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女王様な彼女の台詞


私の命令が聞けないの?


「キミ何してんの?」
「体力作りのため土手沿いを走ろうかと」


朝起きたら、工藤くんがいかにもな格好をして外に出ていくところだった。


「この暑い中よくやるねぇ、少年」
「ある程度の体力も探偵には必要ですから」
「どこ走るって言ったっけ?」
「土手沿いです」
「そう。じゃあ駅前のコンビニで抹茶アイス買ってきて」
「…土手沿いだって言ってんだろ」
「そう。抹茶アイスよろしく」
「駅前行かねーだろうがっ!」
「走るついででしょ?買ってきたらお駄賃あげるから」
「いらねーよっ!」
「涼風堂の抹茶アイスね。よろしく」
「あ、おい、待っ」


しっかし、このクソあっつい中よくやるわ。
あの子ほんとに体育会系だったんだな…。
…走り込みして暑いだろうし、さっぱりしたヤツ作っててやろう。


「…はい、どーぞ」
「お!ご苦労!お駄賃ね、はい!」
「…舐めてんのか、おい」
「キミ今10円バカにしたね?10円あればチロルチョコだって買える!」
「…買わねーし、いらねー」
「キミねぇ、10円に笑うものは10円に泣くよ?」
「10円くらいで泣くならその程度だったんだろ」
「…これだから苦労を知らないお坊っちゃんはっ!!」
「関係ねぇだろ、ソレ」
「関係ないわけないでしょ!キミねぇ、この10円がないばっかりにお茶買えずに走り込みでからっからに渇いた喉も潤せないんだよ!」
「まるで経験があったみてぇな言い方だな」
「…庶民の子ですから」
「…」


親から金光してるカードを預かってるキミにはわかるまい!
ああ!あと10円さえあればっ!
って言うあの切なさ!!


「まぁなんでもいいけど、朝飯できてます?」
「あ、食べたいなら今後走り込みのたびに抹茶アイス買ってきなよ?」
「だから通らねーって言ってんだろ!?」
「仕方ない、お駄賃を20円にしてやろう」
「いらねーよっ!!」


なんとも良い使いっ走りができたものだ。
これからは抹茶アイスに不自由しなくてすみそうだ。


「な、なんかコレきつくなったんだけど…」
「普通に考えて食いすぎだろ?ってぇなぁっ!」
「乙女に向かってなんつー言い種だっ!」
「どこの乙女が胡座かいて抹茶アイス食ってんだよっ」
「おかしい。何一つ変わらない生活を送ってたハズなのにっ!」
「自分で買いに行ってた分のカロリーが消費せず蓄えられただけだろ?」
「…そんな落とし穴がっ!」
「何が落とし穴だよ、人顎で使った罰だな」
「…わかった」
「うん?」
「明日から一緒に走ろう」
「え?」
「そうだ、そうしよう。1人じゃ挫けても2人なら続けられるハズ!」
「…いや、俺別に毎日走ってるわけじゃ」
「じゃあ毎朝5時半起きだから」
「だから俺毎日走ってるわけじゃ」
「ああ、ちょうどいいスニーカーあったかな?」
「…俺の話聞いてっか?」
「あ、遅刻したら容赦なくプロレス技かけるから」
「…もう好きにしてください」
「じゃ、そういうことで明日からよろしく!」


これで、このパンツのぱっつんぱっつんさは無くなるだろう。
ああ、工藤くんがいてくれて良かった。
きっと2人なら挫けずやり遂げられるハズ。


「…さん、名前さん、名前さんっ!」
「んー…」
「5時半に起きろって言ったのオメーだろ!?さっさと起きろよ!」
「………」
「…は?なに?聞こえな」
「私の睡眠の邪魔するんじゃなーいっ!」
「えっ!?ちょ、待っ」
「ふんっ!!」
「いってぇぇ!!ばっ、肩抜ける!マジで痛ぇって!!」


シャキッと目が覚めたのは朝の7時を過ぎた時だった。


「…」
「そんなに怒るな、少年」
「まず謝れよ、オメー」
「…女性の寝込みを襲った方が悪い」
「誰も襲ってねぇだろっ!?いい加減にしろよ、オメーっ!」
「キミねぇ、朝からそうカッカッしてると1日もたないよ?」
「誰のせいだと思ってんだっ」
「小さいことでゴチャゴチャ言ってるから、キミもてない男街道突っ走るはめになってんだよ?」
「…一言でいいから謝ってください」
「ほらほら、そんなに気にしてるとせっかくの朝ごはんも不味くなる」
「…別に多くを望んでねーはずだけど」
「味噌汁おかわりは?」
「…もうなんでもいいや」
「食後のコーヒーは?」
「…いただきます」


結局、私が工藤くんと一緒に走り込みをすることはなかった。
自分にあったエクササイズをやるのが一番だ。


T私の命令が聞けないの?

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