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女王様な彼女の台詞


跪いてキスしてみせて


「どーぞ、お茶です」
「ご苦労」


忠犬執事、工藤くんは今日も立ったついでにお茶を入れてくれた。
んだけど。


「不味い」
「は?どこが?」
「キミねぇ、茶の淹れ方教えたでしょ?番茶は熱いまま!煎茶は少し冷ます!まだ覚えてないのかこのポンコツ」
「はぁ!?ポンコツ!?なんだそれ!」
「何キミ、ポンコツの意味がわからないの?」
「そーいうこと言ってんじゃねぇだろ…」


工藤くんがこめかみを若干ピクピクさせている。
美味い茶1つ淹れれないガキが何を…。


「1つ聞きてぇんだけど」
「何?」
「そんっなに煩ぇなら、オメーはさぞ美味い茶淹れれるんだろーなぁ?」
「当然」
「俺1度もオメーから茶淹れてもらったことねぇんだけど?」
「キミ、」
「あ?」
「私の淹れた茶を要求するなんてナニサマ?」
「…」


ちょっと事件解決したからって生意気な。
工藤くんはおもしろくなさそうな顔をしながら言った。


「俺大家なんだけど」
「そうね」
「たまには大家に茶淹れてもいーんじゃねぇの?」
「大家には淹れるけど執事に茶は淹れない」
「…」
「だいたいキミお茶飲まないでしょ。私がコーヒー淹れてやるだけありがたいと思えこら」
「…ナニサマだよ」
「名前様だよ、執事くん」
「…」


ああ、コメカミが規則正しくひくついてるわ。
わかりやすいなぁ、この子。


「じゃーもういーですよっ!」
「仕方ない」
「あ?」
「あり得ないくらい美味い茶淹れて来てやろう」
「いや今いーって言ったよな?」
「そこで待ってな」
「…聞けよ、テメー」


工藤くん家はオープンキッチンで待ってろも何もないんだけどね、丸見えで。
でもこの忠犬執事は、そこで待っていられないらしくキッチンまでやってきた。


「…なに?」
「…俺と何が違うのかと思いまして」
「気合いが違う」
「いや意味わかんねーし」
「黙って待ってなって」


お湯を沸かして急須から注ぐだけだけど。
ちょっとの気遣いで美味さが変わるっての教えてやろう。


「ほら、飲みな」
「…偉そうだな、おい」
「捨てるわ」
「飲むからっ!捨てんじゃねぇよっ!」
「…どーぞ」
「どーも。…おかしなところが決断早ぇんだよ」
「何か言った?」
「いーえ。いただきます」


くいっ、と湯飲みを傾けた工藤くんが少し目を見開いた。
当然だ。


「…なんか味が…濃さが違う?」
「わかったかポンコツ」
「…」
「これが正しいお茶の淹れ方」
「…スミマセン」


珍しく素直な工藤くんに今度は私が目を見開いた。
生意気であってこそ、工藤くんなのに。


「ちょっとの気遣いで美味さが変わるんだよ」
「…ですね」
「見直したか、こら」
「…はい」


でも素直な工藤くんは珍しいし、せっかくだから畳み込むことにした。


「名前さんほんとに茶好きなんですね」
「日本人だから」
「いやそれ関係ねーと思うけど」
「キミ日本茶は日本人の心だよ?」
「どこのババァの発言だよ」
「…」
「痛い痛い痛い痛いっ!!肩抜けるだろうがっ!!」
「日本人の心をバカにした報いだ」
「なんなんだよその愛国心はっ!いてーって!!」


ギブギブ言うから間接技を外してやった。
軟弱なヤツだ。


「あー、いってぇ…」


肩を抑え痛がる工藤くん。
…大袈裟だっつーの。


「…名前さんて」
「なに?」
「なんでそんななの?」
「キミもう1回間接技決めてやろうか?」
「やめてくれっ!…おかしな意味じゃなくてだな」
「うん?」
「横柄だし、女のくせにあり得ねぇくらい間接技上手だし、って待て!喧嘩売ってんじゃねーよっ!」
「…続きは?」
「…そんな性格で料理とか絶対しなそーなのに、飯はめちゃめちゃ美味ぇし?」
「…」
「茶の淹れ方もすげぇ詳しいし?」
「…」
「なんつーか、ギャップ?に、驚かされんだけど」
「キミ、」
「うん?」
「私を敬いたいなら素直にそう言いな」
「誰が敬うかよっ!ちょっと誉めてやるとすぐこれだっ!なんでオメーはそんななんだよっ!!」


今日も工藤家には忠犬執事の声がこだまする。



X跪いてキスしてみせて

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