんはそのまま私を担いで、ハンジさんの後を追った。
そりゃあさっきは「人類の希望」なんて言われて、私なんかがちょっと調子に乗ったのかもしれない。
でもだからって、陰口を聞いてしまったことはあったけど、こうも面と向かって「迷惑」だなんて言われたこと、なかった。
リヴァイさんから降り注ぐ辛らつな言葉に、肩に担がれたまま私は、本当に身動きが取れなくなった。

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bkm

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